文科党

私の記憶が確かなら、文科省は以前、「パブコメは専門家の議論で見落とした論点がないかチェックするもの。数は問題ぢゃない」と言ってたかと思う。著作権絡みで。昨今は仕分け人に対して意見募集をやって「1万件も反対意見が集まった!」とか言ってるらしい。ちとダブルスタンダード臭い。それに、一介の行政機構が後者のような動きをかます事は、統治権干犯*1の色彩も帯びる。

…結論の良し悪しは知らん。どちらかと言うと、世界一のスパコンもかっちょいいロケットも、好物ではあるのだけれど、、、それ以前に、こういう挙動は、この国の統治機構として、適当ではない気がぎゅんぎゅんします。

仮に。中央省庁は、タテマエでは行政機構の一部局だが、同時に、特定生業集団の利害を代表する「事実上の政党」でもある。
とする。これで上記の言動に筋が通る。善悪は知らん。国民の得失も知らん。単に、首尾が一環する。シンプルな挙動法則ができる。
…そこで、脳内の「文科省」を「文科党」に置き換えて、「支持組織・支持母体・支部組織はどのへんか」と考えてみた。なんというか、共産党で言うと支持学生の組織は民青で、社会人の方はナントカ労組とカントカ労組で、みたいな。以下分類と件数はWikipediaの各所から拾った。

  • 文科党
    • 特殊法人(3)
    • 特殊会社(0)
    • 独立行政法人(23)    ←中央省庁で最多
    • 大学共同利用機関法人(4法人17施設)
    • 公立大学法人(65大学)  ←↓以下文科党固有種
    • 国立大学法人(87大学)
    • 私立大学(725大学)
      • 内訳は、4年制(570)、短大(134)、大学院大(21)。70年代初頭に私学の急激な膨張と経営難が顕在化し、S45年度から経常費に対する国庫補助(私学助成)が始まった。
    • ※他にも義務教育関連の学校組織とかデカイと思うけど、キリがないのでこのへんで。

これらは、「文科の予算で食べている」。ということになる。「学問の価値」とか「研究の意義」とか、その手の「馬鹿には見えない服」はいったん脇に寄せておく。

天下りの椅子」が「票の代わり」。見返りは「予算と政策」。

////
前記事で、「東郷提督を担ぐ帝国海軍艦隊派などと酷い事を書いたが、「世界一でなければ日本は滅びる」とか、「建艦計画を中止すると日本が滅びる」とか、キモチはわかるし筋もわかるが、、、、国庫厳しいおりに、そんなんで気勢を上げてるだけではただの我田引水に見えてしまう。そこで「ジブンのコトバ」が出てこないようでは、そこで憤激してしまうようでは、、、、「マスゴミ呼ばわりにブチ切れる大手の記者」と同じに見えてしまう。たのむからやめてくれ。

自民が健在なら、麻生サンや森サンなどの「文教族」に頼む事もできただろう。あるいは省庁編成の枠を超えて飛び回る「施設族」を呼んできて、「ほらこんなに老朽化してるんですよ見てください!」などとやる事もできただろう。彼らが長期政権を維持できたのは、一重に高度成長のおかげだ。伸びてゆく税収の中で、「再配分の手腕」が最も優れていたためだ。だがしかし「古き良き自民党の時代」は終わった。「美しいお題目」は、かつてほどには効かない。「なんだかよくわからないけど専門家の結論だから」でオカネを出してくれる納税者は、もう居ない。物理学っぽく言うと、無い袖は振れない。

「学問の価値」とか「研究の意義」とか、Lv.1マヌーサを唱えても、もうオカネは降ってこない。より高度な「予算のぶんどりかた」を身につけなければ、今居る場所にもとどまれない。

////

 そのときクリントンは、哀しみと侮蔑がないまぜになった視線をブラウンに向けてから、こう答えた。
 「ジェリー、君は連邦政府から助成金がたくさん受けられた70年代に知事をやっていた。あのころはいい時代だった。だが、私が知事になったのは、助成金がほとんどゼロにされた80年代だったんだよ」


 アーカンソー州知事時代の予算削減を、元カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンに非難された際に。[1994 D.ハルバースタム 『幻想の超大国』 P266]

レーガン・ブッシュ*4の良し悪しは知らん。打倒ソ連はホドホドにして州政府に突っ込むべきだったという意見はもちろんあり得る。だが、それはあちらサンの選挙民の選択だ。09Q4の在日日本人にとって役立ちそうな教訓は、国家財政がちょっとアレな事が共通しているって事だと思う。具体的な結論は脇に置く。重要なのは、「ジェリー・メンタリティ」では、おそらく打開策は見出せないという事だ。

////

議院内閣制はタテマエ。ホンネは官僚内閣制。だとする。

  1. 「中央省庁は政党だ!」と考える。
  2. 各党は、生業分野別の、ニッチでシャープな専門政党。
  3. 日本政府は、それらの「連立政権」と考える。

こう考えると「事務次官会議」って「中央省庁連立内閣」だよなぁ…と思っていたのだけど、民主が真っ先につぶしたのが、まさにコレだった。どゎがしかし、各ミニ政党とその支持組織はまだ健在と思われる。

「官庁-業界団体-族議員」のユニットを、鉄のトライアングルとか言うようだが、それはべつに農水や経産や国交や厚労に限った話ではない。それは、この国の「生業」を網の目のように覆う「構造問題」と考えたほうがよい気がする。

////

  • 「二重政府」の下では、生業分野別の専門政党が、ニッチでシャープな民意を集約できた。
  • 全体的な摺り合わせは「事務次官会議」が調整していた。
  • これらは概ね「合理的(or 生業的)民意の整理機構」といえる。
  • 「古き良き自民党」は、族議員を介して、再配分を上手いこと調整していた。
  • こちらは概ね「情緒的(or 地域的)民意の整理機構」といえる。
  • 全体としては、再配分は生業単位・業界単位・組織単位で(それも極めて上手く)行われており、その意味では「セルラー社民主義」といえる*5

////
んで、、、人間のメンタリティは、構造に左右される部分が最もデカイ。
俺ぁ学者さんや研究者さんたちには、真っ先に「ジェリー・メンタリティ」から離脱して欲しいと思ってる。一応これでも「ユニバーシティ」てのは、大局観や多面的なものの見方をはぐくむトコだと思ってるんで。

でもやっぱちょっと、、、艦隊派に見えてしまうんだ。

*1:テクノクラート・コントロール(文官統制)と衆愚政治とどっちがマシかって話はあるにせよ、だ。

*2:日本私立学校振興・共済事業団

*3:放送大学

*4:Wでなくて、パパの方

*5:野口悠紀雄さんの『1940年体制』では「垣根で仕切られた社会主義」と呼んでいる。