個人ではたらくN氏の悩み。

 世の中には、スキなことをスキなだけやり倒してるうちに「斯界の第一人者」になってしまう人が、マレにある。あまり祭り上げられてしまうと、行く先々で「センセイセンセイ」と平伏されてしまい「ライバル」とか「乱取りの相手」とか、なんかそういう「がっぷり組んでくれる相手」が減ってゆくものらしい。

 それはなかなかツマラナイのではないかと思うのだが、面白いと思う事をして、面白いと思う人と会い、面白いと思う仕事だけ受けてりゃ、ずんずん面白くなるのが当たり前だ。そんなわけで、入ってくる仕事はでかくなり、彼に関わる人数もでかくなり、彼が絡むお金の動きもでかくなり、彼の評判が届く範囲もでかくなってゆく。

 そういう人にお会いしたと仮定して頂きたい。仮に「N氏」とする。

 N氏の悩みはこうだ。『個人で仕事を受ける事が難しくなって来た。』。意味が分からなかった。いくら個人と言っても、N氏は自分の会社を構えている。なのに、取引のある大企業も新聞社も地方自治体も省庁の外郭団体も『受け皿を作ってくれ』と言ってくるようになったのだそうだ。これもまだ意味が分からなかった。

 取引先の言い分はこうだ。『いろいろありまして』。これで分かった。つまり「斯界の第一人者」相手の支払いであっても、デカイのが続くと癒着を疑われるという事だ。より中間的には「あらぬ噂」と言う。こうした疑惑は、役所でなくても派閥争いや怪文書の火種になる事がままある*1。そこまでいかずとも「あらぬ噂」がたった時点で地味に身動きが取りにくくなる。「N氏」が気にしなくても「N氏」の周囲の動きが鈍る。

 おそらくその事じたいは、善くもなければ悪くもない。単にそういう資質のイキモノというダケだ。この資質には長所がある。長所がなければ持続しない。

 オレらの資質は、有象無象の区別なく、疑心暗鬼を許さない。疑心暗鬼をとことん潰し、関わる全ての人々に、才覚手腕の上下に依らず、一致協力して全力を発揮せしむる効果がある。

 外人に言わすとこうなる。

「一ケ中国人是龍、一群中国人是虫。一ケ日本人是虫、一群日本人是龍」
 一人の中国人は龍だが、集団になると虫である。一人の日本人は虫でしかないが、集団になると龍になる
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日々是亜洲杯2004 あらためてブーイングについて考える(7月25日@重慶、晴れ)- 宇都宮徹壱さん

 、、、ススメイチヲクヒノタマダ!(やめいw

 マンガ界や芸能界のように(実情はどうあれ)「個人の資質」がくっきりと、ダレにでも認識できる「業界」で無い場合、N氏の選択肢は、公益社団法人か、公益財団法人か、NPOを作って、そこの肩書き付きになる事だ。それが『受け皿』。最近やけに多いNPOの中には、そういう理由で出来るものも多いらしい。

 その事じたいは、たぶん善くもなければ悪くもない。どのみちN氏のようなタイプは、面白いと思う人に、面白いと思う仕事をしてもらうために、手にしたオカネをバラまいてしまうのだし。

*1:お役所関係であれば、野党やマスコミの目も気になるだろう