ジャンルと常識 貳

上段では「割れ厨」が非難されているが、「アンチ割れ厨」とどっちが優勢なのかは測り難い印象を受けた。なお、下段にて「商品書籍の無許諾ファイル共有」は少数派な事が指摘されている。

私的コピーを巡る「常識」

ジャンル
(有価bitの用途)
常識
生活習慣病
アプリやOS BSAに通報
音楽 友達のCDをMDやカセットに落とすのとどう違うの?それが文化の広がりを(略)
DVD 同上。
テレビ いままで自由に録画できてたぢゃない!
ゲーム 大勢不詳:cf.違法なんだけど・・・ドロボーなんだけどいいんだよ!
ラノベ 大勢不詳:cf.頭書リンク先参照

ちと「常識」を測りかねるジャンルが残るが、この違いは理屈(=論理や法律や道徳や倫理)ぢゃないよなとかねがね。どっちかというと、生活習慣(病)と言うほうがしっくりくる。

「原著作者」が「無断ネット配布」を喜ばないのは理解できるし、「著作利権」が「無断ネット配布」を止めようとするのも理解できる。もしも任意の物体を、自在に複製できる薬品*1があったら、モノツク利権は総力を挙げて潰しにかかるだろう。

それにしても。「デジタルだからって、今までできてた事ができなくなるのは、退化だ!」というキモチは根強い。その意味では、「サクヒンジャンル」の裡で最も新しいゲーム*2と、最も古典に近いラノベ*3が「大勢不詳」なところが面白く無くも無い。

原則的に

  1. 「創らざる者」は「タダで見たい、もっと見たい、いいぢゃないか減るもんぢゃナシ」で動く。
  2. 「創る者」は、「(むしろ)で囲って目隠しし、木戸を設けて銭を取れ」。コレをやらなきゃ続かない。
  3. 「劇場主」は、両者が「自分の小屋」に集まる事を望む。「ヨソの小屋」に集まる事を望まない。
  4. 「道具職人」は、得になる方に付く。

四者とも自分が得になる方に動く。権利とか倫理とか文化の意義とかユニバーサルサービスとか技術の発展とか、ああいうのは「莫迦には見えない服」だ。
※なお、「創る者」に「スキル:切符のモギリ」や「スキル:只見の客の制裁」があるとは限らない。ここで「職業:コワモテお兄さん」の需要が生じる。この機能は、専門業者(興行師)だけでなく、「劇場主」や「道具職人」も代行し得る。「大魔法:著作権法改正」「特殊スキル:デジタルライツマネージメント」など。

「常識」は、

  • 1.只見利権(私録利権)、2.著作利権、3.伝播利権、4.モノツク利権。
  • この四極が描く四角が最大になるポイントで成立するのが望ましい。
  • ただし「サクヒンビジネス」は、根源的には前2者間の合意だけで成立する。

なお、「デジタルだからって、今までできてた事ができなくなるのは、退化だ!」というキモチは、「消費者の既得利権」と看做し得る。愉快ではないが、他の三者が変容してゆく中で、「消費者だけが不変」という事は考えにくい。

10Q1現在。

  • 2と3は「創らざる者がコピー機を持つ」事を望まない。したがって著作利権と伝播利権は「創る者枢軸」を組める。
  • 1と3は望む。したがって只見利権とモノツク利権は「創らざる者同盟」を組める。

※但し、実在の個人、会社、組織、団体は、いずれも様々な利権の集合体であり、複雑な動き方をする。また当然ながら、「創る者枢軸」内部には「著作利権←→伝播利権」の対立があり、「創らざる者同盟」内部にも「只見利権←→モノツク利権」の対立がある。

AppleAmazon

なお AppleAmazon は、「創る者枢軸」でも「創らざる者同盟」でもない。Apple は、伝統的には4.モノツク利権だが、iTSで3.伝播利権に進出し、2.著作利権から「代金回収代行業」を請け負っている。Amazon の侵攻ルートは逆だが、「水源地たるクリエイタ」と「消費者」を除く全てを「川上から川下まで」カバーしようとしている点で、ほぼ同じ。

と書いてて思いついたがコレ、戦国大名ぢゃまいか。治水工事を行い、新田開拓に意を注ぎ、流域への移住者を呼び込んで、年貢増やす。みたいな。領国経営に熱心な戦国大名が力を付けると、昔ながらの守護大名はまずいぞ。みたいな。

*1:-バイバイン - Wikipedia

*2:ボーン・デジタルの代表格

*3:ノット・ボーン・デジタルの代表格