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NHK受信料督促、簡裁申し立てを「万単位」に拡大へ
 
2008年10月7日15時0分
 
 NHKは11年度から、現在3割近い受信料の未払い率を飛躍的に改善する方策の一つとして、簡易裁判所に申し立てる支払い督促を年間で1万件程度まで拡大する方針を固めた。06年秋から採り入れた支払い督促は、2年弱の累計で計252件だけ。未払いの増加でふくらんだ不公平感の一掃へ、これまで以上に強い姿勢で臨むことになる。
 
 支払い督促は、未払い者に対して差し押さえなどの強制執行も可能な法的措置として06年11月に東京都内から始まった。当初は対象者以外の未払い者にも支払いを促す「アナウンス効果」と位置づけていた。しかし、視聴者の不公平感は放置できず、7日に経営委員会で議決見込みの中期経営計画でも、受信料支払率を昨年度末の71%から、11年度末に76%、5年後の13年度末は80%程度にする目標が掲げられている。その目標達成へ方針を転換し、本格的な「業務」として取り組むことにした。
 
 督促は現在、首都圏や関西、愛知県、広島県などに広がり、10年度までに全国展開を終える計画。その後、量的拡大に対応できるだけの職員や弁護士などの態勢を整えることになる。NHKは「あくまでも何度も訪問して支払いをお願いした上での措置。それでも応じてくれない人を対象にする」という。
 
 支払い督促の対象となる未払い者は今年7月末で約260万件。そのうち、04年以後の不祥事を理由にした支払い拒否・保留件数は、9月末で約58万件にのぼっている。今月1日までの支払い督促計252件のうち、簡裁からの支払い督促などに異議を申し立て、訴訟手続きに移行したのは61件(うち46件は支払いで合意)。すでに177件が支払い済みか支払いの意思を示している。

 受信料は、NHKの規約上は支払い義務があるものの、放送法では契約の義務しか定められていない

  1. 放送法には契約の義務はあるが罰則は無い。
  2. 放送法で契約を義務づける事じたい、憲法の「契約自由の原則」に反する。
  3. NHKフリーなTVが市場に無い。

 これらを考え合わせると、NHKに『差し押さえなどの強制執行も可能な法的措置』を認めるのは難しいように思う。なんつうの、公序良俗的な意味で。

放送法には契約の義務はあるが罰則は無い。

(受信契約及び受信料)
32条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
 
2 協会は、あらかじめ総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
《改正》平11法160
 
3 協会は、第1項の契約の条項については、あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
《改正》平11法160

 契約の義務はあるが、受信料支払い義務や罰則は無い。実は草案段階ではあったようなのだけど、そこまで法律で決めちゃうと近代法治国家の原則の一つである「契約自由の原則」に触れる可能性が高いので、受信料のほうは『あらかじめ総務大臣の認可を受け』た『第1項の契約の条項』に盛り込む事になったようだ。しかしそれでも、

放送法で契約を義務づける事じたい、憲法の「契約自由の原則」に反する。

 という意見がある。

 「契約自由の原則」とは、契約の締結・内容・方式を国家の干渉を受けず自由にすることが出来る事。
 自分の読解力では日本国憲法に具体的にこれを明示した条項がみあたらないが、Wikipediaでは近代私法の大原則の一つに数えているので、存在するという解釈が一般的なようだ。

 ゲンミツに言えば、国が法律で「この会社と契約しなきゃダメ」と定めるのは禁止、しかも「免除条件は総務大臣の認可を受けた基準によらなければならない」なので、NHK受信契約は、近代法治国家の原則を外れた契約という事になる。ほぼ違憲と言って良いのではないだろうか。

 しかし、これでも「放送法32条が違法」という事は難しいように思う。ちゃんと『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は』と書いてあるからだ。次の事情と重なったときに、「うわ息苦しい、公正取引委員会カモン!!」という状況になる。

NHKフリーなTVが市場に無い。

 「NHKが映らないテレビ」があれば、受信料など払いたく無いしNHKなんかみない、という人はそれを買えば済むのだが、その選択肢は市場に存在しない。自分の知る限り、した事も無い。

 なお、2007年5月頃に支払い督促が問題になった際、NHKでは「テレビを買う買わないは視聴者の自由であり、あえてテレビを買ったという点で契約の自由には抵触しないと考えている」と発言したと言う。こう来ると「みなさま、ノーNHK」などと皮肉のひとつもいってやりたくなる。→『理屈と受信料契約はどこにでもくっつく - 2007/05/17 - ageha was here』。

 なぜメーカーが「NHKフリーなTV」を出さないのか事情は知らない。売れないからだとは思うけども。昨年度末の受信料支払率が71%あるのなら29%は払ってないわけで。案外売れるような気がしないでもない。

 不払いに応じて、放送を戸別に止められるシカケにすりゃ良いのにとも思う。公共の使命だ情報はライフラインなのだったって、電気や水道は払わなきゃ止まるのだし(まぁヤクザの事務所は止まらんが)。

結論:NHK受信契約そのものが不法である。

 法律で、テレビ購入者に契約を義務づけ、免除条件を総務大臣の認可を受けた基準によらなければならないと定める事じたい、近代法治国家の基本原則である「契約自由の原則」から見て疑わしい。

 また、NHKフリーなTVが市場に無い状況で「テレビを買う買わないは視聴者の自由であり、あえてテレビを買ったという点で契約の自由には抵触しないと考えている」などの理屈を認める事は、社会通念上、不適当と考える。

 テレビやラジオの黎明期ならいざ知らず、2008年秋現在、こうした近代法治国家として微妙な受信料方式を維持する事には、見直しが必要ではないか。ありていに言えば、年間6千億あまりの受信料収入と、30数社にも及ぶNHK関連団体を維持する事が自己目的化していないだろうか。「NHKファミリー」には、郵政民営化道路公団民営化に近い「手術」が必要ではないだろうか。

 もしNHKが「万単位」で簡裁申し立てをするのなら、とことん争う者もでてくるように思う(まぁそういう手合いはあらかじめ除外すんだろうが)。

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