デジタルとハイビジョンは混ぜちゃイケナイ洗剤

日本の総世帯数はざっと5千万。ただし、稼働中の「テレビ」は1.2億台と推定される。もし普及が進まないとすれば、元凶は「ハイビジョン」だと思。地デジのメリットは画質ぢゃない。「電波の立ち退き」だ。

 NHKは、2009年4月末時点における、地上デジタル放送チューナーの普及台数が5000万台に到達したと発表した。

1)日本の総世帯数はざっと5千万。

日本の将来推計人口(出生中位・死亡中位推計)によると,日本の総人口は2005年以降長期にわたって減少が続くのに対し,一般世帯総数は2015年の5,060万世帯まで増加し,その後減少に転じる.2030年の一般世帯総数は4,880万世帯で,2005年に比べ26万世帯少ない.

2)ただし、稼働中の「テレビ」は1.2億台と推定される。

内閣府が2007年3月に実施した「消費動向調査(PDF)」をもとに計算すると、わが国でテレビは世帯平均2.5台、全国合計で1億から1.2億台保有されているようだ

なお、日本人の「テレビ視聴性向(依存度)」は高い。
  • 上記、鬼木 甫さんの記事より。

NHK放送文化研究所の「2005年生活時間調査報告書(PDF)」によれば、国民1人あたりの視聴は1日平均3時間を大幅に超えているという。またビデオリサーチ社の2005年視聴時間調査は、世帯あたりで1日8時間2 分、1人あたりで4時間7分と報告しており(日本民間放送連盟「放送ハンドブック」より)、個人単位の視聴も多い。またこれに加え、各種のレコーダー、テレビ受信機能のあるパソコン、車載テレビなども普及している。水道・電気・電話が生活のために不可欠なユーティリティーであるのと同じように、テレビは、インターネットの急成長にもかかわらず「総合情報ユーティリティー」としての地位を占めている生活必需品だ。

平均的な日本人は『2.5台の「テレビ」を使い、一人一日四時間』という事になる。

この日本人の「テレビ視聴性向(依存度)」は国際的にも高い

(※09Q2にOECDが発表した、加盟18カ国の生活実態調査によると)
1日あたりに費やすレジャー時間の割合では、トップのベルギーが27.1%、加盟国の平均が24.1%であるのに対して、日本は21.3%にとどまり、メキシコに次ぎ、下から2番目という結果となった。さらに、レジャー時間の過ごし方について、日本は「テレビやラジオの視聴」が占める割合が47% で、メキシコの48%に次いで最も高く、「スポーツ」が6%、「友人・知人に会う」が4%、「イベントに参加する」が0%と、インドアな傾向にあることが示された。

よくも悪くも、実態はそうゆう生活。

ところで、2006年にフィンランドの運輸通信大臣(たぶん当時)が、国内で講演している。ここに「停波1年前で世帯普及率50%未満」を伺わせる記述がある。

フィンランドは、あと1年で、つまり2007年9月にデジタルテレビへと切り替わります。ほかの欧州諸国に先駆けて、地上波テレビ放送を完全にデジタル化いたします。既にフィンランドの全世帯の半数近くが、デジタルテレビ、あるいはセット・トップ・ボックス(set-top box:テレビに接続してCATVや衛星放送などを受信するための装置)を購入しております。残りの半数の世帯は、あと1年弱で切り替えなければなりません。地上波テレビ網のデジタル化が、来年春の通信政策の最重点課題となります。

この後、フィンランドのアナログ放送は無事2007年に廃止された。「別に見れなきゃ見れないでいいよ」という人が多かったのかもしんない。少なくともこの言い回しの中に「簡易チューナ」を「まがいもの」扱いするメンタリティは無い。

3)もし普及が進まないとすれば、元凶は「ハイビジョン」だと思。

諸外国の地デジは「ハイビジョン」なのか?

フィンランドでは、ほとんどのひとはTVを買い替えず「デジボックス」ーーつまり日本でいう「簡易チューナ」と思われるーーを買って視聴しているようだ。以下にデジボックスの写真がある。

既存の「テレビ」に繋いでも、放送が16:9だったら、横が見切れたり黒枠が出たりする。また「ハイビジョン(縦1080x横1440*1=155万画素」は、「今までのテレビ(縦480x横640*2=30万画素)」より、部品代が高くつく。フルスペック・ハイビジョン・パネルのテレビに買い替えるなら尚更だ。

英国でも米国でも、テレビを買い替えるのは、壊れたとか、買い替え期を迎えた人くらいで、基本は「チューナーボックス」のようだ。米国に至っては、無条件で「チューナー購入クーポン」が貰える。これら諸外国の「地デジ」はハイビジョンでは無いと思われる。

誰が「ハイビジョン」を望んだのか?
  • NHK技研:彼らは1965の東京五輪直後に「未来のテレビ研究」に着手している。これについてはNHKの説明とは別に「カラー受信契約」に代わる未来の成長材料を期したとの説がある。ところで....スーパーハイビジョンて、別契約になるのだろうか?
  • 伝播利権(放送局全般):ケータイのデジタル化に見るように、無線をデジタル化すると「電波帯域に空き地ができる」and/or「同じ電波でも大勢が話せる」。これを「テレビ」でやると「テレビ局の数が増やせる」。既存のテレビ局としては、これは困る。「ハイビジョンは素晴らしい。ぜひともコレをやりたい....だから、電波をもっとくれ」みたいな?
  • モノツク利権:端的に言って「従来のテレビ」は枯れきっており、製品の差別化が難しい。
    • もなみ9歳F: 高画質を求めてるのは誰?(前編)(2007年10月28日)
      • 結論から書きますと、高画質を求めているのはユーザー様ではなく、メーカー様で、メーカー様が「ユーザー様は高画質を求めている」という風潮を作り出したというのが仮説の内容になりますー。
      • そして、高画質を求めているという風潮をメーカー様が作らなければならなかった理由があると推測されるのですー。
  • 著作利権:といってもこれは伝播利権(放送局全般)と被ると思うのだけど、
いずれにせよ、消費者が頼んでもいない「テレビのデジタル化」にオカネを払わねばならないというのは、望ましくない

テレビのデジタル化は不可避であり、遅滞無く進行して頂きたいところだが、これを遅滞無く進行させるには、消費者の出費を最低限に抑える必要がある。
画質など三日で飽きる。それでなくても「デジタル移行」はおおごとだ。『2.5台の「テレビ」を使い、一人一日四時間』な国なら、尚更だろう。そこに「ハイビジョン」を混ぜれば「完全移行」はさらに厄介度を増す。

4)地デジのメリットは「ハイビジョン」ぢゃない。「電波の立ち退き」だ。

笑ってしまう事に総務省の言う「10〜20兆円の経済波及効果」というのは、「空いた電波」が産むものだ。それは「地デジの経済波及効果」ではない。成田で動くお金を「農民立ち退きの経済波及効果」と呼ぶ者は居ない。

基本的に、デジタルとハイビジョンは混ぜちゃイケナイ洗剤だと思う。

*1:地デジの放送データじたいは4:3であり16:9では無い。縦だけ「ハイビジョン」に合わせ、横はテレビが拡大する。

*2:無理矢理にデジタル換算した場合

*3:ここでは720pの事