情報の栄養バランス

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どうも俺のカラダは、過去数カ月に喰ったもんでできている…らしい。これと同様に。俺のアタマは、過去数カ月に喰ったもんでできている…とする。ならば自分の考えや世界観やニュースに対する反応などにオリジナリティなどあるワケねーだろとゆう気もすんだけど、それはまた別の話なのでおいといて…。

ごはんは栄養バランスを考えて食べねば健康な身体になりません。と校長先生が言っていたので、「情報ごはん」もそのへん意識して「三角食べ」を励行して「30回よく噛んで」とかやるべきな気もする。とかいいつつ日常のごはんもあんま深くは考えてないんだけど(校長先生ごめんなさい)。タマには少し意識してみようか。と思った。

まず「報道摂取環境」を、外食系、ポテチ類、自作弁当のみっつに分けてみる。みっつといっても「三角食べだから三」以上の意味はない。

イ)外食系は、職業的・組織的・プロの手になるニュースの詰め合わせ。いわゆるMSM(メインストリーム・メディア)だ。テレビと新聞が定食屋、そのWeb版はコンビニ弁当(なんとかシェフプロデュース)。とする。Google ニュースYahoo!ニュースなんかは、コンビニそれ自体。て事にする。昭和時代には、多くの人(aka.取材を受けた経験のない人々)が、コレを「バランス栄養食」と考えていた。

ロ)ポテチ類は、集団的・集合的な、人気記事の詰め合わせ。2ch→まとめブログの類は「ブラックサンダー」、TweetBuzzMixClipsなどの人気記事リストは「ポテチ各種」、J-CASTニコニコニュースなど、人力かつ組織的に人気ニュースを集めてくる存在は「ポッキー」*1。これらは速報性・機動性の両面で既存メディアの及ぶところではない。速報性で新聞が勝てないのは当然として、衛星放送だってWebのチャンネル・ビッグバンぶりには及ばない。銭形平次で言うと「てぇへんだ!てぇへんだ!」と走りこむ「ハチ」。それが「群れ」になっている。これが身体に良いわきゃないが、わかっちゃいるけどやめられない。

ハ)自作弁当は、手弁当という程のものではないが、出来合いのおかずを詰めたくらいの弁当。Twitterのタイムラインや、Google リーダーなどのRSSリーダを使うと、概ね自分の好みや腹具合をアテ推量してくれる商店街が作れる。また世の中にはアゴラのような「お惣菜やさん」もあれば、Yahoo厳選雑誌記事のような「中食コーナー」、はたまた個人ニュースサイトのように「自分のおかずを分けてくれるひと」まである。弁当箱(自分の場合はEvernote)を持ってこれらをぐるっと一巡りすると、「慌てるなぃ!ハチ!」とかけてもつれたナゾを解く平次の親分が「群れ」になっている。「ニュース・アナライザの泉」だ。

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...頭書図の通り、あんましバランス良さげには見えないし、伝播が伝播を呼ぶロ)とハ)のしくみはこれはゾンビですか?とゆう気もするのだけれど…どうもこの「かゆうま構造」は、日清日露の昔からの事っぽい。

  • 前世紀アタマの「新聞の号外」は「一億総八五郎化」を生み、新聞自らが本紙で「かけてもつれたナゾを解く」という、芸風というか産業構造というか生活習慣病というか、なんかそういうのがダマになったシカケを生んでいったようだ。たぶん「主筆」てのは「平次おやぶん」と読むのだろう。
  • 今世紀アタマのWebは、「一億総八五郎化」を加速する一方で、「一億総平次化」も生んでいる。

よーな気がする。

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と・ゆーような雑駁な「見立て」の下に。いわゆる「フジテレビ韓流おし杉問題」をめぐる、自分の「食事記録簿」を振り返ってみる*2。発端は、2011/07/23の高岡蒼甫さんなる方のTweetのようだ。これはロ)のポテチ類で知った

