緊急地震速報を受信したけりゃ、地デジをぜんぶ買い替えろって事ですか?

総務省は4日、地上デジタル放送の緊急地震速報がアナログ放送より約2秒遅れる問題で、1遅延時間を技術的に0.5秒にまで短縮できるものの、2そのためには地デジ対応テレビやチューナーなど受信機の仕様の一部を変更する必要があると発表した。同省はテレビなどの仕様を見直すための制度変更に取り組む構えだが、2すでに普及している受信機の改善策をどうするかが問題になりそうだ

1)2秒が0.5秒になったんだから、ちょースゲェ。この部分はたぶんブラジル版(仮称SBTVD)の改善成果だろう。SBTVDは、日本のメディアでは南米方式、または、ベースが日本のISDBだからって事で、単に「日本方式」と表記される事が多い。しかしながら、重要な相違点が2つある
1-a.)

SBTVD (Sistema Brasileiro de Televis〓o Digital) 、別名SBTVD-T (Sistema Brasileiro de Televis〓o Digital Terrestre) 、ISDB-TB はブラジルで採用されている方式で、ISDB-Tを基礎としつつも動画圧縮技術にはH.264を用いる等の改良が加えられた。今後ISDB-Tに変わり南米各国での採用を目指しており、他国への提案もSBTVDを元に行われる見通しである。2009年4月にペルー(2010年3月放送開始予定)、同年8月にアルゼンチンでの採用が決定した。

SBTVDは最後発だけあってH.264だが、日本の地デジの映像圧縮はMPEG-2。これはDVDと同じものだが、割り当てる電波帯域が十分なら、画質が悪いという事はないし、規格策定時期を考えると十分に合理的な選択だ。しかしながら、日本の地デジは、事前の想定より伝送効率が悪く、ハイビジョン放送でビットレート不足が起きている。とはいえ「ブロックノイズ探しが大好き病」とかでなければ、そう気になるものでもないだろう。実際、ゴーストなど、アナログ特有のノイズは全滅するわけだし、そのへんは実際キレイだ。
たんに「デジタルテレビとしてはほぼ間違いなく世界最低の画質」というだけだ*1
1-b.)

(*日本の*)ISDB-Tはマルチキャリアである事に加えて時間インタリーブが採用されておりDVB-Tよりも受信性能は良いと言われるが、SBTVD-Tに劣り遅延が最も長い

頭書引用部の『技術的に0.5秒にまで短縮できる』は、このSBTVD改造の成果(少なくともそのフィードバック)と思われる。

2)もしもSBTVDの改善成果を取り入れた結果、すでに普及している受信機の改造や買い替えが問題になるのであれば、SBTVDを「日本方式」と言うのは、まぎらわしいと言うべきだろう。そりゃ別に台湾新幹線を「新幹線」呼ばわりしたってどうという事もないが、リオデジャネイロに持ってってもチューニングすりゃ映るってワケではないのだし。

3)

  • 頭書記事より。

 地デジでの速報の遅れは08年6月に発生した岩手・宮城内陸地震で明るみに出た震源に近い宮城県栗原市中心部では、アナログ放送では強い揺れの直前か、ほぼ同時に速報が伝わったとみられるが、地デジはアナログ放送より約2秒遅れたため間に合わなかった。

マテこらw。それ以前に気付く奴はなかったのか?
もともと日本は、NHK技研の「アナログ・ハイビジョン」にコダワリがつよく、NHKと旧郵政官僚(総務省)は、90年代の半ばになっても「コレからのテレビはデジタルだ!アナログテレビは電波を立ち退け!空き地を携帯電話や衛星放送に使うのだ!」という世界の趨勢に逆らっていた。バンザイ突撃と言っていい。
当時の「デジタルテレビ」に比して、「アナログ・ハイビジョン」がほとんど「芸術の領域」に達していた事は確かだが、日本の地デジ移行が、総じてケツカッチンのチョッパヤでオセオせ!、というカンジになっているのは、この時の「決断の遅れ」が大きい*2

4)

  • 頭書記事より。

 地デジは画像と音声のデータを圧縮して送り、受信機で復元するために遅れが出る。

嘘だ。たかがMPEG-2デコードで2秒もかかるワケが無い。いや嘘というか、大雑把だ。

(*日本の*)ISDB-Tはマルチキャリアである事に加えて時間インタリーブが採用されておりDVB-Tよりも受信性能は良いと言われるが、SBTVD-Tに劣り遅延が最も長い。

おそらくこれは、電波使用権の時間貸しみたいなものだ。ISDB-Tは1個ぶんの割り当てチャンネルをさらに13個の帯域に小分け(セグメント)して使うが、そうしたセグメント分割とは別に、2ないし0.5秒単位で帯域使用権を交代させているのだろう。

なお、改善後の0.5秒というのは、ほぼMPEG-2の固定GOPサイズ、ひらたく言うと、映像を復元する際の最小単位に等しい。つまり、これ以上の短縮は不可能とゆう事であり、繰り返しになるけどカイゼンした人ちょースゲェ。ただし、H.264のGOPサイズは可変なので、さらに縮められる可能性がある。南米諸国がハイビジョン放送をやらないなら、そう難しい事でもないだろう。

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5000円チューナーと同じ日付でこういうニュースが並ぶというのは、もちろん偶然とはいえ、なかなか香ばしいことだなぁ。もしかして「ナゲコミ」だろうか?

「ナゲコミ」:事前に記者クラブの幹事さんに予約すると、クラブ備え付けの「投げ込みボックス」にリリースや資料などを投函できるクラブがある。そうすっとクラブの方で各社に配ってくれたりするという便利なシカケ。記者会見やるほどではないニュースや、やっても誰も来るまいてな細かいニュースを、記者のみなさんに御知らせしたい人が使う。当然、幹事になんらかのツテがなければ予約はとれない。兜倶楽部の投げ込み棚にピザのチラシが入ってても、一般論としては困るだろう。
この記事がソレかどうかは分からないし、総務省記者クラブのルールが具体的にどうなってるかも自分は知らないけれど、朝刊に自分たちの不利益になる記事が乗ってると感じた人達が、業界団体等を通じて総務省に申し入れをして、「カウンター」を夕刊に間に合うよう「投げ込む」のは、そう困難な話ではない。よーな気がした。今。

*1:趣味的にはソレでいいと思うんだけどね無料放送は。特に「日本のテレビ」は「価値あるコンテンツ」がタダなダケでなく、録画してディスク書き出しまでできるのだし

*2:「ヒキギワ学会」ひらいちゃうぞ。