11Q3九電やらせメール事件:「原発部門の組織ぐるみ」という見方
- 2011年7月11日朝日:九電上層部、「やらせメール」容認 番組放送前に把握
「11Q3九電やらせメール事件」で九電では社内調査が進行中。頭書記事では。原発部門トップの前副社長(6月28日付で退任)、玄海原発所長、および川内原発所長ら上層部が、メールを受信したり、口頭で報告を受けたりして、指示の内容を放送前に知りうる状態だった事が、社内調査であらたに判明した。との事。
紙面では続きがある。以下写経。文字装飾オレ。
九電はどこまで詳しく把握していたかの特定を急いでいるが、原発部門が「組織ぐるみ」で世論操作にかかわっていたとの見方を強めているワシもそー思う。。
これまでの調査で、前副社長は運転再開につなげる狙いから部下の執行役員らに「(番組に)協力してやれ。よろしく頼む」などと指示した事が判明。課長級社員はこうした上層部の意向を受けてメールを作成したが、松尾新吾会長は「前副社長らはメール内容は知らなかった」として、上層部の「やらせ」への関与は否定していた。
前副社長は現在はグループ会社の社長を務めているが、近く辞任する方向だ。同社は12日にも調査結果を経済産業省に報告し、公表する。前副社長が実質的に主導していた事を認めた場合、松尾会長の責任問題も避けられない情勢だ。
そこで『6月28日付で退任した原発部門トップの前副社長』が気になったので、九州電力プレスリリースより前年と今年度の役員名簿を比較してみた。
平成23年4月27日 | 平成22年6月29日 |
九州電力 代表取締役等 役員人事について | 九州電力 役員名簿等について |
退任予定者名簿(PDF) | 代表取締役、執行役員及び理事の業務委嘱並びに業務担当(PDF) |
段 上 守(代表取締役)[大分共同火力株式会社] | 代表取締役 副社長 |
平 野 敏 彦[一般財団法人九州電気保安協会] | 電力輸送本部長 |
溝 辺 哲[西日本プラント工業株式会社] | 技術本部長 |
諸 岡 雅 俊[大分エル・エヌ・ジー株式会社] | 原子力発電本部長 |
ご丁寧にも退任者名簿に「天下り先」が記されている。きっとだいじな事なのだろう(あらぬ風評を恐れてか山手線の内側ではあまり見ない書式だが、地方組織では公益法人の類でもこうなっている事がままある。)。
『前副社長(6月28日付で退任)』に合致するのは、大分共同火力株式会社社長・段上守氏。のみ。しかしこの会社はなかなか小さく、副社長さんも非常勤など、失礼ながら「原発部門トップの前副社長」の行き先としてはいささか不似合いにも思える。
肩書きで言えば「前・原子力発電本部長」にあたる諸岡雅俊氏の大分エル・エヌ・ジー株式会社は、依頼メールを受信した九電子会社4社(朝日・毎日)の中に名前がない。
というか、どちらも原子力部門出身者の行き先としては、いささか奇妙な感がないでもない。大分共同火力は単発の火力発電所だし、大分エル・エヌ・ジーは文字通りLNG商社だ。どちらも原子力に関係しそうな業務がみあたらない。
「前技術本部長」の溝辺哲氏が社長を務める西日本プラント工業は、依頼メールを受信した九電子会社4社のひとつで、イントラネットの掲示板に掲出して、4社中最多の約1400人に閲覧させた事、問題発覚後に「やらせとは心外」とのコメントを発した事が報道されている。
- 2011年7月8日 読売:【玄海】九電子会社「やらせとは心外」
子会社の一つ、西日本プラント工業によると(〜略〜)同社は「九電から指示を受けたという認識はなく、当社も社員に対するお願いとして掲示しただけ。仮に社員が自分の意見を説明会に送ったとしても、『やらせ』と言われるのは心外。ただ、お騒がせしたことは反省したい」としている。
本記事タイトルの「原発部門の組織ぐるみ」という見方については2001年7月10日の毎日の記事で、より突っ込んだまとめが為されている。以下要約。
- 【1】住民説明会で社員を動員するなど「やらせ」的な手法が常態化
- 【2】原子力部門の閉鎖性
責任問題は脇に置く。もしも本当に、松尾会長や眞部社長が一連の「サクラのシコミ」を「知らなかった」のなら、九電社内には、正規の指揮命令系統からみてブラックボックスで、アンタッチャブルで、おそらくはホロニックな、インフォーマル組織が存在している事になるだろう。
インフォーマルな組織 (組織図に描けない人の紐帯) |
フォーマルな組織 (組織図に描ける指揮系統) |
右内部の原子力本部・各原発・およびそのOB(↓天下る) | 九電本体 |
右内部の原子力関連部門・およびそのOB | 子会社本体 |
「アトミック・ファミリー」なんちて。たぶんファミリーの結束は堅い。きっと加盟の儀式はプルトニウムごくごく呑むとか。そんなん。