なぜ記者会見のオープン化が必要か?

上記によると、鳩山首相の記者会見が「記者クラブ非加盟メディア」に公開されなかった経緯は以下のとおり。

  • 1)日本の政府の記者会見は、慣習的に記者クラブ主催。
  • 2)実は官邸記者クラブは、「官邸記者会見のオープン化」は覚悟していた。
  • 3)しかし、政権発足直前になって、官邸記者クラブ民主党から「オープンにしなくてもよい」との意思表示があった。

※つまり、突然予期せぬ援軍が登場した格好。

記者クラブ制度というのは、一見メディアの既得権益問題に見えるのだが、実はそれは副次的な産物に過ぎず、この制度で一番得をしているのは実は「統治権力」というリヴァイアサンに他ならないということである。

ここで神保さんが言う『「統治権力」というリヴァイアサン』は、自分が「ダブル・トライアングル」と捉えているものだと思う。これは「官僚」でも「マスコミ」でも「黒幕」でもない。タグで括って「コイツが悪だ!」と言えるようなものとも、ちと違う。
「構造」にちかいものだ。アーキテクチャー(たてもの)が醸し出すアトモスフィア(ふいんき)にちかいものだ。

イ)まず、「記者クラブ」はATフィールドに過ぎない。

全国の記者クラブに報道資料を御届けします! てな事をやってる会社によると↓。

記者クラブは日本の報道機関において重要な位置を占める取材組織のことであり、さまざまな記者クラブが存在しています。記者クラブでなければ取材ができない状況というのが実際に設けられているものであり、公的なものである場合がほとんどです

この事は。「自分達にとって良い話」をニュースに乗せたい組織、つまり金さえ出しゃなんとかなるCMではなく、パブリック・イメージ、パブリック・リレーションを良いものにしたいと考える組織にとっては、記者クラブは不可欠の要素である事を意味する。企業組織でいうと、宣伝ではなく「広報」の担当部署、「コーポレート・コミュニケーション(CC)」や「インベスター・リレーション(IR)」などがソレにあたる。

イの1)過ぎないとはいえ「絶対領域」。通常兵器では歯がたたない。
※メモ
一県一紙
1940体制下で内務省が進めた新聞統合→検閲の簡便化、用紙配給の有利、経営の安定化

こうした中央集権的な構造は、企業にとって便利なだけでなく、官庁や政党にとっても便利なものだ。なんといっても手間が省ける。「こくみん・コミュニケーション」とか「有権者・リレーション」とでも言うべきだろうか。

イの2)ATフィールドのエネルギー源はナニカ?

そういう事なら「絶対領域の向こう側」は、ATフィールドに展開エネルギーを供給する事で、自らの利得を防衛する事ができる。
「展開エネルギー」のうちわけは「記者会見の参加資格」、すなわち「情報そのもの」であるかもしれないし、「記者クラブの部屋代、電気代、電話代」であるかもしれないし、「いまから隣の部屋で記者会見やりまーす!」という便宜であるかもしれないし、ふらっと立ち寄って、「うちの上司がみなさんと会食したいと申しておりますが、ご都合はいかがですか?」、で、あるかもしれない。
はたまた電波免許の一県一波制であるかもしれないし、戦時中に内務省が推進した新聞の統合であるかもしれない(これで新聞社が激減し、報道の多様性が減殺された事は確かだ。このおかげで「新聞社」が「利益のだせる商売」になったと言う人もある)。
さらに東京一極集中で大手広告代理店が「東京本社の宣伝部の玄関」や「キー局の全国CM枠」を抑えているのなら、ATフィールドはさらに強化される。これはATフィールドの当事者たちにとっても、ATフィールドの向こう側の人々にとっても、都合が良い。

ロ)ATフィールドの後ろには「使徒」が居るのがお約束だ。

というわけで、神保さんの言う『「統治権力」というリヴァイアサン』、自分が「ダブル・トライアングル」と捉えているもの、すなわち「絶対領域の向こう側はナニカ?」の答えは、ATフィールドの展開ポイント、すなわち「記者クラブのあるところ」がヒントになる。

ロの1)「使徒」はドコに居るか?

