09著作権法改正は、B-CAS撲滅に使えるかもしれない。

■パーソナル・バイアス
録画されて困るもんを無料TVに流すんぢゃねぇ!とか、いつまでも光学ディスクに頼ってんぢゃねぇ!とか、突破されない技術なんてねぇんだから「DRMの先」を視界に置け!とか、そもそも複製されて困るんなら「複製自体をじだいおくれにする解決策」を捻りだせ!*1とか、ややこしい話はいろいろあるけど、「それ以前の個人的な倫理観」をまとめるとこうなる。

  1. 私的複製は問題ない。
    • 「Ripしてエンコ」、「TS抜き/フリーオ類」→Mac*2のHDなりiPodsなりケータイなり。
    • 友人とのやりとり、メール添付、など。
      • 手数料(メディア代など実費以上の金額)を取るのはダメ。
      • 不特定多数に配っちゃダメ。
    • <<P2P、動画共有などは、トワイライトゾーン。>>←なので手許では「なるたけ」使ってない。
  2. 「不当なアップ」は万引きに近い。
    • 万引きがダメなのは「ものを盗むから」ではなく「他人の収益機会を盗むから」。他人の著作物をアップするなら、なんらかの形で「仕入れ代」を払うべきだろう。
    • ※サクヒンビジネス固有の「収益機会の不定形さ(aka.「もの」との分離、形而上性)」が問題を複雑にしている。
  3. 「不当にアップされたファイルのダウンロード」は盗品授受に近い。
    • 盗品と知らずに受け取った人は罰せられるべきではない。
    • 盗品と知ってて受け取った人は罰せられるべきである。

まず、『Ripしてエンコして放流してウマ〜 Oo。—y(´▽`*)』という輩には好感を持っていない。次に、日常的にそれらをダウソする輩にも、好感は持っていない。これらの行為に対しては、万引き常習犯と同様の視線を向けている。*3

ただし「Ripしてエンコ」までは特に問題はないと考えている。B−CAS突破(いわゆるTS抜き)も同様と考えている。行き先がMac*4のHDなりiPodsなりケータイなりである限り、特に著作利権(著作財産権)の侵害にはならないだろう。むしろ「オレとサクヒンの接触機会」を増やす。ここが増えればオレは「サクヒン抜きではイラレイカラダ(生活習慣病)」となり、購買機会も増えるだろう。友人知人に配ろうと、メール添付で送ろうと、これも「オレの知己とサクヒンの接触機会」を増やす。ここが増えれば以下略。実費(メディア代など)以上の手数料を取ったり、オレの商売に繋げたりしない限りは、私的複製として許容されべき範囲と考える。*5

個々のユーザーが友人知人へ配布する事はゲンミツには著作権侵害だが、総体としてのサクヒンビジネスには好影響を与える(サクヒンを売るなら、まず客をサクヒン漬けにしなければならない)。

なお手許では、『いわゆる「ダウンロード違法化」条項』という通称は使っていない。まぎらわしいからだ。これでは「データ通信の違法化」と差が無い。この言葉に脳を汚染されないよう、なるたけ「不当にアップされたファイルのダウソ」と言うようにしている、、、面倒だが。

■09著作権法改正の結果

  • 私的複製←社会的な許容範囲
  • 「不当なアップ(含むP2P)」←公衆送信権侵害
  • New!!『権利者の許可なくインターネット上にアップロードされた音楽・映像の違法コンテンツについて、違法にアップロードされたものであると知りながらダウンロードする行為』←違法化(罰則なし)

文化庁川瀬真氏の解説。

 ダウンロード違法化に限定条件を付け、罰則を設けなかったことについては、「ダウンロード違法化の背景は、1個々のユーザーがパソコンなどで複製すること自体が社会正義に反するというよりも、さまざまな方がファイル交換ソフトやインターネットを使ってダウンロードすると、総体として正規配信に悪影響を与えているということ。そうした観点から、今回の改正では個人を罰則により罰するのは不要ということ」と語り、個別の違法ダウンロードを取り締まることが目的でないという趣旨を説いた。権利者が違法ダウンロードを行ったユーザーに対し損害賠償を求める民事訴訟を起こすことは理論的には可能だが、「民事訴訟でユーザーが情を知っていたか否かを判断するのは、現実には難しい」との見解を示した。
 その上で川瀬氏は、「訴訟を重ねてルールを作るのでなく、穏やかなルールを作り周知することで正規の流通を守り創造のサイクルを確保することが今回の改正の狙い。ファイル交換ソフトの使用をやめた人に理由を聞くと、セキュリティー上の懸念に次いで著作権侵害が2位にきている。日本人は順法精神があると言われているので、ルールに対する意識を広めることで、新しい秩序を作ることが目的

