『亡念のザムド』の値段とか。

亡念のザムド』の視聴料はHD版で400円、SD版で300円。HDは720pのハイビジョン画質でSDは480pのDVD画質となる。音声はどちらも5.1chに対応する。
オンラインレンタルというサービスを考えても、DVDなどのレンタル価格と比較して高いという意見が多いし筆者もそう思う。
 
これは完全新作でありPS3独占配信の『亡念のザムド』が特別だということだろう。
どうやら、この作品はオンラインレンタルというよりPPV(ペイ・パー・ビュー)方式と見なしたほうがよさそうだ。

一窓で制作費を回収できねばキャッシュフローが持たない。当たる保証はどこにもないのだ。制作費は一窓で回収しきらねばならないだろう。逆にここを乗り切れば、二次配信や光学ディスクの低価格化が見えてくる。

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ハリウッドは北米市場の映画館で制作費を回収しきる事を目標においている。同時に、この「ファースト・ウィンドウ」でアタればアタるほど、多種多様な「ウィンドウ(上映機会)」が放映権を買いにくる。

【ハリウッド映画に見るウィンドウ】

WINDOW1 映画興行 →0ヶ月
WINDOW2 機内上映 →1ヶ月後
WINDOW3 レンタル・セルDVD発売 →3〜6ヶ月後
WINDOW4 ペイ・パー・ビューTV →7ヶ月後
WINDOW5 ペイTV局 →1年後
WINDOW6 ネットワークTV局 →2年後
WINDOW7 ケーブルTV局 →ネットワークの1年後
WINDOW8 地方TV局 →ケーブルTV放映のあと
WINDOW9 インターネットによるオン・デマンド配信 →随時

(『ビッグ・ピクチャー』エドワード・J・エプスタイン著/塩谷紘訳/早川書房

一作で七回。こんだけ回収ルートがありゃそら光学ディスクも安いっての。

多種多様な収益機会があると言う事は、トータルでの収益を見込んだ投資もできると言う事。その結果が「製作費○十億円!」だ。

もちろん七回はMax値であり、駄作や失敗作は十把一絡げで「永代放映権」を売り飛ばしちゃったりするようだが、制作費が回収しきれなくても「損切り」にはなる。多種多様な放送事業者があると言う事は、「穴埋め需要」もデカイという事であり、「ハズレの出血」を抑えられるという事だ。これで「次」に回す資金を多少は守れる。

ハリウッド・メジャーは「映画会社」というよりは「コピーライトの総合商社」の趣きがある。

ところで、元マイクロソフトCTOのネイサン・ミアボルドさんは、現在「有望な研究開発に投資して、その特許の使用権を売る会社」というのをやっているそうだが*1、、、よく似ていると思う。

特許権著作権も似たようなものだ。一のアタリを引く為に、百のハズレに耐える必要がある。「一作ごとに事業を清算する方式」は、一のハズレで大騒ぎになる。

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日本では、多くの場合、一窓は「無料の地上波放送」が務める。

テレビ局が版権を保持する場合、テレビ局の「番組制作費」で人目をひくアニメは作れない。いきおい製作委員会方式で多様な業界の出資をあつめ、同時に多種多様な「スポンサーの意向」もあつめる事になる*2

そうでない場合は、版元がオカネを払って放送してもらう事になる。

投資回収は光学ディスクに待つしか無い。

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一窓が「無料」で、しかも「録画されちゃう」てのは、かなり苦しいんぢゃなかろかと思う。

*1:日本では大学の研究室等からの評価が高いが、企業法務系からは警戒感が強いそうな

*2:残念に思える主題歌変更や、残念に思えるアイドル声優起用など?....なんとなく「ゼーレ」って作り手から見た「製作委員会」をビジュアライズしたもの、のよーな気がする