タニマチ・システム

例えば、あるアーティストが100万円/月、と決めちゃう。
会員を集める。会費は1000円/月。
会員は1000人。限定。

会員に対しては、アーティストから直接、例えば楽曲が送られる。
オンラインで。なにかのDRMかけてもかけなくても、その人判断で。

送られてこない月もあるかもしれないし
ある月には、何曲も送られてくる。

途中のデモとかでも送ったら面白いよね。

2、3百のファンがつけば、売れる売れないやレーベルの都合に左右されずに食ってゆける、的な話はNet登場時からあるんだけど、むーむーむー。ソレ創り手と受け手の関係が劇的に変質するって事でもあるよなぁと思わないでもない。

たぶん、一番でかいのは、「あれ見た?」とか「アレ聞いた?」とかの、コミュニケーションネタとしての使いでダウン。

仮に会員側がコレを「タニマチ・システム」と捉えるとすると、関取は有名な方が良い。でないと取引先やお妾さんに自慢できない。この手の「有名人生産システム」としては、たぶん、マスコミが最強だと思う。絶滅すりゃ別だけど、アレたぶん減殺はしても絶滅はしない。TVも、レーベルも、出版社も(バザールもいいけどカテドラルもね!派)。

じゃあ、創り手さんらは、マスコミを、「自分のタニマチ・エコ・システムを確立するまでの踏み台」に使えばいいのかとも思うのだけど、ゴールインした瞬間にマスコミが「次の有名人」を見つけてくるので、相対的に「過去の人」になってしまう。「脱会者」を補充するにしても「キャンセル待ち」が並んでなければ「タニマチの輪」は縮小一途だ。

「キャンセル待ちの列キープ戦法」は創り手として耐え難いというキモチにフタをして、キープ手段を講じる場合。「理解者」を探すにはマス露出がもっとも手っ取り早い。「サクヒンそれ自体の価値」は常に一対一のタイマン勝負だから。「俺の歌を聴けぇええ!」と一方的に送りつけるとか、「トロール漁船で底引き漁法」とか。「タニマチのトモダチはみなタニマチ(候補)だ!」というのはリスクがでかい。

いやいや、ニコ動やYoutubeという道があるぢゃないか。という気もするが、アレ、オーバーナイトサクセスも量産するけど、個々の創り手をオーバーナイトコンシュームする点ではTV以上なのではないか。露出コストは低いけど、あそこで「有名性」をキープしようと思ったら、たぶん、好きなもんだけ創ってくらす、どころではなくなる(カテドラルの需要喚起/適応能力は決して甘くない派)。

仮に。マスへのリーチをすべて切って捨てて、「真の理解者」だけで構成された自分のタニマチ・システムを確立できたとする。この場合、会員側が、よりきめ細かく、レスポンスの速いコミュニケーションを求めはじめる。ひらたく言うと、「宮廷道化師シェアリング」や「幇間共有システム」という認識を持つと思う。

否定ばっか並べ立ててやな感じだけども、『だって、売れたとか、そういうのから離れる、っていう話だもの』ということであれば、金の話はアウトオブ眼中にせなならんのではないか。

  「芸人は,米一粒,釘一本もよう作らんくせに,酒が良いの悪いのと言うて,好きな芸をやって一生を送るもんやさかいに,むさぼってはいかん。ねうちは世間がきめてくれる。ただ一生懸命に芸をみがく以外に,世間へのお返しの途はない。また,芸人になった以上,末路哀れは覚悟の前やで」


米団治。時期不詳。入門する桂米朝に向けた言葉。(落語と私 (文春文庫))

「それでも僕はギター一本で街に立つ、そのくらい僕は歌の力を信じてる」って人は居るんで、そういう人が「食っていける世の中」だといいなぁとは思う。