ちなみに上記の会社は「記者クラブ一覧リスト」てのも公開している。文脈上は官庁や政党の項を抜粋すべきだが、ここでは「民間」の項を抜粋したい。なかなかココロ惹かれたので。

コア 使徒 記者クラブ一覧情報館-民間(東京地域) -
unknown unknown 経済団体連合会記者会(経団連会館1F)
・東商記者クラブ(東商ビル内)- 加盟社非公開 
・エネルギー記者会(経団連会館5F)
自動車産業記者会(日本自動車会館
・農林団体記者クラブ(JAビル4F)- 加盟社非公開 
・農協記者クラブ(JAビル4F)
・金融記者クラブ日本銀行内)
・兜倶楽部(東京証券取引所)- 加盟社非公開 
・ラジオ・テレビ記者会(日本放送協会内)- 加盟社非公開 
東京放送記者会(日本放送協会内)- 加盟社非公開 

←ソレゾレに↑コレがある。

これら「絶対領域の向こう側(候補)」は、「いやいや、あなたのおっしゃる"アウトサイダー"の排除は、親睦団体である記者クラブが自主的にやっている事ですから、ウチラもどうかとは思ってるんですけどねぇ」と言う事ができる。どうかと思う一方で、先述下線部のような便宜を供して、「有効な関係を結ぶ」事もできる。たぶん。

神保哲生さんは、官公庁の取材経験が厚い方なのか、頭書記事で以下のように述べている。

統治権力にとっては、記者クラブという餌を与えてメディアを飼い慣らしておけば、こんなに楽な話はない。特権を与えてもらっているメディアは、 けっして自分たちに真剣には刃向かってこないだろうし、しかも記者クラブという部屋で御用記事ばかりを書いて虚勢された記者たちは、もはや統治権力を チェックする気概も能力も持っていない。

個人的には、「不偏不党」や「権力を批判する」などの理念は、「偉い人に奢ってもらったのにごちそうさまでしたを言わない」とは少し違うもんだと思う。深夜残業の官僚が個人タクシーに缶ビール貰うのが問題なら、そっちのほうはどうなんだろう。

ロの2)使徒の実像。

神保哲生さんは、『今回、震源地の特定までは白黒はっきりつけることができたが、そこから先の最後の本丸が特定できないのが、今の私の限界である。鳩山首相や平野官 房長官に直接記者会見で質せば簡単に解決する問題なのだが、まだ私は会見には出られないのである。』と述べておられるが、自分は「特定の黒幕」そのものも、以下の構造の傀儡であるに過ぎないと思う。

右は「政官財のトライアングル」、左は「政官業のトライアングル」と言うらしい。手許では、ふたつまとめて「ダブル・トライアングル」と呼んでいる。右の第一トライアングルは経済成長担当。外需、外征、戦地の兵。左の第ニトライアングルは所得移転担当。内需、内功、銃後の護り。右で稼いで、左へ回す。左右はともに、

  • 中央省庁←同業者団体←大型組織(大企業、農協、特定郵便局など)←従業者(終身)

という、ピラミッド構造を持っている。これは教科書的な意味での「政党組織」に近い。この「事実上の政党組織」は、ソレゾレに「族議員」を持っており、彼らが自党党員への利益誘導を行う。左右のトライアングルが健在である限り、自民党民主党になってもなにひとつ変わる事はない有権者の大多数が、この構造の中で生きて来たのがポイントだ。

せっかくなんで使徒でいうと、イスラフェル、みたいな?w*1

 当初は1体で襲来したが、同型の2体に分裂する能力を持っていた使徒。片方が傷ついても分裂したもう1体が無事なら瞬時にダメージを回復し、初戦では初号機と弐号機を活動停止に追い込んだ。しかし、再度の襲来時には初号機と弐号機によるコアへのユニゾン攻撃により撃破される。