続く08/20までの約30日間:イ)はほとんどこのネタをシカトしていた。世の中全体的には大した話ではないし「見なきゃいい」で済む話でもある。韓国ネタにガンガン喰い付く産経Webまでダンマリを決め込んでたのを奇妙に思ったくらいだった。その間、ロ)ではこのネタは高頻度・かつ新ネタを加えつつ反復的に登場し、これを受けて、ハ)でも様々な解釈(分析視点)が提示され続けていた。

08/20のデモ前日までには、Web上にはけっこう広範な論点が出揃っていたように思う。またデモ推進側に於いても「目標は民族差別ではないので、発言やプラカードによく気を配るように」との注意が拡がっていたようだ(もちろんソレを主眼とする/あるいはそこに無神経な人々の混入をゼロにはできないにしても)。

08/21当日:イ)はほぼ全面的にシカトしていたが、ロ)では盛んに情報提供が為された。外国報道では中韓系のサイトが取材と論評を加えている。

これ以降:イ)としても触れて置く必要を認めたようだが、30日ぶんの集合知の蓄積は、おっとり刀で追いつくものではないだろう。「それまで眼中になかった」と言う事は、起点日からの流れの把握や、このネタが示唆する論点への目配りと、コナレ具合に難があるはずだ。

例えば09/01付けの朝日の記事は、全体が「民族差別反対基調」で染まっていたが、それはWeb上では7月のウチに真っ先に出た批判であり、重大かつ不可欠の批判ではあるものの、起点から30日以上を過ぎて「それだけ」では、ハ)の分析類どころかロ)の集団情緒メーターと比べてさえ、見劣り感が否めない。そもそもロ)系に見える抗議者層の矛先はそこではなく、日比谷焼討事件のように適切な表現が収束していないように見える。

またフジテレビが09/02日付で公表したリリースは、ロ)やハ)で提起された論点の一部にしか答えておらず、却って燃料投下になっている様子が伺える。ついでながら。「金曜公表」は、昭和期なら社会の動きが止まる土日に沈静化が期待できるが、Webでは新しいニュースが減る土日〜Maxで月曜午前中いっぱいまで人気記事リストに滞留し続け、言及や論評を増やす結果を産みやすい。

一方、上記からはフジ一社に答えられる範囲のポイントは概ねカバーされている印象を受けた。仮に。これで沈静化が見えてこないとすれば。この問題はフジ一社でハンドリングできる範囲を超えつつあるという事だ。

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思うに。ロ)とハ)をざっと眺めていた範囲では、どうも抗議のキモは、

  • たのしくないのでテレビぢゃない。

とゆう人が増えている。てなトコぢゃないかと思う。編成がどうだの韓国がどうだの、外国株主だの議決権比率だのは「助燃剤」に過ぎない。つまり「フジテレビ韓流おし杉問題」は、イ)のシカケ全体に関わるネタ〜視聴者の好みの多様化に対して、既存メディアが適応障害を起こしている事例のひとつ〜と捉えるべき。な・よーな気がしないではない。

  • インフォメーション:目で見りゃ判る状況の報せ(状報)と、目では分からぬ事情の報せ(情報)。
  • インテリジェンス:それらの「吟味」。

今世紀アタマのWebは、ロ)で「一億総八五郎化(てぇへんだx2)」を加速する一方で、ハ)で「一億総平次化(あわてるない!)」も生んでいる*3。イ)の系統がここに適応すべく頑張っているのを知らないではないのだけれど、もしも「情報革命」がモノホンの「革命」であるのなら、「持てる者から持たざる者へ」が起きねばならない。起きないなら、その名前には価しないだろう。

*1:無理繰り商品名に擬す必要はないんだけど、こういうのはイキオイなのでなんとなく並べてみたいのはなぜだ。

*2:…といってもEvernoteの検索欄に「tag:11Q3フジテレビ韓流騒動」と打ち込むだけですが

*3:もちろんロ)の中にも「平次おやぶん」がある筈だが、ここでは単純化している。