無題
まるも製作所さんがJVAのデータを元に光学ディスクの平均単価を算出されていた。元記事の表を要約すると以下のようになる。
ジャンル | 光学ディスク平均単価 |
国内アニメ | 4,038 円 |
海外ドラマ(アジア) | 3,433円 |
海外ドラマ(非アジア) | 2,520円 |
国内ドラマ | 6,134円 |
購入単位あたりの価格が高い場合、どうしても実際に購入に至るまでの敷居は高くなってしまいます。高価な DVD に慣らされているヲタ向けのアニメよりも平均価格が上に設定されているというのは、よほどの好きモノ以外は購入するなと自ら主張しているとしか思えません。
逆に、海外ドラマが安いのはなんでやと考えるに、やはり放送業界の構造に求め得ると思われる。日本の場合、国内制作映像のほとんどは「テレビ向け」だそうだが、広告無料放送が圧倒的な現状を鑑みるに、基本的な作り手のスタンスは「シチョーリツが全てです!」だと思われる。
米国はそうではない。
【ハリウッド映画に見るウィンドウ】
WINDOW1 映画興行 →0ヶ月 WINDOW2 機内上映 →1ヶ月後 WINDOW3 レンタル・セルDVD発売 →3〜6ヶ月後 WINDOW4 ペイ・パー・ビューTV →7ヶ月後 WINDOW5 ペイTV局 →1年後 WINDOW6 ネットワークTV局 →2年後 WINDOW7 ケーブルTV局 →ネットワークの1年後 WINDOW8 地方TV局 →ケーブルTV放映のあと WINDOW9 インターネットによるオン・デマンド配信 →随時
「テレビドラマ」や「番組」の場合は、WINDOW3の光学ディスクや、WINDOW4のペイ・パー・ビューTVが1窓を務めると思われるが、いずれにせよ、これだけ「回収回路」が多重であれば、以下の事が期待できる。
- 番組の質的向上:作り手のスタンスは基本的に「繰り返し、何度も放映権を売れるのが良い番組」になる。これは「シチョーリツが全てです!」よりも「繰り返し、何度も見て貰えるのが良い番組」に近い。
- 光学ディスクの売値低下。
コドモダマシのモンキービジネス、マトモな奴は一人もいらねぇ。
彼らは実際の制作作業に入る前に、これだけのウィンドウ(消費者とサクヒンの接触機会/興行主から見ると収益機会)に「配信をする権利」と「関わる人のとりぶん」を交渉し、調整し、契約している。ひらたく言えばゴッドファーザー的なネゴシエーションだが、手許ではコレこそが「サクヒンビジネスの心臓部」だと考えている。
飯が喰えようが喰えまいが表現せずにおれない人というのはあるものだが、ユメを売る連中に商売はできない。彼らの才覚を食い物にしつつも「飯のタネ」として守る存在が必要だが、ユメを売る商売はカタギにはできない。
まったく同じ構造を日本に作れるかというと、そんな事しても面白くはないのだけれども。それでも。広告放送が圧倒的である限り、サクヒンビジネスの発展は期し難い。そして「価値の創造者」に「成果に応じた報酬」が渡る事も期し難い。
流通寡占では「価値の創造者」に「成果に応じた報酬」が渡らない。
○現在、映画配給会社、テレビ放送局などのコンテンツ流通部門が寡占的傾向にある中で、コンテンツの制作事業者は、製作資金調達、マーケティング等において流通事業者に大きく依存せざるを得ない状況にある。このため、コンテンツ産業では付加価値の多くを流通事業者が取得する構造にあり、コンテンツ自体の価値を創造する生産部門が必ずしも成果に応じたリターンを得られていない状況にある。
基本的にこの状態がまだそのままであるならば、以下の見解には納得がいく。
本当に、対価の還元が重要であり、コンテンツと隣接権へのリスペクトが必要だと考えているのであれば、実演家が持つ許諾権の行使について「相対取り引きで十分」などと寝ぼけたことを言って、市場での競争を排除しつつリスクを回避した方式を続けようとしている放送事業者の言い分をそのまま受け入れるのではなく、また、「地上放送の無料モデルの特殊性」などといった、同じ状態でも収益を上げている他ジャンルの放送コンテンツの存在を無視して、売り方が下手なだけなのじゃないかという視点から目を逸らすだけの意見に浸ることもなく、より収益化に有利な売り方を実現するにはどうするべきかと、影響力を発揮していく方がよほど建設的なのではと考えています。
