CATVに関するメモ

 地デジのアンテナ代を考えると*1、いっそCATVの方がいろいろ見れてオトクではにゃいか?と思ったところ、拙宅は電気屋にパンフの置いてあるCATVのサービス区域外である事が判明した。

 家を出て30歩の距離に市境があり、その先の駅や商店街を主要立ち回り先とするおいらとしては「え」という感じだ。

 泣きながらググってみたところ、CATVというのは市町村単位で営業しているものらしい。複数の市町村をカバーしている会社もなくはないが、隣接市町村をカバーしている会社は稀。そんなん広域営業して加入者いっぱい抱えた方が安くできるだろうに。

 1997年7月24日に行われた「武蔵大学総合研究所 マルチメディア・システム研究会 第14回研究会報告」によると、朝日新聞の原淳二郎さんと言う人が「わが国情報産業とNTT分割」というタイトルで公演しており、そこに以下のような文言があった。

7. 日本のCATVはこま切れ認可の犠牲者であり、アメリカにくらべて規模が小さすぎる。経営が苦しいところが多く生き延びられない会社も出てくるだろう。

 もともとCATVは、日米とも難視聴地域の人達が自発的に作ったのが始まりだとかで、米国ではすくすく育ったものの、日本では「中央の目の届かない所で」できたものを把握しきれず、厄介な規制のスキマに落ちて「縁側の下に生えたヒマワリ」みたくなっちゃう事がままある。

 経済企画庁の『平成6年 年次経済報告 厳しい調整を越えて新たなフロンティアへ 第3章 景気後退下での日本経済の長期的課題』によると、

日本のCATVの普及率が低い理由としては,そもそも地上系のテレビジョン放送が広範に普及しており,CATVの必要性が薄かったことなどの事情が挙げられる。日本のCATV事業に関しては,アメリカと異なりCATV事業と電気通信事業の兼営は従来より可能であり,93年12月にはCATVの営業区域の全面的自由化が実施されるなど,マルチメディア化に対応する形で規制緩和が行われている。こうしたなかで,CATV事業が拡大するとともに,政府の適切な環境整備の下,民間主体で光ファイバー・ケーブルを中心に,無線系も含めて,それぞれの特性を活かしつつ,情報通信基盤の整備を着実に進展させていくことが次世代のマルチメディア時代を迎えるために重要となろう。

 H6と言えば1994。ワタシの気が確かなら*2、「マルチメディア」が魔法の呪文*3だった最後の年だ。「国家情報インフラストラクチャー(NII)」とか「インターネットを普及させねば世界の潮流に乗り遅れる!」などの認識がジョーシキ化するのは翌1995からだったと記憶している。

 それはともかく『93年12月にはCATVの営業区域の全面的自由化が実施』されている。それから15年を経ているにも関わらず、CATVのマルチ・市町村・オペレーターが一般的でないのはなぜか?

 設備投資がばかでかい事は容易に想像できる。だがそれは、首都圏一帯の「見渡す限り住宅地」をフルカバーするうまみを消してしまうほどキツい市場なのだろうか?地上波無料放送が圧倒的なら、地上波の再送信で、キー局からCM放送料、NHKから受信料のワケマエを貰う事はできないのだろうか?STBで視聴記録とりゃ実績ベースの請求書が出せませんか(これがホントのPPV)。

 巡り巡って law.e-gov.go.jp の法令データ提供システム『有線テレビジョン放送法(第十三条)』にたどり着くオレ。

太字は原文通り太字イタリックはオレ

十三条  有線テレビジョン放送施設者たる有線テレビジョン放送事業者は、第三条第一項の許可に係る施設を設置する区域の全部又は一部が、テレビジョン放送(放送法 (昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二号の五 に規定するテレビジョン放送をいう。以下同じ。)の受信の障害が相当範囲にわたり発生し、又は発生するおそれがあるものとして総務大臣が指定した区域内にあるときは、その指定した区域においては、当該施設を設置する区域の属する都道府県の区域内にテレビジョン放送又はテレビジョン多重放送(テレビジョン放送の電波に重畳して、音声その他の音響、文字、図形その他の影像又は信号を送る放送であつて、テレビジョン放送に該当しないものをいう。以下同じ。)を行う放送局(放送法第二条第三号 に規定する放送局をいう。)を開設しているすべての放送事業者(放送法第二条第三号の二 に規定する放送事業者をいう。以下同じ。)のテレビジョン放送又はテレビジョン多重放送を受信し、そのすべての放送番組に変更を加えないで同時にこれを再送信しなければならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

