天下り2.0

同記事によると、中央省庁のOBが独立行政法人などの幹部に再就職する人事がこのところ、相次いで発令されている。との事。なお、麻生首相は1月、天下りを繰り返す「渡り」の各省庁あっせんを原則、全面禁止すると表明している。との事。

さらに、毎日新聞公益法人取材班が、「事実上の天下り」とでも言うべき事態が増えている事を報道している。


また、総務省所管の独法「統計センター」では03年4月、電機大手の関連会社社長が理事に就任する一方、その3カ月後、同省の統計局調査官が電機大手の営業本部嘱託になった。関係者によると、同社の人事担当は元調査官が入社した後、元社長らに「人事交流」と説明したという。
 同社は「総務省から『民間の人材がほしい』と要請があった」としつつ、受け入れた相手については「個人情報なので明らかにできない」と説明。総務省秘書課は「この人事に関連性はない」と、人事交流であることも否定している。

「電機大手の営業本部嘱託」と「総務省」と区切ると地デジ絡みかなぁ、、という気もするけど、それはまぁともかく。

つまり、伝統的な「官と財の情報連結が、形を変えて急速に深まっている可能性」がある。

  • 1)これが、   中央省庁←業界団体←大企業←(終身雇用/ケイレツ/モチアイ)
  • 2)こうなる。  中央省庁←大企業←(終身雇用/ケイレツ/モチアイ)

直結だ。

1)伝統的な「官と財の情報連結」では、
中央省庁と業界団体は天下りを介して情報連結している。大企業の下には終身雇用/ケイレツ/モチアイといった関係がピラミッド状に広がっており、中央省庁はいくつもの業界団体を介して職掌範囲の「民意」を集約できる。

自民党員」や「民主党員」は珍しいものだが、「終身雇用」は珍しく無い。したがって、勤労者の大多数が終身雇用であるならば、中央省庁は政党よりも「民意の収集・分析」において優秀であり、「それに基づく政策立案能力」でも優秀だ。結果的に、「派閥順送り誰でも一緒大臣」なぞ、簡単に洗脳できる。「せいぜい1年短命首相」なぞ、簡単に洗脳できる。つまり「議院が選んだ内閣」よりも実力に於いて優位に立つ。

よくも悪くも事務次官を含むほぼ全員が「天下り」、まがりなりにも「業界団体が代表する公益の為に」、官庁人脈と専門知識を活かしているからだ(行政官僚というのは、立派な専門職だ)。したがって、少なくとも55年体制下では、中央省庁=事実上の政党とみる事ができる*1

日本の統治構造に於いては、「議院内閣制」はタテマエ。ホンネはテクノクラート・コントロールだ。しかし前述のように、これは必ずしも非・民主的という訳ではない。中央省庁を「産業分野別の政党」と考えれば、まずまず立派なものだ。類似の構造は農協、芸団協、私大連盟、などなどの形でほぼ全ての省庁に存在するからだ。また郵政、道路、都市住宅整備公団のような公団系組織も同様の機能を果たすからだ。コクミンの圧倒的大多数がこの輪の中で暮らしていたからだ。

民主制的なチェックがほとんど利かず、ムダや問題があっても責任者に退場して頂く選挙のようなシカケが無い、という点を除けば、必ずしも悪とはいえない。イヤそこは除いちゃマズいんだが、高度成長で「みんなの暮らし向き」が伸びてゆくなら、それは大した問題ではない。

「ジミンのジバン(主に地方)」や「族議員」は、「議院内閣制のタテマエ」を梃子にして、この「ホンネ上を流れるお金」に取り付ける。非・終身、非・ケイレツ、非・モチアイに属する人々は、共産や公明などの野党に結集し、「国対政治」で、この「ホンネ上を流れるお金」に取り付ける。

2)しかしながら、昨今では非・終身雇用者が増えている。
その意味では自公連立というのは巧い手*2だが、それだけでは足りない。
ネットの発達、グローバリゼーションの深化、デジタル・デバイス市場の発展、コア付加価値のハード→ソフト*3への移行など、産業構造にみぞうゆうの環境変化が訪れている。「既存の産業分類」を中心パーツとする1)番の構造は、こうした変化にウマく対処できない。どちらかと言うと、規制規制!禁止禁止!補助補助!「緊急事態だ、国が支援を。大変なんだ、国が支援を。」になりがちだ。

ここで、ホンネ・ラインのほうが直結度を深めると、

  • 中央省庁←大企業←(終身雇用/ケイレツ/モチアイ)

天下り」は、官庁人脈と専門知識を、「自分が属する企業の為に」駆使するのではなかろうか。また独立行政法人「統計センター」に出た「電機大手の関連会社社長」は、そこで得た情報を「親元に流す誘惑」に耐えられるだろうか。一社がソレで利を得たなら、どうやって歯止めをかけられるだろうか?

衆院調査局の天下り調査によると、液晶テレビで有名な某大手メーカーには、経産省からなんと29人が天下りしていました(06年)。1社でこの人数です。エコ技術を扱う特殊法人への天下りも多く、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構』には30人もの経産省OBが天下っている(08年)。エコカー減税や買い替え補助で優遇した自動車業界にも大量の天下りがいます。政治家も利権にあずかっていて、国の環境対策補助金を受け取った大企業21社が、計1億2000万円ものカネを自民、民主の政治資金団体献金していました」(若林亜紀氏=ジャーナリスト)

これだったら共産党の指導が効く中国のほうがまだマシだろう。大型TVよりチューナーのほうがよほどエコな筈だがな

現役の省庁幹部で人事を担当する官房長経験者は「私たちも天下りをしたくて役所に入ったわけではないが、現状では早期に退職するOBの再就職先を最低60歳まで、あるいは年金がもらえる65歳までは考えないといけない。今後はどのように役所で長く働くのかを考える必要がある」と話している。

重要なのは「天下り禁止」などの「わかりやすいワルモノタタキ」ではなく、早期退職慣行の是正ではないだろうか?

英国流に「与野党の区別なく求められれば同じ資料を提供」し、「政策立案とは距離を置き」「政治的に完全中立を保つ」「執事のような終身雇用の官僚群」を目指すのか。
仏国流に「官僚機構を専門職と総合職に完全分離」し、「専門職は終身雇用」「総合職は公社経営、官庁事務方トップ、およびそれらのスタッフをぐるぐる回り」「席がなくても最低限の固定給は保証」「議員選挙に出るならその資格は返上」を目指すのか。

禁煙でも反核でも児童ポルノ禁止でも表現の自由を守れでも、だいたい同じだが、「正しい事だから」と拙速に事を進めると往々にして「正しく無い結果」を産む。

*1:統治構造の高度成長シフト?

*2:むしろ見事。流石。スゲェ。

*3:ものつくり→ことつくり