鬼木 甫氏の地デジ問題に対する見解まとめ

 鬼木 甫(大阪学院大学経済学部教授/大阪大学名誉教授)の考察より抜粋・要約。

  • 前提:電波帯域は国民の共有財産
  • 試算1:2011年7月の残存アナログ機数は約5,600万台。
  • 試算2:約5,600万台のチューナー購入費用は、大量生産による価格低下を考慮に入れても計3,200億円程度←※現状、生活保護世帯を除き、視聴者の自己負担が原則。
  • 試算3:アナログ停波から得られる電波132MHzの資産価値は約1.7兆円
  • 試算4:テレビ用電波(700MHz帯電波)1MHzあたりでは資産価値は 131億円。←※現状、電波割当ては比較審査方式。電波使用料は「無償に近い」と言って差支えない。

 「効率性」の点からは、2011年7 月の停波はおおむね正当化できる。この時点で地アナを停波し、新しい電波を手に入れ、無線インターネットをはじめとする新サービスを開始することは、アナログ受信機を生かして使うためのデジタルチューナー生産費用を考えても十分にお釣りが来る。同時点での停波は、情報通信部門から生産される付加価値(GDPの構成要素)を最大化し、日本経済の成長に貢献できる。

 しかしながら「公平性」の点からすれば、 2011年7月の停波で余る電波帯域の使用免許を、従来からの電波割当方式である比較審査で発行すれば、新たな電波の割当を受ける事業者が、デジタル化で創出される電波帯域という1.7兆円の国家資産を、ただ同然で無期限に使用する権利を入手することになる。

 以上を要するに、「一方で兆円単位の電波資源を創出し、その無期限使用権を無償に近い代価で事業者に割当てるために、他方で国民の一部あるいは全部が数千億円の一時支出を負担する」という不公平を生ずることになる。これは当然ながら直前になって抗議、停波延期要求、補償要求などが続出し、社会的混乱を生ずる可能性が大きい

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※所感:元記事はキッチリ読むと難しくてうざいんだけども、ラストがめちゃめちゃ盛り上がった。怪獣映画のハカセみてぇだと思った。

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