地デジ問題のアプローチ(初号)

 地デジを巡る利害関係は錯綜している。日々のニュースを追って、アレがいかん、これぢゃダメだ、とやっていると、迷走しかしない。個々の細かい問題に「ウマい手」を考えついても、それは他の問題を生みがちだからだ。

////

 x264の設定のやうだと思う。ここ1年あまり。
 サイズは大きくても構わない。画質最優先。ならエンコなどしないのが最強。うんと小さく。でも画質劣化は最小限に、と言い出すと俄然厄介になる。さらにエンコ時間をなるたけ短く、とか言い出すと断然地獄になる。あまつさえ、インタレ解除とかSAR/PAR/DAR/MAR/ARSとか最適なカスタム量子化マトリクスとかDecoding Delayとか白紙フレームとか、PowerPC G4の再生負荷とか考えだすと死兆星を見る。

 最終的に動画エンコは、画質・ファイルサイズ・エンコード時間・再生負荷、この4要求のバランスだ。何を重視するかは人により違う。妥当なバランシング・ポイントは人により違う。

 雑で充分。まず理想。理想なき妥協など迷走に過ぎない。理想なき者の唱える「この設定が正解!」など、一瞥にも値しない。「理想の提示」が無ければその設定の、自分にとっての妥当性を推し量る事はできないからだ。

 このスタンスを失った瞬間に、オレは「駅の名前を全部言えるガキ」に成り下がる。それに気づかず、空虚なべき論を振りかざすと軸足を失う。

////

 「地デジ問題」の本質は、著作利権、電波利権、モノツク利権、NHK、そして消費者。この5者の利害調停だ。それぞれが既得権益を持ち、それぞれが「自分以外」を責めている。

 オレにとっての理想はナニカ?

 たぶん理想は、持続し得る映像文化の発展。これには持続可能な映像ビジネスの発展が要る*1

 オレにとっての「望みうる最善」はドコカ?
 たぶん電波利権(圧倒的な無料放送)と、モノツク利権(録画文化)の減殺。
 そして光学ディスク、有料放送、オンラインファイル販売の普及率向上。
 これに伴う視聴機会の低価格化。
 ひいては、「シチョーリツが全てです!」から「繰り返し、何度も見られるのが良い作品」。ならびに「価値の創造者に、成果に見合った報酬が渡るシカケ」へのシフト。

 したがって、自分の書くものは、電波利権、モノツク利権、そして大多数の消費者にとってすら、受け入れ難いものになってゆくだろう。

 それがどーした。理想を胸にかき抱き、工夫し続ければいいだけのことだ。

*1:したがってカルチャーファーストや補償金など、まず文化論ありきの議論にはノリきれない