確かに、ダブルトライアングルは、高度成長で「追いつき、追い越せ」をやるには無敵の性能を発揮した。高度成長の果実をみんなで分け合う上でも、「一億総中流」と言われる程の性能を発揮した。この構造に手を付ける事は、国民の大多数に絶大な痛みを強いる。ほとんどの人が「国民の生活がメチャメチャになった」と感じているだろう。誰だって痛いのやだもんね。
しかしながら、ダブルトライアングルが健在である限り、特定郵便局は温存されるし、農協組織は温存されるし、既存業界の不利益に繋がる新興業種は、骨抜きにされるか取り込まれるか規制される。ムダは削れず、次の時代のメシの種も育てられぬまま「緊急事態だ、国が支援を、大変なんだ、国が支援を」の大合唱。を続ける事になる。
ダブルトライアングルは「20世紀の工業革命」と「その果実の再配分」に極めて高度に最適化されている。それ自体は誇らしい事だ。ほぼ確実に世界一のシステムだろう。だがそれは、既に過去の事だ。ダブトラは、「21世紀の脱工業化の時代」には、不適合でありすぎる。フレキシビリティが足りないのだ。
もちろん、ただ撃破すれば「国民の生活がメチャメチャになった」で終わりだ。問題は「どう壊すか」「どこをどの程度壊すか」「どのように作り替えるか」、「どうすれば鈴原トウジの妹さんが怪我しないで済むか」、そこを議論する必要がある。その為には。ATフィールドの向こう側を、これまでより正確に知る必要がある。まずは情報が要る。これまでになく精緻な奴が。次に仮説が要る。これまでになく多彩な奴が。

シと新生

ふとググったら、使徒(しと)とは、狭義にはイエス・キリストの12人の高弟を指すのだそうだ。ちなみに日本の中央省庁を「1府12省庁」と言う。「天にまします我らが首相」が記者会見をオープンにしたら、イエスも12人の使徒たちも、そして彼らに従う善男善女も、芋づる式に従うに違いあるまい(なんちて)。
という事でリストにしてみた。「記者クラブ一覧情報館 | 官公庁(東京地域)」から、関係しそうな記者クラブも拾ってみた。

使徒 ATフィールド名
1.内閣府 未記載
2.総務省 総務省記者クラブ(総務省内)- 加盟社非公開 
総務省テレコム記者会(警視庁内)- 加盟社非公開 
郵政記者クラブ(日本郵政公社1F)- 加盟社非公開 *2
3.法務省 法曹記者クラブ(法務省20F)- 加盟社非公開 
4.外務省 ※下記参照
5.財務省 財政研究会(財務省3F)
財政クラブ(財務省3F)
6.文部科学省 文部科学記者会(文部科学省10F)
南極記者会(文部科学省10F)
科学記者会(文部科学省5F)- 加盟社非公開 
7.厚生労働省 厚生労働記者会(中央合同庁舎第5号館9F)
労政記者クラブ(厚生労働省内)
8.農林水産省 農政クラブ(農林水産省3F)- 加盟社非公開 
農林記者会(農林水産省3F)- 加盟社非公開 
林政記者クラブ(農林水産省7F)- 加盟社非公開 
水産省記者クラブ(農林水産省)- 加盟社非公開 
9.経済産業省 経済産業省ペンクラブ(経済産業省4F西7)- 加盟社非公開 
経済産業記者会(経済産業省)- 加盟社非公開 
10.国土交通省 国土交通記者会(国土交通省5F)- 加盟社非公開 
国土交通省交通運輸記者会(国土交通省8F)- 加盟社非公開 
11.環境省 環境省記者クラブ(中央合同庁舎第5号館)
12.防衛省 防衛記者会(新宿区市谷本村町5‐1)- 加盟社非公開 
13.国家公安委員会警察庁を所管) ???

ちなみに、09.09.18 夜半、第四使徒・外務省に動きがあった。

2009.9.18 21:27
 岡田克也外相は18日夕の記者会見で「大臣会見に関する基本的な方針について」を発表した。外務大臣の定例記者会見を、従来の日本新聞協会や日本民間放送連盟など外務省記者会所属記者以外の記者にも「原則として、すべてのメディアに開放する」とした
 岡田氏は方針について「大臣(自分)の考え方だ。支障がなければ(他省庁に)広がりをもってくるのではないか」と述べた。
 方針では、(1)日本インターネット報道協会会員(2)主要メディアが発行する媒体に定期的に記事などを提供する人(いわゆるフリーランス)−の参加を認めるとしている。
  これに対して、外務省記者会は18日夜に代表者会議を開き、(1)十分な説明もないまま、方針を具体化する形で外相の会見時間が(夕方に)設定されたこと は残念(2)外務省として(記者会見などの)情報発信をどう考えているのか−などとした文書を外務省報道課を通じて岡田氏に提出した。

岡田ゲリオン、ATフィールドを中和しつつあります!

*1:いや見た目サハクィエルの方が近いが。

*2:これは元データが旧いかもしれない。