民主党が「自民党2.0」になってゆく可能性について。

前記事*1民主党の3層ピラミッド』の続き。

実は、そのためには鳩山氏が首相である必要は必ずしもない。場合によっては、予算を3回通すためならば、菅直人氏だろうが、岡田克也氏だろうが誰でもいいのだ。(上杉隆さん@ダイヤモンド・オンライン

短期的にはそれで政治構造の改革、つまり民主党の掲げる「政治主導」は進むと思うが、その先の問題も内包する。

1)選挙間隔の問題。

衆参それぞれ3年に1回とすると、3回予算を通して4年政権をもたせるには、政権獲得時を含めて、国政選挙を2〜3回は勝ち抜かなくてはならない。たぶんこれは、国際的にも短い。この結果;

  • 選挙前に与党が「看板を掛け変える」。とか。
  • くるくる首相が変わっても安定した政策遂行ができるシカケ(政府与党2元構造)。とか。
  • 毎年変わるんで、ブラジルの大統領に顔を思い出してもらえない首相。

などの「ならわし」というか「知恵」というか、ができあがったのだと思う。
民主党自民党なみのサイクルで解散するかどうかはまだ気にするのも気が速いが、やや気になる事がある。

実は1868(明治元年)〜2009までの141年間の政権数をざっと数えてみたんだけど、日本が94、米24、英35、独38、という具合。

備考 平均寿命
第一次伊藤内閣~(「第X次ダレソレ政権」てのもカウント) 1.5年
ユリシーズ・グラント大統領~ 5.8年
ウィリアム・グラッドストン首相~ 4.0年
ドイツ帝国ビスマルク首相~ 3.7年

いまいち、どう解釈してよいのか判らないが。帝政期の「首相」も、実質的に元老や重臣会議の指名制だったので、二重構造だったと言えば言える。議会第一党党首を指名するのが慣例化(憲政の常道)していたとはいえ、元老や重臣会議の意向を無視できるわけもなし。「政治理念を掲げる2大政党制」てのは、育ち難い土だったりして。

それはともかく。故人献金問題あたりが火を噴いて首相支持率20%台なんて事にでもなれば、「看板掛け変え総選挙」の可能性も出て来るだろう*2

2)国会議員の資質。

国会議員の事を英語でLawmaker、つまり「法律製造業者」みたいに云うのだけど。そういうからにはまず法律の専門家でないとイケナイ。弁護士資格を持ってるとか。日本では必ずしもそうでなくてもいいとは思うんだけど、

  • 「『サンタフェ』が児童ポルノに当たるんだということになれば、それは廃棄なりしていただければよろしいんじゃないかと思う」とか。
  • 法学者さんが「現行法では児童ポルノの定義がきわめてあいまいで、そのあたりを詰めた議論をしてほしい」と言い出すとか。
  • 憲法すっ飛ばした世襲議員規制論とか。

ちょっとLawmakerとしちゃ雑スギだ(児ポ法関連の発言は09Q3児童買春・児童ポルノ禁止法の改正に関する個人的なまとめ。 - agehaメモから)。

「平均2.7年後に選挙を控えた衆院議員」というのは、政策とか関連法とか、あるいはそもそも「法律っていったいなんですか?」とか、勉強するヒマあるんだろうか?
地元回り、選挙区回り、地盤固め、挨拶回り、冠婚葬祭、就職相談、ジバン、カンバン、カバン...。手っ取り早く票を集めるなら「御用聞き」に徹した方が速い。土建利権だけの話ぢゃない。福祉でも教育でも薬害でも、エコポイントの品目拡大なんかでも、そうだ。

そんな中で「消えた年金番長」に成り上がった長妻厚労相はスゲェと思うんだけど、政権奪取時はともかく;

  1. 選挙に勝って政権を維持する事が目標
  2. 衆参とも選挙間隔3年

てことだと、「御用聞き」に徹した方が効率がよいだろう。

3)小選挙区制の問題。

  • 2005の衆院選で、自民は43%の得票率で58%の議席を獲得している。
  • 2009の衆院選で、民主は45%の得票率で61%の議席を獲得している。
  • いずれも小選挙区制+チルドレン戦法によるレバレッジ効果と思われる。小選挙区に限ればこのレバレッジはさらにデカイ。多数派はより多数派に、少数派はより少数派に、というわけだ。
  • これは少数派に強い不公平感を生み、多数派に驕りを生む。もし今後ともこの傾向が続くなら、人々は「議会制民主主義」に倦んでゆく可能性がある。

2005衆院選前は「郵政ムダ報道」の雨霰だった。2009衆院選前は「かんぽ売却おかしい報道」の雨霰だった。こうした、「文句つけるのがレーゾンデートル化(aka.嫌諸)」した、「無定見な鳥頭メディア(aka.不偏不党)」が人口の多くをカバーしていると、

「チルドレン戦法」が良く効く。キャッチフレーズを繰り返すオウム程度の知能と、議席に乗せる尻がついてりゃ充分だ。

4)自民党2.0
  • 「短い選挙間隔」は、
    • 「議員の御用聞き化」を生む。←大局観をもった議員が育ち難い。局視的な批判報道がコレを加速する。
    • 「選挙に強い大物」は舞台袖に引いた方がトクになる←「政局中心の報道」がコレを加速する。

これらの結果

  • 「首相なんて誰でも一緒化」が発生し、
    • 政党内部に権力の2重構造が生じる。←「政局中心の報道」しかできない鳥頭はコレを歓迎する。

もしも、この上に、

    • 「政治主導の確立」が乗っかり、
    • さらに「中央政府」が「地方」に税源を移譲せず、「地方」も「税源移譲と財政の自立」より「東京のオカネで格差是正」を求めた場合。

民主党は「自民党2.0」になってゆく可能性が高い。
いやむしろ、「政治主導」が確保された上で、大多数の投票先が「なにはなくとも民主党」て事になると、そりゃ「大政翼賛会2.0」という事になる。


実はこの図の左側は、ハコモノ土建ばかりぢゃない。あれ目で見てわかるから目立つだけで。文化・教育・福祉などの「公共事業」にも大きなオカネが回っている。

これは続かない。さらに右半分の「稼ぎ手」だった業種が、コストセンター化していく。

日本電機工業会(JEMA)の西田厚聡会長(東芝会長)は23日、省エネ家電の購入支援策であるエコポイント制度について「ぜひ続けてほしい。テレビ、冷蔵庫、エアコン3品目だけでなく、さらに追加してもらいたい」と要望した。(23日 20:56)

たぶん100万円のテレビにでもつくんだろう。

*1:というかほとんどコピペだが。

*2:米国大統領の場合、あのクソ長い選挙戦の過程で、ありとあらゆる種類のスキャンダルを暴かれても生き残るのが、「足切りライン」になる。