マンガが元気かどうかがほんとうにわかるたった一つの方法 - GMP

見出しは本歌取りです。オマージュとも言う。インスパイヤとも言う*1

GMPとは

国民総マンガ生産グロス・マンガ・プロダクト。略して「ぐろまぷ」......グロに弱い方*2に配慮してGMPとします。
愛・蔵太さんの「最近の漫画は元気なのかどうかがわかるたった一つの方法」を見てて思いついただけです。現実にはそんな指標はありません(ほんとう。ほんとう)。

こういう場合、「サクヒンの質」を問うべきではないでしょう。愛は有り過ぎてもトラブルの素ですし、問題は「市場の冷え込み」ですから。要はカネです。「サクヒンの質」など考えとっては、じぇにのはなは咲きまへんえ(誰だよ)。

単位は別に「金額」でも「タイトル数」でも「部数」でも良いのだろうけど、「一年間に印刷されたマンガのページ数」で測るのがベストな気がします。マンガが元気か否かは、エロと非エロの区別無く、同人商用の区別なく、腐とソレ以外の別もなく、日本全国ありとあらゆる印刷所で刷られたマンガのページ数を積み上げてゆく事により明らかになるであろ〜*3

同人誌限定ですが、確か「中小印刷業組合」みたいなところがそんな統計を出してたよーな記憶があるのだけど、みつかりませんでした。イキナリかいっ。

近似値くらいはあるものだ。

2007年のオタク市場規模は1,866億円、ライトオタク増加により市場拡大」てのがあったんで、ぢゃあこれで良いや。雑駁に「金額ベースのGMP」を推定してみます(ってほどのもんでもないですが)。

上記によると、2007年のオタク市場規模(推計)は以下の通り。

市場規模 構成比 備考
ゲーム 560.8億円 30.0% 同人誌市場の約2倍
出版 406.7憶円 21.8% -
DVD/CD 340.2億円 18.2% -
フィギュア・グッズ類 281.8億円 15.1% -
同人誌 277.3億円 14.9% -
合計 1,866.8億円 100.0% 前年比102.5%
  1. 出版の406.7憶と同人誌277.3億の比率は、100:68.2。フカシかませば10:7
  2. 出版+同人誌の合算は838.1億円。オタク市場構成比は44.9%となり、ゲームの30.0%*4をも凌ぐ。
  3. その大部分は、おそらくマンガだ(他になにがある?)

メディアクリエイトがオタク産業白書を継続出版してゆけば、元気か否かは自ずと明らかになるであろ〜*5。買った事ないのでナカミしりませんけど。その一方で、2005の野村総研の調査では国内のオタクの層の市場規模は4110億円。うちコミックは830億円になってるから、出版不況がスゴそうな感じはぎゅんぎゅんするのだけれども*6

仮に既存出版が縮退しても、既存出版を通さない、コンパクトなビジネスが増えてゆくなら、かならずしも「漫画に未来はない」とは言えない。たとえ既存出版社が養える人数が減るとしても、それは「マンガ・ビジネスの効率化」と見るべきものです。
既存出版社の「金のなる木」が細っているのなら、既存出版社の構成要素を分解して、他の儲け口を探せば良い事です。まして同人市場が出版の7割にもなるのなら、これをカネに代えない手はありません。

マンガビジネスにおける革命。

より少ないリソースで、よりピンポイントにニーズに応える。これは広告でも起きている事だけど、たぶんマンガでも起きてる。そして、実はネットはあんまり関係ない(たぶん)。

  1. 大きな戦艦に大きな大砲をたくさん積んで、デカイ砲弾あめあられ。
  2. 大きな空母に小さな飛行機をたくさん積んで、ピンポイントで一発必中。

     ↓

  1. 大きな戦艦が既存出版社。大きな大砲が週刊マンガ雑誌。デカイ砲弾が人気サクヒン。
  2. 大きな空母がコミケの類い。小さな飛行機が個々のサークル。ピンポイント・ミサイルが個々のサクヒン。
マ界の現状

なんだとてめぇ!既存出版社にしねというのか!っと言われそうな気がぎゅんぎゅんしますが、業界外の一介のマニアには「編集者とマンガ家が共にサクヒンを作り上げる」という幸福な関係は、既に過去のものに見えます。既に形骸化してしまった「その時代のならわし」が、「編集者がマンガ家に断り抜きで映画化の話を断る」みたいな不幸の源泉に見えます。編集者もマンガ家もいろいろと変質したのだけど、両方とも「その時代のならわし」の、自分に都合の良いトコだけまだ信じてる。ように見えます。
既存出版社は、ビジネスモデルを一から再設計する必要があるように見えます。イージス艦になってみるとか。高度なレーダーを装備して、大砲は、小さいけど百発百中のが一門。て感じのヤツ。これは、経験値のある既存出版社ほどチャンスだと思います。

