TVCMはなくなりはしないだろうが、ゆるやかに「ワンノブゼム」になってくと思う。

高所得層ほど地上波をみない傾向はここ数年ずっと強まってきました。これは収入格差が情報格差をもたらしているのか、それとも情報格差が収入格差をもたらしているかはわかりませんが、データとしては世界的な傾向になっています。
 (*中略*)
インターネットやBS/CSの出現によってもともと地上波をみていた視聴者を結果的に仕分けたうえ、分流することになってしまいました。結果的に低所得層の多くが依然として地上波の視聴者に残ってしまいました。
 
この結果、高額商品のコマーシャルが地上波に載らなくなるのは当然です。こここ1,2年、高級車や高級住宅のコマーシャルが地上波に出なくなったことも既に気付いた方が多いと思います。

 であれば、高級車や住宅など、セレブリティな商品のCMを地上波無料放送に流しても無意味だろう。しかしその一方、花王やライオンなど、テッパンのコモデティ商品にとっては有効な媒体で在り続けるだろう。

 話は逸れるがコレ、日テレのコラムというのが面白いと思った。2008年4月1日に改正・施行された放送法は、従来規制されていた「認定放送持株会社放送持株会社)」を「規制緩和」している。これにより、日本でも大規模なメディア・コングロマリットが成立する可能性が増えている参考URI。なんだかんだ言ってもマスコミが世論形成に果たす役割は大きい。もしも同一資本の下で高所得層向けニュースと低所得層向けニュースが同時に製作されるような事があれば、「テレビ資本の世論形成力」は減衰するどころか、より増す可能性がある。

 ネット広告が雑誌を抜いたと話題になったので見てみたが、全般的な費目見直しのほうに目にとまった。

<「日本の広告費」改訂について>
今回、「日本の広告費」の推定範囲を改訂した。
──改訂のポイント──
①マスコミ四媒体広告費は、「雑誌」の推定対象誌を増加(専門誌・地方誌等を拡張)した。
②「インターネット広告費」は広告制作費を推定した。
③プロモーションメディア広告費は以前のSP広告費の呼称を変更し、内訳を見直した。
④「屋外」は以前の広告板・ネオンに屋外ビジョン・ポスターボード等を追加した。
⑤「交通」は以前の鉄道・バスに空港・タクシーを追加した。
⑥「折込」は全国の折込料金を見直して推定した。
⑦「DM」は以前の郵便料に民間メール便配達料を追加した。
「フリーペーパー・フリーマガジン」の広告料を推定した
近年の広告界はインターネット広告やプロモーション関連広告が急速に拡大するなど変化が著しいことから、この数年間、広告費推定範囲、推定方法の調査・研究を行い、媒体別広告費の推定範囲を改訂した。

 これは「ネットが主流になり四大媒体*1に取って代わる」のではなく、「ターゲットごとに適切な武器選択が必要な時代」になる。という認識かもしんないと思った。地下に籠る相手にはバンカーバスター、面制圧には燃料気化爆弾。もうじゅうたん爆撃一辺倒ぢゃムリ。みたいな*2

 この記事はちょっとムダに扇情的な感じがするので、まずカウンターを当ててみる。

(1)サラ金に対してはネガティブなイメージがあるが、それ自体が「マスメディアに埋め込まれたもの」という疑念が抜けない。銀行がまず融資しない個人事業主や起業家*3にとっては、グラミン銀行(マイクロファイナンス)的な役割を果たしているとの指摘があり、一概に否定的に捉えると、産業構造改革の芽を摘むリスクがある*4

(2)以下に代表されるようなパチンコの「反社会性」について

私たちにとってギャンブルは息抜きです。ただ、射幸性が低いものでないと、娯楽にはならない。パチンコは、1000円で何分遊べるかわかりますか? 1 時間で1万円は軽く消える。あれほど射幸性が高く、多くの人の生活を直接圧迫しているギャンブルはないんですよ。そういったもののCMを、子どもたちに見せてほしくないんです。

これについては、公営賭博よりはマシとの指摘がある社会実情データ図録|賭事・ギャンブルゲームの控除率(テラ銭の割合)。記事にあるような1時間で1万円呑み込むような台の限界は、業界が最も良く知るところであり、特に高齢者層の多い地域を中心に、長く遊べるよう貸玉代の値下げが広がっている。なお、"控除率の低い欧米等の合法カジノの種々のテーブルゲームと比べても控除率の高さが目立つ" 競馬・競輪・競艇オートレースサッカーくじの収益は「公益の為に」使われる。主務官庁の指導の元に各種「公益法人(いわゆる天下り先)」に配分されるが、この配分には財務省のコントロール(つまり国会のコントロール)があまり効かない。さる官庁のみなさんはこの資金を「自分のおさいふ」と称する。

 そんな具合で記事の主題は「わかりやすいテレビ叩き」に終止しているのだけれど、

最近でいえば、トヨタの「レクサス」の広告展開が、テレビの影響力のなさを明らかにしたと思います。広告出稿量ナンバー1企業のトヨタは、レクサスの顧客となる高所得層はテレビをあまり見ないというデータを持ってますから、レクサスのテレビCMをほとんど打っていません。今まで業界人がうすうす感じていた「テレビを使わないほうが、品が良くないか? ブランド構築においてプラスじゃないか?」という思いを、レクサスは忠実に体現した。ただ、今の段階で、レクサスは国内では苦戦をしている。なのに、「ほら見ろ、テレビCMをやらなかったからだ」という声は聞こえてこないし、トヨタ自身もテレビCMを増やそうとしない。このこと自体が、テレビの現実に企業側が気づいている証左だと思うんです。

 広告に関わる人々は、「では高所得層に効く媒体はナニカ?」と考えるだろう。たぶん一番真剣に考えてるのは、広告代理店だ。生活かかってるし。

*1:テレビ・新聞・雑誌・ラジオ

*2:そうすっと広告代理店や企業の後方部門は、それなりの組織改編をやる必要がある

*3:サラ金を使っているかどうかはともかく、NPO法人も銀行からの資金調達はまず難しく、官公庁の業務発注頼みの「事実上の公益法人」に化けているとも言う。

*4:銀行は税金注入(雅びな事に「公的資金」と言うが)や低利率抜きではやって行けない「生活保護受給業」と認識している。ソレで得た利益がありながら、サブプライムで揺れる米国金融業の攻略に乗り出さないのは、パラダイス鎖国っぽく見える。覇気が無い