09Q3衆院選雑感
■議席数
2003 | 2005 | 2009 | |
初のマニフェスト 選挙 | 郵政解散 | 政権交代 | |
自民 | 237 | 296 | 119 |
公明 | 34 | 31 | 21 |
保守新党 | 4 | - | - |
民主 | 177 | 113 | 308 |
共産 | 9 | 9 | 9 |
社民 | 6 | 7 | 7 |
その他 | 13 | 24 | 16 |
合計 | 480 | 480 | 480 |
■投票率(小選挙区)
2003 | 2005 | 2009 | |
小選挙区 | 59.86% | 67.51% | 69.28% |
■得票率(小選挙区)
2003 | 2005 | 2009※ | |
自民 | 44% | 48% | 39% |
公明 | 1% | 1% | - |
民主 | 37% | 36% | 47% |
共産 | 8% | 7% | - |
社民 | 3% | 1% | - |
http://mainichi.jp/select/seiji/09shuinsen/news/20090831k0000e010059000c.html
■得票率(小選挙区)と議席構成比(定数)の変遷
自民 | 民主 | |||
得票率 | 議席 構成比 | 得票率 | 議席 構成比 | |
1996 初の小選挙区比例代表並立制 | 39% | 48% | 10% | 10% |
2000 神の国解散 | 41% | 49% | 28% | 26% |
2003 小泉「古い自民党をぶっ潰す」 岡田「マニフェスト」 | 44% | 49% | 37% | 37% |
2005 小泉「郵政解散」 岡田「日本を、あきらめない。」 | 48% | 62% | 36% | 24% |
2009 麻生「責任力」 鳩山「政権交代。国民の生活が第一」 | 39% | 25% | 47% | 64% |
■強いものはより多く、弱いものはより少なく。という傾向。これは1996の第41回衆院選から始まった小選挙区制の特徴とされるが、96〜03にかけて、特に自民の「小選挙区効果」が縮んでいる。長期的には自民の縮退と民主の伸張と定数削減の影響*1って事になるのかもしれないが、2005からまたぐっと「小選挙区効果」が強まっている。コレ多分、ジャパン・オリジナルな選挙戦術が効いてんだと思う。小泉/小沢チルドレンで「小チル戦法」なんちて。刺客とか落下傘とか使い捨てとか、ああいうの。
ほとんど「選挙におけるタンク・デサント*2」のようなものだと思うが、今後も「マニフェスト選挙」の定着と洗練で、政策(国家運営の基本戦略)選択型選挙が深化し、同時併行でテレビや新聞を意識した「劇場型メシウマ選挙」が激化してゆくのなら、この傾向は深まってゆくだろう。
■「高度成長の果実配分」だけが問題だった時代には、とりあえず自民に入れときゃ良かったのだろうが、もはやそういう時代ではない。バブル崩壊から10年ほども経ってから、ようやく政党がマニフェストを掲げるようになった。この点、民主の岡田さんは良い事をしたと思う。でも、これからはちゃんと各党の政策を分析して投票するのです!と言われても、いきなり巧くできるわけもない。果たして巧くできるようになる日が来るんだろうか。
大多数の人はマニフェストなんて読んでられない。テレビや新聞やWebの解説をずざっと舐めてる内に(それだってシンドイ)投票日が来てしまう。また政党の側も「こういう改革が必要です!」とバカ正直に言うと、「高度成長の果実配分」しか気にしていない層から猛反発を食らう。痛みのない手術は無いからだ*3。となると、決定要因のうち、「空気」や「ふいんき」が占める割合が無視できないレベルに達する。
そこでは「改革断行!」とか「行き過ぎた市場原理主義!」とか、なんかそうゆうカンジの「ワンフレーズ・ポリティクス」が良く効くだろう。ならば基本はシンプルだ。テレビや新聞や街頭で「ワンフレーズ」を繰り返し、脳裏に叩き込んでやりゃあいい。後は全選挙区に「受け皿」さえ置いときゃ良い。
もしも選挙期間がもっと長くて、小学校の体育館や地元の「多目的ホール」や〜〜いや地域のCATVって手もある〜〜候補者の立ち会い演説会や公開討論会がなんども開かれるのが「ふつう」になったら、「マニフェスト選挙」はもうちょっと「マシ」になり、「劇場型メシウマ選挙の弊害」はもうちょっと減るかも知れない…少なくとも選挙カーや街頭演説の騒音は減る。
■国会議員を英語でLawmakerと言う。従って教科書的な意味での議院内閣制では、法曹資格、ないしはそれに匹敵する能力が最低限の線だ。いくら「政治主導」や「官僚主導の打破」を呼号したところで、統治の実力で上回ってみせねば、官僚に勝てるものではない。
彼らは国家公務員1種試験をパスし、フルタイムで外郭団体・業界団体・独立行政法人から具体的な民意を収集し、管掌範囲の政策と法案の作成に全ての時間を割き、終身雇用で固く団結している。教科書的な意味では彼らのほうが「政策政党」ないし「Lawmaker」の名に相応しい。
彼らのジバン、すなわち既存業界が、かつてほど稼げず、またかつてと同様の補助金を求めているのが日本の問題のコアだと思うのだけど、いくらポリティカル・アポインティーといったところで、官庁に送り込まれるのが「ワンフレーズ・チルドレン」や「庶民感覚」程度の人材では、洗脳されて帰って来るのがオチだ。