つまり、09著作権法改正の真意は、

  • 「違法ダウソはやめようキャンペーンの一環としての法改正」←目標ではなく、キャンペーンの一手段
  • 「コクミンを対象とする、事実上の行政指導」
  • 「立法行為を一手段とする空気醸成」

といったところなのでわないか?と思った。「立法行為による空気醸成」というと、いまいちメダパニというか、なにか座りの悪い印象があるが、所詮「法」も「ひとのつくるもの」だ。「金科玉条/金科玉条かくあれかし」や「違法合法あるべきスガタ」だけで見るのは、安い左翼と大差無い*6

「Ripしてエンコして放流してウマ〜 Oo。—y(´▽`*)」は不快だし、「日常的にそれらをダウソする輩」も不快だ。「違法じゃないから合法」てぇのも、アメリカ人のエイリアスみたようで、乗り切れない。「ワレズ」や「自治体のアプリ違法コピー」はまるで弁護されないのに、なぜ音楽やアニメは「高過ぎる!」「中抜きをヤメろ!」的な話のほうが多いのか。それらの問題は個々に重要だとは思うし概ね同意もできるが、総体としてはアンバランスではないのか。

その減殺に役立つなら、理念的に「盗品と知ってて受け取るなら罪である」と学級目標を張り出しとくのも、当面は無い話ではない希ガス。将来、それで不足するようなら厳罰化すりゃいいんだし、過剰なようなら削りゃいいんだし。またその時にぎゃんぎゃんやりゃあいいんだし。

ただし。日本では「罰則や規制の緩和が極めて稀」な点は注意必須だ。日本は、法改正の主導権が議員(lawmaker)ではなく、民主的な選手交代のシカケが届かぬ官僚にあるという、クリエイチブなシカケになっている。力関係を式にすると、

  • 「行政府(aka.法律の執行者) > 立法府(aka.議院、議会、lawmaker)」。

理由は星の数だが結果はひとつ、「罰則や規制の強化」が容易な反面、「緩和」は「先輩の業績に泥を塗るのかキーック!!」を食らいやすい。ちなみに「政権交代がずっと無い」も同じ効果を持つ。「長老の顔に砂を掛けるかパーンチ!!」を食らいやすい。合体してるともうタイヘン。方針転換とか無理。そのうち米軍の十字砲火に抜刀突撃とかする(無意味だと思ってても言えない空気の中で)。

なお、下線1部分は、「Ripしてエンコ」は not 私的複製 but 「社会正義に反する」と言っているようにも見える。本気で言ってるなら自分とは意見が異なるが、文脈上はそうは見えないし、文化庁の看板を背負って「個々のユーザーがパソコンなどで複製すること自体は社会正義に反しない」と言い切るのもムダな面倒が出そうだ。この部分の真意は「空気リテラシー」でさまざまな解釈があり得るだろうが、いずれであるにせよ、そこを除けば、前述の「パーソナル・バイアス」とあまり差が無いように思った。

B-CAS/コピワン/ダビ10との関係

もしも川瀬真さんの狙いがあたり、

  • 「不当なアップロード」は公衆送信権侵害で抑止できる。
  • 「不当なダウンロード」も新設された「罪の意識」が広まる事で「新しい秩序」ができてゆく。

となってゆくのなら、B-CASへの風当たりが強まる可能性がある。「私的複製に対する過剰な制限」と感じる人が増えてゆくからだ。それとも、「民百姓がダビ10に慣れる」ほうが早いカナ?カナ?

*1:著作権者に相応の金が渡るタイムシフト/プレイスシフト/デバイスシフトは、三日で飽きる「画質」などより遥かに重要なものだが、これは「ものつくり」には案出できない。

*2:別にMacに限らないがマカなので

*3:一時期、本宅のアク解の中に、ソレを思わせる検索語でたどり着く例が目立った。さらにその中には、日本を代表するさる業界から、勤務時間中に発せられたものが多かった。今のところ、私に元データと分析工程を公開する理由がないので、web上で妥当性を検証してもらう術はないが、無料のwebサービスでも、複数のアクセス解析を複合すればそれなりの分析はできる。私の書くものはその分析結果の影響を受けている。
これとは別に、他言語字幕という「地球上のどこにも存在しない付加価値」をつけてやりとりする人々には、好感を持っている。もちろん、程度は「個別具体的なありよう」に依り異なる。

*4:別にMacに限らないがマカなので

*5:本宅は、その具体的手順の一要素を主軸にしたものだが、一部万引き常習犯(らしきアクセス)に対する不快感から手が止まっている。

*6:この心情からも「ダウンロード違法化」的な略し方は使いたく無い。