メディア構造問題4点セット

  1. 記者クラブ
  2. クロスオーナーシップ
  3. 再販売価格維持制度
  4. 日本版FCC=独立行政委員会

1)記者クラブ

記者クラブ加盟社が、情報を独占している事。

民主主義とフリープレス(報道の自由)を標榜する国で、記者会見への出席が特定の報道機関にしか認められていないことなど、そもそもあり得ないことだ。したがって、いまさら議論をするのも小っ恥ずかしいのだが、政府の記者会見がオープンになることの意味は大きい。記者会見が大手メディアの既得権益、つまり利権の温床ではなくなり、そうなることで、主要メディアと政治家や政党、主要官僚との間の談合が通用しなくなるからだ。

鳩山由紀夫代表は「マニフェストに入れるまでもないと考えた」とした上で、「民主党政権では記者会見はオープンにする」と、政権を取ってからも記者会見を 開放する方針を貫く意思を明確に公言している。

民主党はすでに2002年から、党が主催する記者会見は、記者クラブに所属する既存の大手マスメディアだけでなく、雑誌、海外メディア、ネットメディア、フリーランスなど、すべての報道関係者に開放している。また、小沢一郎氏以降の代表はいずれも、民主党が政権を取ったときは、政府の記者会見は開放することを公言している。

*「マスコミが無ければネットは情報をとってこれないでしょ?」の問題は、記者クラブの撤廃により減殺される可能性がある。フリージャーナリストの活躍余地が増える事で、「一部週刊誌」の戦闘力も大きく向上する。多くの市場では、質的向上は「自由競争」により達せられる。

2)クロスオーナーシップ

日本では殆どのキー局が新聞資本により設立された。その結果、新聞社とキー局/準キー局は関係が深い。

日本では先進国の多くが規制をしているクロスオーナシップを認め、放送局利権を新聞社に与えてしまっている。そのため、本来であれば免許も不要で権力から自由であるはずの新聞社までが、政府に取り込まれる余地を自ら作ってしまっている。

また地方局は、各キー局の全国ネットワークに参加しないと、中央のニュースが取れない。これは、中央の製作番組を流すだけで放送手数料が入って来るシカケでもある。

3)再販売価格維持制度

新聞社が再販売価格維持制度を通じて政府の保護を受けていることも、新聞社の経営は大いに助けているが、その分日本のジャーナリズムを政治に対して脆弱にしている。先進国でいまだに新聞社を再販制度によって保護している国は、日本くらいのものである。

4)日本版FCC=独立行政委員会

電波免許の付与権限は、総務省が所管している。放送局も同様。

報道機関を兼ねる放送局にとって、政府は監視対象のはずだ。その政府(*総務省*)から免許を頂いていては、ジャーナリズムの機能など最初から果たせるはずがない。
(中略)
そこで、市民の代表たる独立行政委員会を設置し、真に国民の利益に資する形で電波が利用されるよういろいろ工夫しようというわけだ。

一部には、大手新聞社、民放、NHKは、記者クラブに「波取り記者」〜取材活動より電波免許の維持保全活動に重きを置く人材〜を常駐させているとする方もある。

所感

これらの結果、日本のマスコミは、G7諸国の中でも中央のコントロールが効きやすいほう。と思われる。「中央」といっても特にダレとは言い難いのだけど、あえて表現すると「政・官・財・マスコミが、山手線の内側で、毛細血管のような情報連結と利権連結を積み重ねて来た結果」

「一億総終身雇用」であれば、多くの人にとってチャンスは平等だ。良い大学入って優秀な成績で卒業して立派な仕事についてがんばって出世すれば、「奥の院」に入り込めるかもしんない。ただし、もはやそういう時代ではなくなっている*1。非・終身雇用の比率は増えているし、「新興産業」のGDP貢献度も伸びている。てゆうか伸ばさないと保たないんだが、これは伝統的な立派な仕事の「既得権益」とぶつかりがちだ。したがって、「中央」には、構造改革が必要だと思っている。

その文脈で、神保哲生さんや上杉隆さんの主張は、「筋は通って」いると思うのだけど、この構造は、「ちょっとずつ自然に形成されてきたシカケ」である点にも留意したい。ホンネでは「現状が一番居心地がいい」という人の方が多ければ、筋やタテマエは骨抜きにされてゆくものだからだ。

構造改革は「既得権益の剥奪」から始まる。「中央」は、特にダレとは言い難い。その中で立派な仕事について、「ふつうのくらし」を送っている人々は、相当な数に上るだろう。

*1:おそらくは80年代中盤以降