日本の産業構成は、防弾装備の弱い零戦のようなものだ。

深澤 「草食男子」は「見栄消費」をほとんどしないんですね。

 高度経済成長やバブル期を生きた世代にとって、「高い車」とか「大きいテレビ」とか「新製品の家電」という、他人に自慢できる「見栄消費」が大事でしたから。でも今どきの若者は、自分の生活が快適であることが大切で、見栄や自慢のために消費することはあまりないわけです。

これらが「見栄消費」かどうかは知らんが*1景気変動には弱いだろう。輸出で見た場合、これらの商品群は;

  • 1)マネーゲーム信用創造で肥大した米消費者のクレカ頼み。
  • 2)中韓とのコストパフォーマンス競争のため、日本国内の給与は過去10年上がっていない*2
  • 3)日本の産業構成は、これらに偏り杉。

という特徴がある。

過去10年の企業業績の好調は、ほぼ全量が1)に負う。

    1. 対米輸出、およびそれに伴う設備投資
    2. また、同じく米市場を目指す新興国への部品・工作機械輸出*3
    3. この間「内需」はゼロ成長。

新興国とのコストパフォーマンス競争のため、日本製品は「高価格化」。同時に「低利益率化」

    1. 「高価格化」と「低利益率化」
      1. もともと日本企業は利益率が低い(株主に厳しく、従業員への配分が高い)。
      2. そこに国際競争の為、R&D費を重くした。
      3. これらの結果、過去10年の輸出は好調だった(背景に高額品需要をささえた上記1))。
    2. 「生産性向上2.0」
      1. 工場の海外移転→地方経済の疲弊。
      2. 雇用の流動化→派遣や有期雇用が有職者の4分の1に増えた。
      3. これらの結果、日本全体の給与は過去10年上がっていない*4

ひらたく言うと「モノツク利権」に富が集中」した。新興国の追い上げを躱すには仕方が無いのだが「プロジェクトXのドグマ」の蔓延は、妥当な範囲にセーブせねばならない。日本の産業構成が、これらに偏り過ぎているのは問題だ。

彼らは不況に弱い。「若者が車を買わなくなった」り、「思うように大型TVが売れなくなった」り、する。そのへんで気づいておればまだ良かったのだが、彼らは「サムスン品質で満足できない外国の富裕層」に集中して行った。

その結果日本は、08Q4金融危機に於いて、世界一GDPの落ち込みが激しい国となった*5。いわば日本の産業構成は、防弾装備の弱い零戦のようなものだ。

米国の場合、各種の「防弾鋼板」が、08Q4金融危機のダメージを減殺している。

  1. カーギルの種苗、肥料、特許
  2. ファイザーの医薬品特許
  3. デュポンの化学素材、特許
  4. コカ・コーラのブランド
  5. ディズニーの著作権
  6. 世界各地の資源採掘権

MicrosoftのOS」や「IBMのサービス」を除外しても、いろいろと「不可欠っぽい分野」に根を張り「容易には追いつけない存在」を持っている。1番〜5番は、言わば「知財で固めてインクを売る」方式だ。6番も資源採掘「権」や採掘「技術」であれば手の出ない話では無い*6

「無資源国。だから加工貿易」と直結する理由は必ずしも無い。産業構成比の組み替えは一朝一夕になるのものでは無いが*7、「ハイテクハイテク日本はやっぱりモノツクリ教」は、脳を侵す。

今回の不況を脱した時、

  • 先進国の消費者は「より堅実に」なっている。
  • 新興国の一人アタマGDPは2050になってもG7のそれを超えない。

tata nanoの欠点探しばかりでは「カローラはデカ過ぎるし、高過ぎる」の声に応えられない。世界シェアを失えば、スケールメリットが出ず、従ってコストダウンの限界が下がる。これでは「価格性能比競争」で生き残れない。移民を入れれば生き残りはするかもしれないが、それでは在日日本人の暮らし向きに資するところがない。

『自動車やデジタル家電』は『日本をけん引する産業』とは言うが、今後もそうと考える根拠を自分は持たない。「そうあるべき」という情緒はさらに無い。

GDPを支える柱」がもう7〜8本は欲しいところだ。問題は「在日日本人の暮らし向き」だ。

*1:まして草食系とかよくわからんが。

*2:失われた10年+10年

*3:これら新興国は、内需が堅調であるか、伸び代が高い。

*4:生産性向上の基本ではある。高度成長期の日本は「海外シェアの拡大」に集中したため、ここに手をつけずに済んだ。

*5:独も輸出依存度が高いが、EU圏への輸出は内国経済に準じたものと看做し得る。

*6:メタンハイドレートの研究・試掘についても、補助金が不必要な技術開発に回っていると疑う向きがある模様

*7:戦後70年近くかけてこうなっているのだし。