暴力装置と鉄人28号

要約

  • ×暴力装置:学者語。標準語と意味違。
  • △:軍は鉄人28号文民統制がそのリモコン。良いも悪いもリモコン次第。
  • 昭和左翼:鉄人廃棄!。昭和右翼:天皇万歳!。昭和共産:敵に渡すな大事なリモコン!←ブレは無いが敵が米帝

暴力装置」は「せいじてきに正しくない」

昨年の事だったか、官房長官だった仙谷さんが国会で「自衛隊暴力装置」と述べて、その場で撤回するという〜事件だかネタなんだか〜、まぁそういう事があった。と思う。その後しばらく、Webでは理屈を並べて「あれは正しい」と主張する向きもあれば、「んじゃ自衛隊暴力団かなんかか?」と腹を立てる向きもあった。

どちらが正しいのかは知らないが、趣味的にはガクモン上の意味がどうあれ、暴力というのは字面がよくないように思う。仙谷さんが珍しく「その場で謝罪して撤回した」のは〜趣味的には「あたりまえ」だけども〜、相対的に「おー。サスガ人権派弁護士」などと、失礼ながら感心した記憶がある。失礼に失礼を重ねるが、「すぱ〜んとその場で撤回」は、なかなかできる事ではない。

思うに。「暴力装置」というのは、居酒屋の人が売り切れを「ヤマ」と言ったり、デパートの人がトイレ休憩を「3番」と言ったりするようなモンではないかと思う。お店で使うぶんにはは、そうした符牒は便利なものだし、使わにゃシゴトが前に進まない面もあるのだが、ソレを店の外で使う事はまず、ない。世の中の全てが居酒屋やデパートというわけではないからだ。

だいたい「暴力」ったって常に「武力」とは限らない。権力だって野放図に使えば暴力だし*1、言葉だって無造作に使えば「コトバの暴力」になる。それでは困るので、通常、これらの「力」には「安全装置」がついている。権力の行使には「法の支配」、武力の行使には「文民統制」、言葉遣いには「親のしつけ」。などだ。

おそらく。「暴力装置」とは、どこか南蛮渡来の翻訳語で、原語は「チカラに制御のシカケをつけたもの」くらいのニュアンスなのぢゃないかと思う。「パワー」に「アクセルとブレーキ」を合体させれば、なんらかの「害より益の方が多いシカケ」になる。みたいな、ちょっと抽象的で難儀な概念。たぶんだけど…単にそれだけの「直感」で言うのだけど、「自衛隊暴力装置」というのは、間違っていると思う。アレは、少なくとも「学者同士でしか通じない符牒」として使われべきコトバのように思える。

軍は鉄人28号

自衛隊について言うなら、このくらいで充分なのじゃまいか。

軍は鉄人28号文民統制がそのリモコン。良いも悪いもリモコン次第。

これを昭和ノスタル爺の世界分類(リベラル・左派 VS.保守・右派)にはめると

  1. 昭和左翼:鉄人廃棄!  ← 見るのもイヤッ!
  2. 昭和中道:現状維持でw。← クサイモノにフタ
  3. 昭和右翼:天皇万歳!。 ← 反動(サヨクに対する反発を含む)
  4. 昭和共産:敵に渡すな大事なリモコン!  ← 敵が米帝(aka.資本主義)

といった所に収まるのぢゃないか。数の多い順で並べ替えると2、1、3と4。くらい。この中では共産党が最もブレがない*2が、「敵」が米帝では、高度成長の中では難しいモンがあるだろう。

政治権力も鉄人28号

「権力」について言うなら、こうなるかと思う。

政府は鉄人28号。法の支配がそのリモコン。良いも悪いもリモコン次第。

これだと法を作るのは国会だし、国会議員は選挙で選ばれるので、良いも悪いも国民しだい。という事になるw。

三木トリローさんについて。

鉄人28号主題歌の作詞・作曲は三木鶏郎さんと言う方で、オリジナルは1960年(TVアニメ開始)のようだ。敗戦すぐのラジオの人気番組に「冗談音楽」というのがあったそうなのだけど、三木鶏郎さんはこの番組で、政府を茶化すようなコントや替え歌を多数披露した、放送作家の始祖鳥のような人らしい(CMソングの始祖鳥でもある)。

生年は1914年なので、6歳でWW1の戦後恐慌(1920)、9歳で関東大震災(1923)、14で普通選挙法(1928)、15の年に世界恐慌(1929)が発生し、17歳で満州事変(1931)、あるいは18の時に、この記事をリアルタイムで読まれたかもしれない。

『東京朝日新聞』(1932年1月3日)は、「政治の習律となってまだ日浅き政党政治が、既に国民のけん怠を買い、更にぞう悪の的とまでなった原因は第一に腐敗、第二に無能である」「しかも最近政治の局面が満州事変、財界大動揺によって未曾有の重大性を帯ぶるに伴れ、一層政党政治を頼りなく思うの情が強化した」と述べた。


大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書) P241

その後、23で日中戦争開戦(1937)、26で大政翼賛会結成(1940)を見て、翌年の真珠湾(1941)が27。いいかげん長いので端折ると、敗戦時31歳。

戦後はラジオ番組で政府を茶化して、ずいぶんと政権に睨まれたらしい。鉄人28号のアニメが始まった1960には46になっている。

あるときは 正義の味方
あるときは 悪魔のてさき
いいも わるいも リモコンしだい
鉄人! 鉄人! どこへゆく

さて、この歌詞にはどんな想いが込めてあるのだろう。

*1:行政権に限らずパワハラアカハラだってそうだろう。

*2:理屈の首尾一貫性では日本共産党より右に出る政党はない…左なのにw。