かんぽの宿2

郵政改革の本質は

  1. 「ゆうちょ」日本最大の銀行事業
  2. 「かんぽ」日本最大の保険事業
  3. 「郵便」日本最大の物流事業
  4. 「郵便局」日本最大の店舗事業

この四つが公営であるが故に発生する、二つの弊害を「ぶっ潰す」事にあった。

  1. 公務員による天下り
  2. 族議員による「ジミンのジバン」へ流れるオカネ

2005郵政解散において、全国70カ所におよぶ「かんぽの宿」は、郵政腐敗、ムダの象徴だった。かんぽの宿は;

  1. 不必要な用地取得で土地利権を潤し、
  2. 不必要に豪華な建物で土建利権を潤し、
  3. 不必要に高い減価償却費を抱えた事業の赤字で、
  4. 簡易保険事業の利益を損ねていた。

ゆうちょかんぽの総資産は330兆。利益度外視の運用で天下りに席をつくり、利益度外視の事業で民業発展を阻害し、多少の赤字など屁でもない。出たとしても、親方日の丸ソ連邦

このカネと、それが産む事業へのアクセスを断たれる事は、族議員天下りにとって、手足をもがれるに等しい。

郵政民営化は、彼らから、このカネと、それが産む事業へ容喙する大義名分を奪った。

小泉改革は、古い自民党をぶっ潰したと言っていい。

郵政民営化で、かんぽの宿は、かんぽ事業と分断された。これにより、簡易保険は「かんぽの宿が産む赤字」から守られる。

かんぽの宿を手がけるのは日本郵政。政府出資100%の株式会社。すなわち、この不良資産処分の成否は、国庫の未来に波及する。

昨今の報道の中で、「かんぽの宿日田」と「ラフレ埼玉」という二施設の収支が明るみにでた。いずれも赤字の主因は異様に重い減価償却、つまり設備投資だ(誰の為の改装なのか)

買い手は「ガチョウがこれから産むタマゴ」しか考慮しない。過剰投資は不良資産だ。赤字事業も不良資産だ。土地建物に幾ら掛けたかなんて問題じゃない。

「簿価さえ高けりゃヨッシャヨッシャ」すなわち「幾ら掛けたか」しか見ない昭和金融工学の信者たちが、「安過ぎる。おかしいものはおかしい」と声を揃えて唄うなら、良いカモだ。くれてやれば良い。

当然、オリックスより高く買って下さるのだろう。そうでないなら、国民の名の下に、この取引を潰した責任を取っていただこう。

かんぽの宿」の赤字など微々たるものだ。という論には与しない。赤字はゴキブリと一緒だ。一匹見たら百匹潰す覚悟で臨まねばならない。

公益事業で黒字は困る。これは利益還元だ。というなら、保険料の値下げで良いだろう。なにも土建屋を潤すことは無い。国民の健康増進なら病院に寄付でもすれば良いだろう。べつに赤字事業を作ることはない。

役人根性は黒字を嫌う。予算未消化を想起するからだ。
 役人根性は名分を好む。予算がつくかもしれないからだ。
 役人根性は本質を嫌う。予算がついたらこっちのものだ。

役人が悪とは思わない。これは職業病というものだ。

いわゆる族議員は、この「モンスター消費者」に、格好の大義名分を供給する。「トーキョーのオカネを地方の為に!」。始祖鳥は田中角栄さん。

2008/12/27(土)郵政民営化、見直しが必要=鳩山総務相
時事:URI
 鳩山邦夫総務相は27日、郵便事業会社福岡支店(福岡市)などを視察後、記者団に「小泉純一郎元首相がやった郵政民営化の中でまずい点、国民にとってサービスが落ちた点もある」と語り、郵政民営化の見直しに向けて聖域を設けず議論する必要があるとの考えを示した。
 また、民営化後の日本郵政の経営形態を維持すべきだとの自民党内の意見に関し、鳩山総務相は「頑固な保守としかいいようがない。自分たちが改革をやり、それに手を入れさせない(というのは)、それこそ改革に逆行する」と指摘した。(2008/12/27-17:35)

一方で、「改革利権」はおそらく存在する。

改革には「うまくやるヤツ」が付き物だ。改革派なら公明正大清廉潔白、と言う事も考えにくい。

だが彼らに「セーフティネットの再構築」まで求めるのはムダというものだ。そこまで視野が広ければ、「改革利権」なんかやってらんねーもん。

族議員はジモトを好む。それは彼らが貧しいからだ。
 族議員はカバンを好む。ジミンのジバンが潤うからだ。
 族議員はジバンを好む。票が集めやすいからだ。

族議員が悪とは思わない。これは構造の問題だ。

族議員は地方の自立を望まない。地方経済が自立的な発展を遂げる時、ジミンのジバンが毀損する。「そんな苦しい思いをしなくても、オカネならトーキョーから取ってきてあげるから!」

彼らはそれで喰っている。カンバン、ジバンを引き継いで、何十年も喰っている。

日本の地方経済は、この「モンスター家父長」に、自立心を奪われている。だが、角栄さんが言ったのは、そんな積もりぢゃないだろう。この先ずっとトーキョーに、喰わせてもらえぢゃ、ないだろう。

同時に、そのカネの流れの中で職を得ていた人々のくらしぶりも劣化した事だろう。腐敗とは常に無自覚なものだ。と切って捨てるのは簡単だが、郵政の手は国鉄の線路より長く、道路公団の高速よりきめ細かい。どこで誰が恩恵に預かってるやら、知れたものではない。

ある意味、郵政は「事実上のセーフティネット」。少なくともその一つだったという考え方もできる。実は日の丸の中にちっちゃい稲穂と鎌が描いてあったりして。黄色で。

この観点に立てば、郵政民営化を進める一方で、併行してセーフティネットの再構築も進めるべきだった。という意見は、多いに傾聴に価する。

だが郵政にフォーカスして「国民にとってサービスの落ちた点もある」という考えには与しない。「そのサービスをやるカネを郵政にくれ」と同義だから。

しかし、それでも、巨額のオカネが文官統制(テクノクラート・コントロール)の元で動いているというのは、民主制(統治の制度)を採る国家として望ましく無い。

そこに取り付き、一体化してカネの流れを制御するのが、利益誘導型の「地元のボス」、すなわち族議員統制(クレクレ・コントロール)というのは、民主主義(思想)として未熟である。

これに加え、巨額の資金・資産の非効率な運用は、資本主義国家としての発展を期し難い。

郵政民営化行政改革の本丸」の真意は、そういう事だと思う。

したがって、09Q1鳩山問題の焦点は、次の問いに集約できると考える。

土建利権と改革利権。どちらがよりマシか?