被害者数統計もまたナニだ。

もともと「子供が犠牲になってもいいのか!」では視界が狭くなりがちだが、同様の事は「表現の自由が犠牲になってもいいのか!」でも起こる。

例えば、少年犯罪データベース / 幼女レイプ被害者数統計には、レイプ被害者が激減しているグラフがある。これを以て「ネット・ケータイ・同人誌・BLの伸張は性犯罪とは関係ない!」と言う事は、できなくはない。実際、10/03月中旬に非実在青少年規制が炎上する中でこのグラフを「大事」と指摘した例がある。これは熱くなってる時に足を止めてもらうには大事だが、恒久的に頼るのはリスキーだ。

というのは、そのページをズルズル下まで見ると、強制わいせつの被害者数というのが出て来るからだ。こちらは1999頃を境に激増しており、相関関係で言えば「ホラ見ろ!ネット・ケータイ・同人誌・BLの伸張と一致しているッ!」と言い張る事ができる(むしろ「規制反対派は、自分たちに都合の良いデータばかり持出す連中だ!耳を貸す価値などない!彼らの為にも規制を!」とか言う方が有効だろう)。じーっと見ると強姦の方も、90年代中盤を底にじんわりと鎌首をもたげている。

こうなると「あり得ないなんて事はあり得ない」 という気分になってくるが、実はこの傾向は、ブルセラ産業の…イヤ失礼盛衰の方が強い相関がある。1990年代初頭から全国に広がりはじめたブルセラショップ、則ち女子中高生の中古着衣売買店は、1993年に古物営業法違反容疑で初の摘発を受け("別件捜査"という事になる)、 2004年に全国の都道府県の条例改正で違法化されたブ ルセラ - Wikipediaより)
 その後、こうした売買はネットやケータイに潜伏するようになったとの指摘は 残るものの、少なくとも上記のグラフでは、ドンピシャでその2004を境に下降が始まっている。同時に強姦総数も下がっている。

もちろん、それでもネット・ケータイ・同人誌・BLに「悪影響がないワケがない!」と思うのは自由だ表現するのも自由だ。強姦も強制わいせつも、まだ1990年のレベルには戻っていない。非実在青少年規制が有効な可能性が「ない」とは言えない。

ただしこの論法では、1955年を中心に盛り上がった「悪書追放運動」と「少年によるレイプ」の相関を説明できない。

おそらく「悪書」の大半はエログロナンセンスで 「子供に見せて良いわけがないもの」だったのだろう。だがしかし、このグラフからは、それらを校庭で焼いても白ポストで回収しても、焼け石に水だった様子が伺える。むしろ1956の谷は経済白書から生まれた流行語「もはや戦後では無い」ではないだろうか。1953の谷は日本の再独立(サンフランシスコ講和条約)ではないだろうか。

ナニが強姦数を増減するのか。ぱっと思いつくのは「希望」「満足」「道徳律」。所得倍増計画が「持続する希望」を生み角栄さんの"東京のオカネを地方に回すシステム"が 「持続する満足感」をもたらした「欲しがりません勝つまでは」とて、己を律する意思は生む(←たぶんコレは、人参に釣られた道徳より強い。ただ意地ってヤツは、一度折れるとリバウンドがキツい)

文化的な色彩の濃い案件」には簡単な結論がない。第一の特徴は、万人が妥協できる策が作りにくく、従って泥沼化しやすい事だ。第二の特徴は、経済が低迷すればするほど、手っ取り早く票になる確率が上がる事だ。この結果、泥沼も深刻化してゆく。

米国で言うと、中絶禁止や進化論教育、そして同性愛者の婚姻や黒人差別の問題など「宗教・倫理・道徳色の濃い問題」や、銃規制や医療保険改革など、「アチラさんの国体護持に関わる問題*1」が、それに当たる。これらの問題は、80年代初頭には明確になった景気低迷と、歩調を合わせるように深刻化していった。

最大の抑止力を発揮するのは、ソコなのジャマイカ

再び強制わいせつに目を戻すと。2004以降、総数は減っている。未成年の被害も減っている小学生も減っている。しかし中卒以上未成年は、下落幅が鈍っている成年の被害は十年前に急伸したきりで横ばいだ。これは、失われた10年の間に、我々の「満足感」は減り、「希望」も減り、「道徳律」も残ってない…強姦に走る度胸はないけど「強制わいせつのタガ」は外れちゃうケースが増えている、って事を示しているのぢゃないだろうか。

いずれにせよ。このまま10Q2末に向かって「子供達を守れ!」VS「表現の自由を守れ!」を続けていても埒はあかない。そもそも「普通の人々」VS「パンドラ」ダケでは面白みが足りない。

ひとつには、見たくもない局面で目に入るから「目に余る!」 て声が出てるとも考えられる。

で・あれば。規制派も反規制派も一緒に、「嫌ポ権」や「嫌BL権」というのを考えてみるのはどうだろうか。日照権とか静謐権とか嫌煙権みたいな幸福追求権の一つとして。

もちろん、それがあまりに強くなっても困る……そんな想いを込めて歌います(何。

◆1番
チョイト流行りの つもりで買って
いつの間にやら ロリ触手
気がつきゃ ホームのベンチで開封
これじゃ世間が  許すわきゃないよ
わかっちゃいるけど やめられない
(駅はヤメろw

◆2番
潔く カッコよく 生きていこう
自由を舞う薔薇のように
自分の居場所 存在価値を見つけたい
私はせかい〜を 掛〜ける〜
(あたらしいせかいがくる…悪夢のようだw


アレ?およびでない?あ、およびでない?(なに時代だ)

【注意】
尻に書くのもなんですけど。因果関係の証明がない以上、グラフなんざ写真と一緒です。横に並べたキャプション次第でどうとでもなる事にご注意下さい。それでなくても、ヒトは見たいと思う事しか見ず、聞きたいと思う事しか聞かないそうです。自分もそうです。悪しからずご注意を。

*1:銃規制は「腐敗した政府は武力で排除する権利」という、建国の理念と密接に関わっている。医療保険改革に対する反対は、社会民主主義にしか見えないニューディールを「リベラル」と呼んでしまう程「自由」を尊ぶ風土と色濃く関わっている。