開局以来初の最終赤字となったテレビ朝日の連結決算をグラフ化してみる:Garbagenews.com

民放キー局は、全国ネットの地方局に「放送代」を払うので営業利益率は元々良く無い。これを根本的になんとかするなら、以下の方向が考えられる。

■案

  • a.認定放送持株会社で、地方局のとりぶんににメスを入れる。
  • b.「国民の基幹放送を守るために」私的受信補償金とか、なんかそれっぽいのを主張する。
  • c.番組の「製作・著作」を分社し、「デンパキチ」から離脱。

他にもあるだろうけど、多くても困るので三つで。

■デンパキチ(勝手な造語)

  • デンパ:大手広告代理店
    • 企業の広告窓口と、キー局の番組枠販売代理権を抑える。←背景:東京一極集中。
  • :キー局
    • 広告費ベースの番組制作。ゆえに「シチョーリツが全てです!」
    • 潤沢な資金で番組制作は下請けに出し「製作・著作」を抑える。
    • 制作会社(実際の番組価値の創造者)の年収はかなり低い。
    • 地方局を系列化し「全国ネット」を構築。←キー局は大新聞の資本で開局したため、各県の新聞販社に地方局開局を推奨。
  • :チホウ局
    • 一県一波制により、放送免許は県単位。
    • キー局の番組を放送すると「放送代」が入る(電波使用料)。
    • 一県一波制は、テレビ黎明期に田中角栄郵政大臣が決め、各県の免許申請の一本化にも奔走*1
    • 局にもよるが、概ね「地元のセンセイ」と懇意の傾向。

田中角栄さんは「高度成長の格差是正」を平準化するべく、さまざまな「東京のオカネを地方に流す用水路」を工夫した人だが、「デンパキチ」は処女作にちかいものだと思う。ゲンミツには一県一波制でここまで狙っていたのかは詳らかでない。単に放送局の局舎や中継局の工事が、地元の会社に回るシカケが欲しかっただけかもしれないが、いずれにせよ;
09Q2現在、企業が払う年間約2兆円のTVCM代のうち、多くは「デンパキチ」の中を上から下へ流れる。この「用水路」に近い者ほど、多くの「水利権」を持つ。

■価値の創造者

テレビ番組の「価値の創造者」は、実際に「手足を動かして番組をつくる人」であり、「電波免許の保有者」ではない。

黎明期のテレビ局ではこの2者は同一だった。当時は「テレビ番組」なんて、誰もみた事も作った事もない。「番組」は「局の人」が全て一から作らねばならなかったが、時代が下り、市場が広がり専門化が進むと、「制作会社」というものが成立するようになる。中には「電波免許の保有者」ではなく「スポンサー企業」に直接企画を持ち込んで制作資金を確保する会社も出て来たが(テレビマンユニオン:1970~)、多くは「電波免許の保有者」の「下請け」に留まる。

多くの場合。大勢が大金を掛けて作るサクヒンの著作権は「カネを出した奴」が握る。映画なら映画会社。ゲームならゲーム会社。これはそういうものだと思う。才能をカネに代えるには先ず種銭が要る。これは逆から見れば、種銭さえありゃ才能は買えるという事だ。同様に、「テレビ番組の著作権」も「製作・著作」という形で「局」が握っている。

歴史的には。映画会社もゲーム会社も、どちらもクリエイタを「社員」として囲い込み、大事に扱う(オカネや、チャレンジャブルな企画を与えるなど)時期を経て「クリエイタが一本立ち」する経過を辿っている。のだけれど、これらに比べると「テレビ」は、やや様相が異なる。

「放送電波」が「免許制」だからだ。これは映画にもゲームにも無い。

良い番組を産む才覚は、ドコの国であれ一定の比率で存在する筈だが、彼らの才覚をマネタイズする上では、地上波無料放送が圧倒的な「伝播回路」になってる現状は、ボトルネックだと思う。

■「テレビ資本」がこの先きのこるには

日本の映像制作能力は、「デンパキチ」→「持続し得る"価値ある番組"の生産体制」へ移行しないとマズいと思うのだけど、日本で制作される映像の90%以上は「テレビ向け」だそうなので。単にここが崩れてしまうだけというのはちとマズい。なんとか生まれ変わる道はないものか。

  1. 認定放送持株会社で、地方局のとりぶんにメスを入れる一方、
  2. 番組の「製作・著作」を分社化し、「デンパキチ」から独立させる(放送と製作の分離)。
  3. 分社化した番組製作会社*2は、サクヒン単位で最適な伝播経路に「販売*3」する。特定のプラットフォーム(地デジとか)に拘泥しない。
  4. 当面の食い扶持は「過去番組のライブラリ」で稼ぐ。
  5. 番組制作資金は「放送権販売の売上高に期待する投資」で調達する。
  6. 制作方針は「繰り返し、なんども売れるのが良い番組」←「シチョーリツがすべてです!」の発展的解消。

「テレビ」の衰退は不可避だが、「テレビ資本」には上記のような絵を描いてもらいたいところだ。どうすりゃいいんだ。株でも買ってみようかw。

問題はキー局の「電波免許の管理人度」が上がり過ぎ、番組制作能力がgdgdになりきってるように見えるところだが...。

*1:この時の人脈が田中派の源流のひとつとも

*2:純粋著作利権。ベストは資本分離。次善は認定放送持株会社の枠内での分社。

*3:放送権、ストリーミング権(これらは一回券、回数券、定期券)、光学ディスク販売権、ファイル販売権、など