私信:たけくまさんに頂いたコメントへの返答

 たけくまさま。コメントありがとう御座います。字数節約の為、敬語と礼儀を省かせて頂きますが平にご海容賜りたくm(_ _)m。

実際にやってみると思わぬ問題や障壁は待ちかまえていることでしょう。そこは、正直やってみないと分からないんですが、マンガ界の閉塞状況を打開する試みとしては、検討に値するのではないでしょうか。

 はい。まずこの部分は、値千金に思っています。

■1)マンガ・プロデューサーが果たして「高コスト」であるのかどうかは、もう少し検討する余地があるのではないかと思います。

 自分は業界の実情を知らぬヌルいマンガ好きに過ぎませんので、仔細の検討には踏み込めませんが(アタマだけですみません)、国内のサクヒン・ビジネスは基本的に「業界の仁義」で動くので、「現行方式」と「日本型エージェント方式」のゲンミツなコスト比較は困難に思われます。「成果主義の弊害」と同様、やってみなければわからない部分が大きいハズです。

 より緊急度が高いのは、以下の心理的抵抗感と思われます。

■2)日本型マンガ・プロデューサーは、出版社から見たときには編集者のアウト・ソーシング的な要素も強く〜

 2-a)人事や総務のアウト・ソースはともかく「編集者のアウト・ソーシング」となると、ソニーの技術者に向かって「船井電気たれ」と言うに近いインパクトがあるように思います。個々の編集者にとって「編集業務」は「出版社ではたらく理由」のメインディッシュであるように思います。

 2-b)また企業から見ても、「人員削減(編集者アウト・ソースするから)」には慎重にならざるを得ません。しなければ費用削減効果が出ませんが、その前に再就職支援会社の斡旋や、割り増し退職金などの「解雇コスト」を払う必要があります。善し悪しは別として、日本の「解雇コスト」は結構高い部類のハズです。

 主にこの二つが理由となり、「マンプロ抵抗勢力」が発生する可能性を考えています。具体的な様相は想像できませんが、フリーのニュースペーパーが直面した障害のような、「ファミリーの結束っぽいナニカ」です(現状は快適メンタリティ?)。

■3)ただ僕は、もう少し「水源地改革」について考えていきたいと思っています。

 従って、自分としても「水源地改革」は「甲」、「蛇口改革」は「乙」と考えていますが、両者併行で進むのが望ましく考えています。

 雷句-小学館訴訟は以下の流れの帰結と見ているからです。

  • a):雑誌部数減が編集部への利益確保圧力となり(90年代終盤)、
  • b):各社横並びで「あの判型、あの厚さ、あの刊行間隔」で「市場の細分化」に応えようとするも限界。
  • c):次策として、アニメ化/ドラマ化など、二次利用収益の重視に転換(2003頃から?)。

 当初、担当編集者にかかっているのは「部数拡大バイアス」と書きましたが、現在ではより純粋な「利益拡大バイアス」ではないかと考えています。「二次利用収益を最重視」する場合「出版社のマンガバナレ」が発生します。

  • d):その結果、マンガ家を粗略に扱うようになった(作家というより、テレビドラマのネタ出し屋的な)。

 したがって、「水源地改革」と「蛇口改革」は両輪のように思っています。

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 「マンガづくり・モチベーションの回復」である「水源地改革」ひとつとっても、何人もの人が全力で掛からない限り、成るかどうかの賭けであるように見えます。ですからそちらにフォーカスする人々の邪魔をするつもりは毛頭ありません。しかし、マ界の行く末に関心をよせる全員が、質的向上だけに目を向ける事に対しては、PVがどうだろうが乙案の提示が必要と考えました。

 あえて否定的な書き方に振ったのは「マンガ・エリートのタコツボ化」を恐れたためです。おそらく邦画衰退期にも、心ある映画人/ファンが、ほぼ類似の事を試行しているはずであり、望むところにたどり着けなかったがゆえの現状であると考えています。

 人でアレ、モノであれ、美大はその戦史の宝物殿と愚考します。ただし、例えば「七人の侍」は映画館主には超不評だった、というような情報は出てこないはずです。チケット代を倍とれたならともかく、上映時間と一日の客数を考えると、あのサクヒンの儲けはすげぇ疑問に思います。映画館主が長い目で見てくれるわけもないですし、リアルタイムの人々にとっても、アレがデートに使えるかと想像すると、やはり疑問に思います。

 幸いな事に、マンガ産業は、まだ、さほどタコツボ化していません。しかし、今から考えるに、サンデーが『小学館という会社のCMとして』犬夜叉とガッシュとコナン(だったかな?)のアニメのCM、それもすごい力の入ったもの、を放送した数年前の時点で、小学館は、マンガそれじたいの収益から、アニメ化など二次収益の重視(マンガバナレ)に大きく舵を切っていたのだと思っています。

 自分は一介のオタクに過ぎない身の上ですが、望むらくは、それを担うのが誰であれ、「水源地改革」と「蛇口改革」の並走を願っています。もしもマンガ産業という『大先輩』が縮退すれば、そこに多くを背負っているアニメ産業とゲーム産業にも少なからぬ影響が出ると考えるためです。

 以上、拙文ゆえお腹立ちの点もあるかと恐れますが、どうかご寛恕賜りますようm(_ _)m。
 マ界の繁栄を祈ります。