『コンテンツ流通部門の寡占』は、その多くが「電波免許の管理人が少ない」事に起因する。
打開するには、彼らを「ワン・オブ・ゼム」にしちゃえば良い。
以下4月のニュースから。
このニュースで一番面白かったのは、視聴回数に応じた「ケータイ配信印税(max11%)」がキャストと制作者に支払われるという点。タレントを抱える「産油国」が、番組という「石油精製」に乗り出したと言ったところ。もちろん有料で、無料録画はできない。
『「海外でキャラクター玩具を売るには発想の転換が必要」(バンダイ幹部)とテレビ先行の慣例を破る判断をした』との事。国内でのリーチは地上波が最強だが、流せば必ず流出する。それよりは『日英独仏など約10カ国語の字幕をつけて国内外に配信、欧米主要国でも視聴できるようにする』ほうが良い。『年内に主力アニメ「機動戦士ガンダム」のアニメ』との事だが、新作とすれば、やっぱ「ユニコーン」だろうか。料金は不詳だが、録画はできないと思われる。
バンナムの場合、アニメとゲーム*1という相互に親和性の高い「精製技術」だけでなく、バンダイチャンネルという「パイプライン」も持っている。「10代後半までに洗脳し、その後一生搾りとる*2」なら、少子化の進む国内市場への依存度は、徐々に下げてゆく必要がある。海外開拓は必須だろう。
2008/9月にプレイステーション3を1窓にした「亡念のザムド」は、2窓に地上波を選んだ。MBS(大阪の毎日放送)、CBC(中部日本放送)、TOKYO MX(東京都)と、大都市圏だけを選んだDVDの宣伝と思われる。いずれにせよ「マルチ・時間差ウィンドウでの多重回収」は国内市場では確立していない。
他にも、アクトビラ、Wiiチャンネル、PodCastingなど、「映像の伝播回路」は多様化が見込まれる。どれが生き残るかは判らないが、「価値あるサクヒンは神出鬼没(いつどこで見れるか判らない状態)」になってゆく可能性が高いと思う。いずれにせよ「作り手」や「純粋著作利権」から見れば、「放送するや否や流出し、流出しないまでも10枚もコピーされる回路」は避けたい筈だ*3。
今のところは、ちゃんと見たかったら光学ディスク買うか、iTSで買って下さいね!みたいな。
最終的には「客にファイルを渡すな。鯖への入場料を取れ!」に落ち着くと思うのだけども。
「放送免許」と「製作・著作」の分離
もしも広告無料放送が「賞味期限切れ番組」の放映権をバルクで叩き売る先になってゆくなら、B-CASもダビ10も、どーでもよくなる。
そんな事より。
日本のサクヒン制作力がこの先きのこるには、放送と製作の分離、「放送免許」と「製作・著作」が分離した「純粋著作利権」を成立させる事のほうが大事だ。この点では、認定放送持株会社制度にやや期待がかからぬでもない。資本分離とまではいかずとも、事業分割の可能性があるから。
「製作・著作」だけに特化した「純粋著作利権」をコアに、配下に「放送免許」など各種の「伝播回路」がぶら下がる形であれば、
- 「シチョーリツが全てです!」から「繰り返し、何度も見て貰えるのが良い番組」
に転化し得る。これで多彩な伝播回路に「放送権」を売れるなら、企業広告命のビジネスモデルより、やや景気変動に強くなれるのぢゃまいか。
いますぐ、とは行かないだろうし、事業構造の転換にはすんげぇ痛みが伴う筈だが、「放送免許を持った不動産屋」呼ばわりされるよりは「テレビマン魂」が活きるように思うのだが。
NHKの問題。
ただし「公共放送」という、官とも民とも付かないNHKの曖昧な立場は、不確定要因だと思う。デカ過ぎる。「放送法上の受信契約締結義務」と、「総務大臣が認可する受信契約の内容」、そして「NHKフリーなテレビが市場にない」。この三つが化合すると、
という「魔法の呪文」が詠唱できる。
番組や編成には文句ないってゆうか「すげぇかっちょいい!」と思うのだけど、ちょっと上記のセリフには鼻白んだ。
- 受信料収入によりNHKの経営は安定的だ。
- 放送法の改正で営利事業に手を出せる。NHKエンタープライズの番組販売や、古くは映画製作に手を出した事もあった。直近ではNHK オンデマンドも、放送法の改正で可能になった事業。
公だの民だのノイズを取っ払ってカネの流れだけ見れば、日本最大のペイTVであり、日本最大の映像著作利権コングロマリットだ。良質な番組を作り続け、かつ放送し続けている点ではスゴいのだけど、、、位置づけが曖昧で、デカ過ぎる。