一口に「テレビなんか誰も見ない」と言うけど、それは「どのテレビ」か?

 http://japan.cnet.com/blog/mugendai/2008/07/30/entry_27012609/にて、「テレビの要素分解」を知った。

0 「テレビの要素分解 ファミコン/スーファミ時代』 Apple(not ”Apple Computer")
1 ハコとしてのテレビ ファミコン任天堂独占) iPods/Apple TV/iPhones/(量産型MacBookAir?)
2 インフラとしてのテレビ 初心会流通(任天堂独占) iTunes Store/App Store
3 コンテンツとしてのテレビ カセット(任天堂サードパーティはショバ代を払う) 素のbit/ファイル/プログラム(非Appleはショバ代を払う)
4 大枠としてのテレビ産業 大枠としてのゲーム産業(旧) デジタルコンテンツの任天堂(山内時代版)

(列1)ふつう「テレビ」にこんな面倒な区別はしない。
 大方の人は「テレビ」と言ったら「1から3が一体化したもの」と捉えるだろう。『♪わっち!えんじょ〜お〜い〜 ちゃん〜ねるき〜ればべ〜つせーかーい!(中島みゆき)』だ。
 基本的に過去に類例の無いビジネス(例えば「絵の出るラジオ」)を立ち上げるには、「川上から川下まで」を一貫構築するしかない。『大枠としてのテレビ産業』は、この黎明期の構造をそのまま維持している。

 ちなみに1972にアメリカでマグナボックスが発売したオデッセイというゲーム機は、「マグナボックス社のテレビでなければ遊べない」と思われたのだそうな。

(列2)ロートルゲーマーとしちゃ「黎明期のゲーム」と並べてみたい。
 ファミコン時代のサードパーティ(ゲームソフトの会社)は、任天堂にオカネを払ってカセットを生産し、任天堂の言い値を払い、任天堂の生産能力に合わせて出荷していた。中間流通(おもちゃ問屋)は任天堂が主催する「初心会」が抑えており、スーファミ後期には「販売機会の損失」が問題になっていた。

 初代PlayStation成功の影には、気違いじみた設計思想を持ち込んだ久夛良木閣下(性能)、段違いのセンスをもたらした佐伯明神(CM)とならび、需要に即応できる生産体制と製造コストの低価格化(光学ディスク)を基盤に、サードパーティも販売店も「みんなが儲かるシカケ」を伝えた丸山和尚率いるSME帰化人の存在(流通構造における革命)がある。流通構造における革命とは、いわば「大枠としてのゲーム産業」内部における「富の再配分改革」だ。
 技術、宣伝、みんなが儲かる、そして新奇なコンテンツ。この結果「ゲーム市場ぜんたい」は劇的に拡大した。リッジ鉄拳あまたのくず、百万行ったらFF7。最後のだめ押しDQ7。趣味的には「あまたのくず」のほうが好みだったんだけど*1そのことはおいといて、もうちょい簡単に言うと『客よし、店よし、世間よし』でいいかもしんない。『みんなでしあわせになろーよ』でもいいかもしんない。

 と、ゆー時代は遥か昔に過ぎたわけだが、「サクヒン・ビジネス」としちゃ現在でもゲーム産業がもっとも健全だと思ってます。栄枯盛衰は激しいけれど、もともとお客は飽きっぽいものだし。だからって公的資金注入も非関税障壁も再販価格指定も放送免許も録音録画補償金もいかなる類いの公的保護もうけたことがない。それでもみんな生きている。♪生き〜ているからツライんだ〜orz。いいけどべつに。

 「テレビ」はソレ以前の問題だ。日本で制作される映像の、時間にしてほぼ90%以上がテレビ放送向けだそうだが、その著作権のほとんどは「テレビ局(インフラ/流通/土管屋)」が持っている。年間2兆と推定されるテレビCM料はほぼデンパクが抑え、それがキー局の番組製作資金となり、そのオカネがなければ「制作会社」は映像を造り出すことができない。「テレビがツマラナイ」のはそれが「シチョーリツが全てです!」だからだ。この構造の中に「繰り返し、何度も見られるのが良い作品」と思っている人は少ないだろう。

(列3)Apple(not ”Apple Computer")
 現在の岩田任天堂は山内時代版とは大きく様相が異なるが、社名から「コンピュータ」を外したAppleは、『デジタルコンテンツの任天堂(山内版)』を目指していると思われる。「川上から川下まで」を自社で抑える事に成功しつつある以上、「サードパーティ」は「他所よりちょっとマシ」程度の条件で集まってくる。これは家電屋のみならず、長期的には世界のサクヒン・ビジネスにとっても結構な脅威と思われる。
 なにしろ映像も音楽もバンバンiTunesで買ったら、他社のデバイスを買う事なんて出来ない。国内では「着うた」のほうが売上規模がデカイようだが、ワールドワイドではAppleが「山内任天堂化」したら誰も止められない。セガサターンのソフトも80枚持ってるおいらとしては単色のセカイはイヤなのだ(ついでにコレがマカでもある理由だと思う。我ながらイヤな濃さだが)。
 大衆の望むものは三つある。新奇、新奇、そして新奇だ。Appleは、毎年新しい土管を出す、水道屋に過ぎない。ユーザーエクスペリエン酢?、、、んなもなぁ三日で飽きる。

*1:例えば『スタジオP』