オレの心がゆたかになるだろう

太字オレ。

 【質問】
 友人の軍事マニアが,
『ドイツ人はとてもとても山登りが好きで,映画でも山岳モノが大好き,
 第二次世界大戦中にも戦争そっちのけで,連隊ごと未踏破の山に登って,なんでそんなことしたのか?と言われ,
『そこに山があったから』
と答えてヒトラーに激怒されたほど』
と,真しやかに語っていましたが,事実でしょうか?
 流石にありえねー気がしますが.

 【回答】
 ドイツ第1山岳師団は独ソ戦ブラウ作戦時にカフカスにあるコーカサス山脈のエルブル
ス——Эльбрус カタカナでどう表記するのかは,資料によって微妙に違う——山に登頂隊を出して,ソビエト軍山岳部隊と交戦しつつ見事,山頂を征服した.

 ブラウ作戦全体にはなんにも寄与しない上に,戦略的意義は何もないこの登山作戦?に,作戦そっちのけで師団のリソースを割いた事を,ヒトラー咎められた師団長は
「目の前に山があったら登る.それが山岳部隊というものです」
と回答し,ヒトラーを激怒させた.

 結局,
「そんな無意味なことに許可を出したのは誰だ!」
ということになって,A軍集団司令官であるリスト元帥のクビが飛んだ.

 尚,山頂には第1山岳師団が立てたナチスドイツ旗が翻っていたが,ドイツ軍がこの地域から撤退したら,スターリンから
「他のことは総て後回しでもいいから,山頂に登ってあの旗を降ろして来い!」
という命令が出て,ソビエトの山岳師団は総出で登って,何よりも優先して山頂のナチス旗を撤去した.
 勿論,山頂にナチス旗が立ってたからといって,ナチスドイツが領土権を主張し続けられるわけでもなく,戦略的には全く無意味だが,スターリンはそれを最優先命令にした.

「何故山に登るのか.
 そこに山があるからさ」

 言葉だけだと美しいんだが・・・.

 余談ですが,捕虜収容所で物資を蓄え,登山道具を自作してから脱走して,登山に成功して捕虜収容所に戻ったイタリア軍のことも,たまには思い出してあげてください.

ドイツもコイツもすばらしいすばらしい。