 よーするに、その地域で受信できるテレビを再送信しなければならないと定めている。ぶっちゃけCATV会社にとっては「競争相手」でもあるわけだが、法でこれを強制するのであれば、民放はCATV会社に相応のCM放送料を払うべきだし、NHKは地域の受信料を渡すべきだ

 「妥当な金額」は、STBに視聴率測定器付けるなり、センター側がch単位で総視聴者数を計測するなりすりゃいいのではないか。後者ならプライバシー的な抵抗感も薄いだろう。

 一方的に既存放送局のミカタをする条文になっているのは、もともとCATVが難視聴地域対策として始まった事にあるらしい。で、あればますますCM放送料や受信料の配分を既存局に義務づけるべきという気もすんだけども。

 有線テレビジョン放送事業者は、放送事業者(放送法第二条第三号の四 に規定する受託放送事業者を除く。以下この条において同じ。)又は電気通信役務利用放送事業者(電気通信役務利用放送法第二条第三項 に規定する電気通信役務利用放送事業者をいう。以下この条において同じ。)の同意を得なければ、そのテレビジョン放送若しくはテレビジョン多重放送(委託して行わせるもの及び電波法 (昭和二十五年法律第百三十一号)第五条第五項 に規定する受信障害対策中継放送をする無線局の免許を受けた者が受信して再送信するものを含む。以下この条において同じ。)又は電気通信役務利用放送を受信し、これらを再送信してはならない。ただし、前項の規定により有線テレビジョン放送施設者たる有線テレビジョン放送事業者がテレビジョン放送又はテレビジョン多重放送を再送信するときは、この限りでない。

 よーするに、他の地域のテレビ放送をCATVで再送信するなら、ちゃんと同意貰わないと禁止ですよと。

 あたりまえじゃまいか。

 てゆうかそもそもCATVでの再送信を義務づけなどしなければ、こんなややこしい条文は要らないものだ。なぜ民間会社同士の個別契約の問題に容喙する?CATVは電波使わないのでは?なぜ電波免許の一県一波制の補助剤におしこめようとする?なぜ多ch化の恩恵から国民を遠ざける?

 有線テレビジョン放送事業者(有線テレビジョン放送事業者となろうとする者を含む。)は、放送事業者又は電気通信役務利用放送事業者に対し、前項本文の同意(以下単に「同意」という。)につき協議を求めたが、その協議が調わず、又はその協議をすることができないときは、総務大臣の裁定を申請することができる。

 その「総務大臣の裁定」の実務にあたる者が「代々どこぞのキー局に天下りを輩出しているポスト」の場合、この条文は実質的な意味を持たない。第八項まで読むと結構笑える。

 第六項の裁定(*和解条件を提示する裁定*)が前項の規定により当事者に通知されたときは、当該裁定の定めるところにより、当事者間に協議が調つたものとみなす。

 中華人民共和国かと思ったヨ!

*1:今アンテナ付け替えても、新東京タワーが稼働する2011年12月以降に再工事が必要になる可能性が高い。

*2:記憶だよ

*3:「これは金になる!」と信じてオカネを出してしまう魔法。この手の魔法はやがて抗体をもつ個体が増え、効かなくなる。実はタダの呪文でなくて実体も少しはあるのだけど、抗体を得た個体はその実体の効用も認めずに「大した事ないじゃん」と捨て去ってしまう。いろいろと思い出したく無い事を思い出してしまうのかもしれない。