ロングテイルのSOHO相手に「成功の機会」を売る。

雷句誠事件を契機にいろいろ出て来た「マ界の諸問題」は、出版社が「サクヒンの創出」に関わらないのが手っ取り早い。たぶん。

  1. 「サクヒンの創出」は個々の「小さな飛行機」に任せきり、
  2. 出来上がった人気サクヒンの、流通や版権マネージメントを請け負う。

というビジネスができるのぢゃまいか。「小さな飛行機」がいっぱい飛んでるのなら、「商業流通に乗せたい」「アニメ化したい」「ゲーム化したい」というニーズがあるだろう。ヤツらから毟りと、あ〜げふんげふん。彼らの支援に徹するというのはどうか。
「そういう事ならウチに御任せ!」ちゅうワンストップ・サービスを提供してワケマエを貰う。というのはどうか。定額でも、歩合の成功報酬でも。マンガ家から金をとってはどうか。いっそ週刊誌の掲載権をマンガ家に売るというのはどうか。掲載期間中はアンケートの結果集計と、プロの編集者のアドバイスが付きます。みたいな*7
それを買うカネは、つまり、一定レベルのマンガ家になるまでは、コミケで稼いで、名前も売って、修行もしてきてくださいねとゆう感じで。
一部の同人出身ビジネスの成功事例がそのへんをどうしてるのかは知りませんし*8、とっくに着手してる出版社もあるでしょうけども、これをやるには「マンガを起点にした版権管理のノウハウ」が必要です。それを最も溜め込んでるのは、おそらく既存の出版社でしょう。それは金とって売れるレベルのものだと思います。「映画化の話が来ましたけどどうしますか?」という窓口業務を、マンガ家から請け負うのだ。成功報酬なら「当てる為のパートナーとして、口を出させて頂きます」。取っ払いの手数料なら「手数料ぶんだけ働きます」。

たぶん。既存出版社内部に「労働需給のミスマッチ」が発生する。整理解雇も必要かもしれないし、たぶん、マンガ家と出版社双方の意識改革も楽ではない。既存出版社の経営規模も小さくなりそうだし、個々のサクヒンも小粒になるかもしれないが、しかし、それでも、日本全体で見れば「マンガを描いて喰ってける人」は、少し増える。手塚治虫さんや鳥山明さんのような存在はもともとごく一部だし、あのレベルの天才さんは、業界構造がどうだろうと回りがほっとかないだろうし。

これで、金額ベースの「グロス・マンガ・プロダクト」は増えるのぢゃまいか?やってみなきゃわかんない話ですし、やる羽目になる人達の痛みはわかりませんが、どんな娯楽産業でも「中堅ヒットの途絶」は、手当が必要です。

最悪のケースでも、老兵は死なない。むしろ死なせてもらえない。

最悪、マンガ産業がこれ以上成長しないとしても、下落カーブを緩やかにして時間を稼ぐ事はできます。一度人口に膾炙した娯楽が消滅した事例を自分は知りません。邦画だって生きてますし、ラジオだって生きてます。ビジネスとしてはアレかもしれませんが、落語だって生きてますし、紙芝居も消滅はしていません。これらに比べりゃマダマダですし、「版権」という名の電気を、アニメやゲームという「後発電力会社」に売電する事もできます。
過去を愛し過ぎれば、ビッグな制作費とオールスター勢揃いで日活にトドメを刺した「落陽」みたいな、「やけくそのバンザイ突撃」に賭ける羽目になります。
ここに書いた事は無責任な部外者の思いつきに過ぎませんが、既存出版社の構成要素を分解して「別の儲けかた」に組み替えれば、再建の基礎は残せるのではないでしょうか。
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その他

*1:ごめんなさい。パクリです

*2:主におれです。

*3:ろ〜んぶろぞ〜

*4:数字から見てハード売り上げは除外してると思う

*5:ろ〜んぶろぞ〜

*6:ちなみに4110億円と1,866.8億の違いは、オタク市場の定義が違うから。のむそーは鉄や車や携帯機器や、「ファッション」まで入れてる。

*7:黒い事を言えば、別に「これはそういう連載ですよ」と読者に伝える義務もないでしょう。

*8:コミケも行った事ないし....(そんなんでこんな事書いてごめんなさい)