むずかしいのう。むずかしいのう。

上記でも考察されているが、「配当するなら賃上げせよ/従業員軽視・株主重視」などの主張は「終身雇用」の名残の面が否めない。とりあえずそれは既に崩れた事を前提に、走り書いてみる。

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  • 1)国際的な利益率の期待水準は一般に日本企業の倍。
    • それで今までやってこれたのは、
      1. 国民の高い貯蓄性向がもたらす低金利。  ← 現存。
      2. 曖昧な企業統治*1。 ← ややストリクトになった。
      3. 終身雇用による安心感。         ← 崩壊。
    • 正直、日本の発展はこれらのおかげ。技術力の向上はその結果の一つ。
    • うち二つが「グローバなんとか」かなんかで崩れた。とされるが、
    • 実は二次産業の「生産性向上が急速」というのは、進化するほど雇用を吐き出すイキモノという事でもある。
  • 2)日本よりフレキシブルに雇用を切る相手(米欧韓中、他)と競争するには、同じ手も必要ではある。
  • 3)ただし、これらの国では一部(特に韓)を除けば、社会全体がもともとフレキシブルな雇用カットを前提にしている。
    • 非正社員を前提に設計されたセーフティネット(公の失業保険や職業訓練学校など)の他に、
    • 教会など宗教・道徳的観点からの自発的な支援(寄付は半ば道徳的な義務)も手堅い。
    • 韓国の場合、「選挙される皇帝」といわれるほど権限が集中する大統領が、反対を押しつぶしても即効性のある対策を打つ。例えば往時のIMF危機の際は、失業者対策の一つとして政府が貸本屋を奨励したが、これは韓国マンガ家にとって大打撃となった(確か餓死だか自殺者だかが出た筈)。なお、その他の対策にネットカフェなど「IT強国化」がある。これは後のネトゲや、昨今のThink Free Officeなどにも繋がっている。
  • 4)永く「終身雇用」と「社内での職業訓練」に頼ってきた日本社会は、「フレキシブルな雇用カット」の準備がまだ充分ではない。体制のみならず、人心も。
    • 肩を並べて同一労働をしている正社員と非正社員の賃金・待遇が異なるのは、ワークスタイルの多様化というよりは「非合理な身分化」であり「終身雇用」の名残。
    • あたしゃ、江戸時代の農村内部における身分格差、ひらたく言うと、本百姓と水呑み百姓の間の差別が、農地開拓が止まった頃に固定化したのを想起する。
    • 「日本の優れたモノ作り」の本源は「生産現場と一体化した開発」にあるとも言う。非正社員に「カイゼン運動への参加」を求めるなど、「家族主義経営」や「社内での職業訓練」のメリットを維持したければ、ワークシェアリングで「痛みを分け合う」方向を真剣に検討すべきだろう。
  • 5)それでも「フレキシブルな雇用カット」というオプションを手放せる状況に無い場合、〜〜〜利益率が倍の相手を前に生き残ろうというなら、手放せない可能性は高いのだが〜〜〜、
    • これら競争相手と同様の、大規模なM&Aでシェアを確保する手も取るべきだろう。
    • ルネサスのような、なぁなぁの寄り合い所帯では済まない。マジモンの国取り合戦みたいな。
      • PC事業は、各社から完全分離して一社に統合しない限り、HP, Dell, Lenovoらのトップ集団と、ASUSら新興ブランドに挟撃され、各個に撃破されるだろう。
      • テレビ事業は、「パナシャニー」程度の世界シェアがなければ、サムスンには追いつけない。来るべき長虹の追撃も躱せないだろう。信用不安と円高で、韓国への部品輸出が滞っているうちがチャンスだ。
  • 6)日本企業の特徴である「利益を大きく上回るR&D経費」も聖域化すべきでない。
    • シェアを取る上で重要なのはコストパフォーマンスであり、絶対性能や技術者の自己満足ではないからだ。
    • 今回の不況が数年持続するのであれば、コストパフォーマンス向上が最大のキーとなる。

当面は種々の緊急雇用対策で凌いで、大企業の利益があがったらがっつり税金を頂き、それで日本型セーフティネット作る。と行きたいところだが、Lenovoアルセロール・ミッタルみたいに速攻で本社を「地球上の最適地」に移すようなのが相手だと、それもまた渋いなぁ。

やっぱメロメロの農林水産業で大規模雇用産めないかなぁ。日本を支える産業セクターが「モノツクリ・モノカルチュア」「加工貿易一辺倒」てのはやっぱキツいよ。食料自給率上げりゃあ、そのぶん「内需拡大」になるわけだし、、、この際屯田兵とか。いっそ樺太奪還とか(ダメだって)。

*1:株式の持ち合いや、複雑な子会社関係等による