『アナログ停波までに片付けねばならない5つの課題』に関するメモ

1)5000円チューナー問題

 単純に30p程度のSDにすれば、社会的移行コストが激減する。幸いな事に日本のDTVはそれがやりやすい(セグメント方式)。

2)B-CASの廃止と解体

出荷停止はリリース文を読む限り、自主的な措置のように見える。その一方でこの発表があった当日、エスケイネットB-CAS社に呼び出されているという情報もある。実際にそこでどういう話になったのかは不明だが、もしB-CAS社が販売停止を命令できる立場にあるとするならば、それはB-CAS カードの発行を停止するという実力行使をちらつかせる以外にはないだろう。
 
 ここで考えなければならないのは、一般市民がソフトウェアの改造を行なった責任は、メーカーがとらなければならないのか、という点である。もちろん改造情報をエスケイネット自身がリークしたというのなら別だが、そうでなければユーザーが自力でなにかしたものも、メーカー責任になるということである。これは大変なことだ。

 単純に「メーカー」という表現に疑問有り。出資比率的にはB-CAS社にはパラダイス鎖国連合のマジノ線という側面が伺える。

 価格性能比の向上を忘れて絶対性能を誇るのは、趣味でやってほしいところ。国内家電に補償金を拒む資格はないと思うのココロ。

3)NHK構造改革

もしテレビを見なくなると言う人があったら、忘れずにNHKの受信契約を解約すべきである。

 逆に地デジ対応受信機を買った時点で、NHKが「テレビを買う買わないは視聴者の自由であり、あえてテレビを買ったという点で契約の自由には抵触しないと考えている」とやってくる。

 この業務の民間委託が進めば、新聞拡張団ぽくなる公算が高い。

一方NHKでは、大量の解約に備えて構造改革が必要である。
(中略。多数のグループ会社は)
実際には会社名にNHKの三文字が付いているから仕事が取れているという現状は間違いなく存在するし、公共放送という立場ではできない営業活動によって、NHKのリソースを消費しながら収入を得ているわけだ。

 これら「多数のグループ会社」にとって「天下り」は貴重なパイプだろう。

4)停波実験の必要性

とにかく50年間変わらなかったものを止めるのだから、どれぐらいの公共機関や設備で利用されているのかも含めて、社会に与える影響がいまだ不明だ。

 総務省は09夏から段階的アナログ停波に踏み切る意向を表明している
 ただし5000世帯x3カ所という数字は、「トラブルの洗い出しが目的」なら不足とも思える。逆に「停波に問題はありません!」といえる材料が欲しいなら、なんとでもできそうな世帯数ではある。

 同時に『地域ごとに段階的にアナログ放送を終了させているイギリスの取り組みを視察させるため、総務省の担当者を現地に派遣する方向で検討』との事だが、報告書は広く公開していただきたいところ。

5)受信コストの計算と補助

地デジを買った場合
  1. 地デジ用のアンテナ設置:電気店の工事でだいたい3万5000円。
  2. 分配数が多ければブースターや分配器を付けるんで、プラス1〜2万。
  3. 新東京タワー問題(2012)アンテナ再工事。2〜3万円。
CATV経由で視聴する場合

 デジタル放送のインフラコストを吸収するため、無償でのパススルー伝送は経営的に難しい可能性。なんらかの放送サービスと抱き合わせで月4〜5千円の可能性。
 ただし、おおらかなCATV会社もある模様。

「ほー、東京MXTVも映るか。お得ですね。本来これは東京(わが家は神奈川)の番組だから取らなくてもいいんですが、○○は鷹揚なんですよ」
 
 結局、わが家は何の工事もしなくても、ケーブルテレビのコンセントにつなぐだけでデジタル放送を見ることができるとわかった。そして電気屋さんは、見積書に「0円」と書き込んだ。ケーブルテレビ局はしかし、そんなことを伝えはしない。彼が現れてくれなかったら、相変わらず私は神秘の中で大金を支払うのが当たり前と思い込んだままだったろう。

 こういうのは「私の街の電気屋さん」にしか分からない事だ。

IP再送信が全面解禁になった場合
  1. Bフレッツ使用料。マンションで2.5k、一戸建てで5k。
難視聴地域対策。

地デジの人口カバー率

  • 現状:約93%。中継局数約2000局
  • 残り:約7%。必要中継局数約9500局←NHKと民放の負担。

 現在首相官邸で「地上デジタル放送への移行完了のためのアクションプラン2008」というものが動いている。全体としては、関係省庁が一同に介して普及率100%のために使える制度(補助金)などを出し合っていると言う印象を受けた。ほとんど挙国一致体制。一応公開PDF全文をHTML化してみたが、このうち難視聴地域対策は以下に含まれている。

地方局の経営状態

総務省がなにか地方局に恨みがあって、こいつらを根絶やしにしたいと思っているのなら現状のまま進行すればいいが、

 これはもちろんあり得ない。そもそも地方局って「地元の先生」と関係が深い事が多いから。よーするに「地デジ問題」は「古い自民党」を直撃する側面があるために、一層「不可解さ」が増しているように思う。

 これは、総務省の「認定」を受けた「放送会社」は、純粋持株会社としてキー局、同一ネットワーク系列局、各種子会社を傘下企業に持てる。という「規制緩和

 ちなみにイタリアの第74代、79-80代、82代首相を務めるシルヴィオ・ベルルスコーニは、全国的な地上波放送を行う民放4局のうち3つを所有、イタリアのメディアの70パーセントをコントロールするといわれる(URI)。日本では、個人名が表に出るといろいろあるので、「ゼーレの老人達」っぽくなるのかもしんない。

隅々まで届けたいのは、「ハイビジョン画質」ではない。
  • デジタルテレビはテレビの立ち退き
    • アナログケータイが廃止となり、デジタルケータイ一本となったおかげで、誰もがケータイを持てるようになった(電波帯域の有効活用)。音が悪いとかすぐキレるとか言われたらしい。
  • ハイビジョンは、東京五輪の夢の跡
    • もっと大きく、もっとキレイに。みんな先をあらそって買うに違いない。だって所得が倍増するから。

 デジタルテレビとハイビジョンは、混ぜてはイケナイ洗剤だったのだと思う。

所感

 あと3年で100%品質を100%の世帯に届けようとすると、下手すれば死人が出る。

 具体的に死人が出ている図は浮かびにくいのですが、明治以来、富国強兵/高度成長に特化した日本の政府・行政構造は過去に様々な「縦割りのスキマ」を生んできました。

 「地デジの災厄」は、少なくとも金額的には、成田や水俣を超える可能性があると思います。