メモ:太陽族映画と東京都青少年健全育成条例

1956(昭31)太陽族映画をめぐるあらそい

以上。太陽の季節 - Wikipedia、および日本表現規制史年表より。

1950年代のアラフォーは、1920年代のティーン。

「あれを見い、毛唐人(けとうじん)は 犬やねこのようなまねをしてそれが愛だというんだ、おれはそれが気に食わねえ、日本の写真はそのまねをしてるんだぜ、日本の役者……そうだおれはなにかの 雑誌を読んだがね、米国では人間のうちで一番劣等なものは活動役者だって……そうだろう、劣等でなければ、あんな醜悪な動作をしてはずかしいとも思わず平気でやっておられんからな、けだものめ」

これは戦前の少年向け小説(現在ならジャンプのマンガ)だが、この台詞は旧制中学生のもの。全部が全部ではないにせよ、1950年代のアラフォーは、こうした倫理観を維持していた事だろう。
「犬やねこのようなまね」といってもキスの事だと思うが、日本映画初のキスシーンは戦後なので、20年代には相当なインパクトがあった筈だ。但し。この台詞を吐いた少年も、チャンバラは大好き。つか、この台詞自体、映画館の中の事だし。

1940〜1960の映画規制。

以下日本表現規制史年表より抜粋。ピンクは性風俗の乱れ黄色は健全化の動き緑は自主規制

  • 1941(昭16)xx月 米英映画の上映禁止
  • 1946(昭21)01月 GHQ,「映画検閲に関する指令」を発表
  • 1946(昭21)05月 GHQの指令で,「軍国映画」二万巻が焼却
    • ※恐らくこれが「わるいものは焼くものだ」と言うメッセージになった。cf.悪書追放運動
  • 1946(昭21)05月 映画『はたちの青春』日本映画初の接吻シ−ン
    • GHQは接吻シ−ンを奨励した
  • 1948(昭23)06月 GHQの指導下に,映画倫理規定管理委員会発足し審査を開始
  • 1955(昭30)05月 映倫,青少年映画委員会を設置,十八歳未満の観覧を禁じる「成人向」映画の指定を開始
  • 1953(昭28)xx月 「性典映画」(自称「性教育」映画)のブ−ム頂点に
    • PTA・マスコミの非難が高まり,映倫は各社に自粛を要請
  • 1954(昭29)10月 東映『悪の愉しさ』(石川達三原作)の公開(10月)
    • これをきっかけに「俗悪映画」追放運動
    • ※「俗悪xx追放」は、戦前の内務省も多用した。
  • 1954(昭29)xx月 映倫の提唱で,新聞・放送・出版・映画・レコ−ド・紙芝居の各界関係者がマスコミの倫理基準に関する第一回懇談会を開催
  • 1954(昭29)xx月 総理府の中央青少年問題協議会に「青少年に有害な出版物映画専門委員会」が設置され,「青少年保護育成法案」の国会提出が準備される
  • 1955(昭30)xx月 警視庁保安課,仏映画『バルテルミ−の虐殺』のジャンヌ・モロ−の全裸シ−ンのカットを強行
  • 1955(昭30)09月 文部省,米映画『暴力教室』を青少年に見せないよう通達
  • 1956(昭31)08月 日活『太陽の季節』(石原慎太郎原作)をきっかけに太陽族映画」上映禁止運動起こる
    • 「朝日」の井沢記者の映倫への公開質問状
    • PTA・教育団体の映倫攻撃等「法規制」の動きへ
    • 映倫,8月にマスコミ倫理懇談会に「太陽族映画」を自粛させると回答
    • 堀日活社長「太陽族映画」製作の継続断念を発表
  • 1956(昭31)11月 内閣映画審議会の見解に基づき,新映倫発足
  • 1956(昭31)xx月 この年から1958年にかけて「赤線映画」ブ−ム
  • 1959(昭34)xx月 仏映画『恋人たち』(ルイ・マル監督)の東京税関でのカットが参院大蔵委員会で論議され,マスコミも「暴挙」として攻撃
  • 1962(昭37)03月 ピンク映画の嚆矢,大蔵映画『肉体の市場』(小林悟監督)
    • 警察が「公然猥褻の疑いがある」としてカットを強制(3月)(「ピンク映画」という名称が生まれたのは翌年; 翌63年にも,映倫を通っていた国映『セクシ−・ル−ト63』を摘発・押収)
  • 1963(昭38)xx月 大映の成人映画『温泉芸者』,全日本聾唖連盟のクレ−ムを受けカット
    • また,市川房枝ら婦人議員が売春を容認する「誘惑映画」として大映に抗議
  • 1964(昭39)xx月 第三プロ『白日夢』をめぐって武智鉄二監督,映倫審査員を忌避
    • 公開後東京母の会などが映倫に上映中止を訴え抗議
  • 1964(昭39)xx月 東京都で青少年条例制定

総じて活動屋さんは手を換え品を代え。とゆう印象をウケタ。「マトモなオトナ」が煙たく思うのも当然だろう。でもまぁ、世間様あっての商売だ。せめぎあううちに、世の中はじわじわと変わってゆく。
自分は、空気駆動の自主規制が、日本のソフトパワーの母だと思う。ルールを守ってちゃ表現できないモンを表現したけりゃ、覚悟ひとつで済む。「今なら大丈夫、このくらいなら大丈夫、この内容ならグリフィスにだって胸を張れるぜ!」みたいな。

「論理駆動の法規制」では、こうは行かない。クリエイタが「表現の自由の重さ」を背負えない。

現行の東京都青少年健全育成条例

  • 第八条(不健全な図書類等の指定)

第八条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
 一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

この基準は時代とともにうつりかわる。

  • 第十条 (指定映画の観覧の制限)

(指定映画の観覧の制限)
第十条 興行場において、第八条第一項第一号の規定により知事が指定した映画(以下「指定映画」という。)を上映するときは、当該興行場を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、これを青少年に観覧させてはならない。
2 何人も、青少年に指定映画を観覧させないように努めなければならない。

  • 『なんびとも』?
  • 時流に合わせて指定解除するシカケは?