もっとも、このへんはオザワンや岡田さんはよくよく考え抜いてると思うけど、できれば個々の政党が官僚集団に匹敵する「Lawmaker力」「具体的な民意の収集力*4」「政策立案能力」を持ったほうがスッキリはする。
■衆議院の任期は4年だが、任期満了まで保ったのは過去2回に過ぎない。例外は昭和51年(1976)の「ロッキード選挙」と第一回。これを除いて全45回のうち43回が政局に伴う解散。つまり4年と保ってない。繰り返すが、「高度成長の果実配分」だけが問題だった時代には、これでも大した問題はおきない。誰が議員だろうが誰が首相だろうが、Made inJapanの世界シェアが伸びてゆき、貿易黒字が積み上がっているのなら、「日本の首相変わり杉!」と訝しむ紅毛人には「日本には日本のやり方がある事を知るがいい」と言っときゃいい。国家運営の基本戦略を見直す必要なんてない。「わけまえ争い」だけが問題だ。
だがしかし、そんなシカケはとうに前提が崩れている。もしも今後の選挙が、国家運営の基本戦略、すなわち「マニフェスト」を掲げてオレラに「ナニを切り、ナニを残し、ナニを伸ばすか?」の選択を迫るものになってゆくのなら、政権党の都合(総裁の任期)で首相が変わったりするようではマズい。政局で首相が辞任したりするようではマズい。3年や4年で「改革断行!」と「行き過ぎ!」が裏返ってしまうようではマズい。そんな事では、終身雇用にくるまった「官庁←業界団体←既存大企業/既存大組織」の既得権益を切る事などできない*5。国家運営の基本線、すなわち「政権選択選挙の結果」は、より重くなければならない。
よく考えると、議院に選ばれた首相が解散権を持つと言うのは不思議なシカケのようにも思える。議院が自分で選んだ筈の首相に不信任を出せるというのも謎めいたシカケに思える。拒否権つきの大統領のがスッキリしないか。
09Q3現在の民主最大の価値は「自民でない事」に尽きる。マニフェストも「やり方を弄ったバラマキ」が前面に出ている感は否めない。党内成分が自民裸足の総合病院である事を考えると、「もうひとつの自民党」が出来ただけかもしんない。帝国憲法下でも首相はほとんど1年草〜3年草なので、オレラはそうゆう種類のイキモノかもとゆう気分も残る。
■日本の団塊と米国の団塊は、年は一緒だが感覚は大きく異なる。すんごく乱暴に言うと。フォードが大量生産を発明し、全米自動車労組が「人間らしい扱い」を求めて戦い、ルーズベルトが両者を調停するシカケを整備したアメリカは、米国史上最も成功した公共事業、すなわち第二次世界大戦を経て「ブルーカラーのお父さん一人の稼ぎで一家が「中流」に暮らせる社会」「ほとんどの人が労働の対価を娯楽や消費に回すゆとりを持てるという、史上空前の社会」すなわち、工業社会のピークを迎える。
これは50年代を頂点に、60、70、80とじわじわと衰退していったが、ピーク時に成人した人々は、最初は「小型車なんて市場に合わない」、次に「日本が悪い」。と、ダダをこねる老人のように「グッド・オールド・デイズ」を懐かしむばかりで迷走を繰り返した。そうした米国に変化の兆しが出たのは、政治家で言うと1993のクリントン大統領(1946生)からだ。
この世代、すなわち米国の団塊は、「下ってゆく感覚」しか持っていない。物心ついてから10代までがグッド・オールド・デイズ。あとは下る一方。全てをソ連や日本のせいにしたがる「黄金時代の大人たち」を横目に、「オレらは彼らより貧しい暮らししかできないんだろーなー」と思って来たところがある。「米国初のベビーブーマー大統領」は、第二次世界大戦後としては2番目に長い好景気をもたらし、インフレなき経済成長を達成した。別にその全てがクリントンのおかげというわけではないのだけど*6、アメリカ経済の中心を重化学工業からIT・金融に重点を移す!と政策に掲げたのは、彼が最初だ。
日本の団塊は、「昇ってゆく感覚」しか知らない。試みに1947生まれ(例)の年表を作ってみると、4歳でサンフランシスコ講和〜17で東京五輪〜プラザ合意で円が1ドル240円から120円に急騰*7したのは38で、バブル崩壊は46だ。一般論としては「輝かしい昭和」が懐かしい事だろう。だがそれは彼らの父達がアメリカによく学び、かれらより格差の少ない社会をつくるべく、心を砕いてきた結果だ。
今や液晶TVの世界シェアトップはサムスンで、華為電子はモトローラを買収する勢いだ。ヒュンダイとて日本車追撃を諦めてはいない。その後ろには上海汽車が居り、タタも居る。加工貿易なら原材料を抑え、国際的には安い賃金でも「中流の仲間入り」を目指して懸命に働く人々の方が強い。パラダイス鎖国だかガラパゴスだか知らないが、帝国絶対防衛圏のおかげで、オレラはそれを実感できずに居る。
*1:〜1996:500、2000〜:480
*2:歩兵を装甲車ではなく、戦車の上に乗せて突撃する第二次大戦時のソ連の戦法。ふつう欧州戦線では歩兵は装甲車に乗ってるものなんだけど、むき身だから平均寿命2〜3週間とゆう事実上のカミカゼ。鎧なんか飾りです。
*3:それは医療予算や教育予算であるかもしれないし、公共公益事業であるかもしれないし、世界一のスパコン開発計画であるかもしれない。
*4:その点、社保庁がとりあってくれないんです助けて下さい!という電話から「消えた年金問題」を調べ上げた長妻議員はスゲェ。
*6:レーガン政権時代の企業減税と歳出カットの実りを刈り取ったに過ぎないという見方もある。
*7:それを乗り切って見せた当時の日本の製造業はバケモノだ!