事件発生翌日現在、最も重要なニュースはこれだと思う。

 上記両紙は、死傷者の中にB型肝炎ウィルスの感染者があった事、これは感染の恐れがある病気である事。救助活動を手伝った人に、速やかに病院で検査を受けるか、万世橋署(03・3257・0110)へ連絡するよう、警視庁が呼び掛けている事を報じている。

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 個人的には、事件を知った直後から、現場の実況とか、パニック映画じみた描写とか、悲嘆に暮れる人々の描写などは脇に置いている。需要があるのは分かるが、衝撃の生々しいうちには不向きだ。同じ理由で、背景分析や意見の類いも、目に入れていない。現時点で妥当な意見を吐けるのは、日常的にこうした事件に取り組んでおられる、現場の専門家くらいだろう。

 今、ナイフの写真を見れば「こんなもの規制しろ」と思うに決まっている。今、携帯掲示板の様子を知れば「誰も通報するヤツはいなかったのか」と思うに決まっている。そしてそれに反対する意見には、反感しか持たないに決まっている。需要があるのは分かるし、言いたい事があるのも分かるが、動機や出来の区別なく、それらは建設的では無い。事件の衝撃を拡大し、犯人の期待に応えるだけだ。

 人間は、心に衝撃を受けた状態でなにか建設的な事を書いたり、言ったりする事はできないようにできている。その手の雑音に、冷静な(あるいは冷徹な)人々の声が埋もれたり、かき消されてしまう事のほうが問題だ。

 犯人の望みが、世間の話題になる事であったのなら、可能な限りガン無視で、速やかに社会が落ち着きを取り戻すのが、最大の再発防止策であるように思う。

 お亡くなりになった方々のご冥福と、心と体に傷を受けた方々の早い回復を祈ります。