ゲーセンと100円玉

日本の硬貨体系は、消費税率の変動に即応できる決済単位を持って無い。そらもちろん帳簿は合うよ?でも感覚的には単位が粗くないかと思った。今。

「消費税」というものを始める時点で、硬貨体系に手を入れべきだったのかもしんない。60円玉とか、120円玉とか。

端的にはゲーセン。

「ワンゲーム100円」でやってたものが、消費税だからと素直に「ワンゲーム103円」にしていれば、ゲーセンはその日のうちにこの世から消えていただろう。105円でも110円でも同じだ。まず手軽さが失われる。

「コインいっこいれる」安すぎず、高すぎず、そう惜しくもなく、しかし少しは期待のこもる単位で。「アミューズメント」という「人のココロを扱う商売」では、この感覚変化はなによりも重い。

異種硬貨対応。これが自販機であればなんという事は無い。もともとおつりを出す機械だし、コーラ一本110円でも120円でも、硬貨ユニットを換える価値がある。お客さんも三日で慣れる。

しかしゲーセンには「賑やかしの為に置いてある機械」というものが存在する。「ピンボール」を筆頭に「一日数百円入れば良い方」の機械まで、硬貨種判定機を乗っけてはいられない。これらの面倒を見ている「稼ぐ機械」にも消費税はかかる。生涯利益は落ちている。

もともと「コインいっこいれる」が前提なのだ。企画も開発も設計も機械も店主もおとなもこどももおねーさんも。この「感覚」をどう守るか?消費税率に即した値上げは難しい。3%,5%は身銭を切っても、将来的には15か20。消費税導入以来の課題だ。

もちろん「もの」を渡さぬモンキービジネス。黙って身銭を切るような、マトモな奴は一人もいねー*1

  1. ワンゲーム200円〜300円。人気低下に応じて下げてゆく。
  2. トークンまたはプリペイドカード。
  3. 換金できないメダルを売る。
  4. 高価景品で釣る。

正直4番は増えた。もちろん風俗営業法違反であり、通報されれば摘発を免れ得ない筈だが、やたら目にする。元々「所轄の裁量」が広い風営法は、「地元有力者のビジネス」に手心を加える傾向がある。大手は大手で夫々ルートを持っている。桜田門とか、そのへんに。理屈を言えばよろしくない。理屈以上に「気軽に安く遊べるところ」ちゅ空気が荒れる。

単純に120円玉があれば、「コインいっこいれる感」に近いものは維持できる。ずどんと開発費掛けたって、ワンゲーム200円も取らなくていい。これなら入り口に120円玉両替機を置いときゃ済む。

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小口現金決済においては、硬貨バラエティが価格設定の自由度を決める。社会全体を考えれば別に60円玉でも良かろうが、ここは120円玉で続けたい。

120円玉は、コンビニやキオスクや吉野家の価格設定の自由度を高め、お買い物の利便性を高める。税込み120円,240円,360円,480円,600円,720円,840円,960円。雑誌弁当菓子ガム文具、これら9金額の「受け渡し」が手軽になる。こういうのも消費活性化にならんかね。地味な上に、効果測定もできんのは確かだが。

米国のゲーセンは「クォーターX個」が普通だったりする。高い安いは物価感覚(購買力平価?)の差もあるが、硬貨バラエティに負う面もある。

  • ペニー:1セント
  • ニッケル:5セント
  • ダイム:10セント
  • クォーター:25セント
  • ハーフダラー:50セント
  • ダラー:1ドル札

「コーラ一本1ドルオーバー」というのは、米人から見るとまず正気ではない。クォーターは「小さな買い物」に向いている。そして、州単位で異なる消費税率にも向いている。

「いらねぇよそんな財布の中ジャラ銭ばっかり!」という悩みは当然発生する。これはクレカの普及に一役買っただろう。これからの日本という事なら、電子マネーやお財布ケータイを後押しするだろう。

電子マネー」はほっといても普及するだろうが、非10進硬貨は、「小さな買い物」と「電子マネー」の両方を活性化する。かもしんない。なんちて。

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もちろん「ゲーセンの退潮は消費税のせい」なんて事はない。50円玉を「基本コイン」に、50/100/150/200の幅で価格設定しろよという気もするのだれけど、100円と50円と150円というのは、ちと幅がデカ過ぎる気もする。千円崩せば、あと10回は戦える。この分かりやすさと切りの良さは戻るまい。

100円入れて1Play,キャラを選んで決定ボタン、ここまでのバーチャファイターの音とリズムの演出を、あたしゃ今でも思い出せる。50円では軽過ぎる。コイン3個じゃリズムが出ねぇ。

ああそうか、ゲーセンは「感覚上の最小消費単位」に最適化しきったビジネスだったんだ。

*1:「原価」は地代と電気代、機械の減価償却と、学生バイトの人件費。景品代がなかなか重いが、「必ず出る」ではゲームじゃない。ざっくり言えばそれだけだ。