低価格PCが地デジに与える影響
なお、原材料高や原油の高騰による物流価格の上昇などが値上げの主な原因となっているだけでなく、EeePCのような5万円台の低価格ノートパソコンが相次いで発売されたことで、店頭の売れ筋価格が下がったのも一因となっているそうです。
これは低価格PCでは勝てないという事だと思う。「ハイテクハイテク日本はやっぱりモノツクリ教」は絶対性能に優れるかわり、価格性能比がおろそかになる。商売上どちらが重要かというと、たぶん後者だろう。店頭における低価格PCの売れ行きは五台に1台にもなるそうだが、たぶん最も喰われているのは、各社が技術力の粋を集めた「小型ノート」だ。
■2007年通期の世界パソコン出荷台数(速報値) ---------------------------------------------------------------- メーカー 2007年 2006年 伸び率 出荷台数 市場シェア 出荷台数 市場シェア (1000台) (%) (1000台) (%) (%) ================================================================ 1 HP 50,526 18.8 38,838 16.5 30.1 2 Dell 39,993 14.9 39,094 16.6 2.3 3 Acer 21,206 7.9 13,594 5.8 56.0 4 Lenovo 20,224 7.5 16,609 7.1 21.8 5 東芝 10,936 4.1 9,292 3.9 17.7 その他 126,075 46.9 117,971 50.1 6.9 合計 268,960 100.0 235,397 100.0 14.3 3 Acer (Gatewayを含めた場合) 24,569 9.1 18,615 7.9 32.0 --------------------------------------------------------------- 出典:IDC Worldwide Quarterly PC Tracker(2008年1月16日)
もしも「国内出荷台数首位を誇るNEC」が音頭を取り、国内各社が追随したとしても、HP、Dell、Acer、Lenovoに追随するギリは無い。てゆうかそれどころぢゃない。台湾が仕掛けた低価格戦争は始まったばかりだ*1。
従って、当面、国内各社にできる事があるとすれば、次の二つ。
- シナリオ1:速やかにPC市場から撤退し、戦力を保全する。
- シナリオ2:『地デジテレパソ』の使い勝手向上に突撃する。
どちらでも結論は同じ。
おそらく国内各社は、B-CAS/コピワン/ダビ10/さらにその先のナニカ、を「パラ鎖絶対国防圏」として死守する。「差別化」したければこれほど便利な非関税障壁は無い。
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ここでB-CAS類からなる「パラ鎖絶対国防圏」を「固有の端末ファミリー」と考えると、さらに2パターンのシナリオが考えられる。
- シナリオ3:固有の端末ファミリーを立ち上げ、モノの価格を維持する。
- シナリオ4:固有の端末ファミリーを安価に売り、儲けはそのメンテ/コンテンツ配信で出す。
せっかくB-CASがあるのだから、録画を『焼き増し』のように有料化すれば日本の地上波放送が「シナリオ4化」するように思う。「この番組はX回コピーされたから出演者の取り分いくら」とやれば、補償金などでモメル事も無い*2。
もっとも、それを「無料の基幹放送でやる事の妥当性」など雑音の発生は避け難いし、それを乗り越えた上で「史上空前のとりぶん争い」が起きる。
一方で、国内家電は合同でアクトビラを立ち上げては居るものの、これが地デジの相対化*3に資するかというと、相当な時間がかかりそうだ。
最悪のパターンではあるが、当面はシナリオ3がもっとも蓋然性が高い。
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ちなみに「モノツクリ(モノが利益を産むというファンタジー)」は脳を蝕む麻薬と思ってます。だいたい「無資源国家でモノツクリ」って時点でアクロバティックだし。それしかない状況で見事にトンボ切ったご先祖様をコケにする気はしませんし、ダイソンやセグウェイやフェラーリを目指す人達に止めとけと言う気もしませんが、現在の国内AV/PC家電の産業規模は維持できんとも、すべきでないとも思ってます。
モノは「ココロを動かすナニカ」を運ぶ土管に過ぎません。