ワシも韓国企業を過小評価している日本人が多いと常々感じている

もちろん、“製品の質”という意味では、日本の家電製品は、どれをとっても海外のほとんどのメーカーに対して高い競争力を持っているしかし、実際の販売シェアとなると話は別だ。今さらこのような事を書くのは、意外にも韓国企業を過小評価している日本人が多いと常々感じているからだ。

80年代の米国企業が失ったのは米国市場だったので「日本の脅威」は速やかに浸透した。00年代の日本企業が失ったのも米国市場なので「サムスン・ビジオの脅威」は浸透していない。北米市場では、彼らは上手い事やっている。

  • 100112-讀賣朝刊-『日本製TV、米で苦戦〜技術の優位性薄れる』より
サムスン 26.9
ソニー 14.3
ビジオ 10.7
パナソ 8.5
LG 8.3
シャープ 5.5
日本小計 28.3
韓台小計 45.9

本田雅一さんの記事は上図より情報が新しく、その後の09Q4のソニーの逆襲が成果を挙げ『昨年後半のシェアを一昨年並の25%前後まで回復させた』委細が述べられている*1
が、ここでは09/Q1-Q3の苦しい時期に、サムスン・ビジオがシェアを伸ばしているのに対し、ソニー・シャープはぐぐっと落ち込んでいる事を重視したい
なにがどうでもまずシェアだ。シェアさえ獲れば技術などいくらでも付いて来る。そもそもサムスンは、2005の時点でトップだったのだ。2007まではソニーと拮抗していたが、2008に入ってソニーを突き放している。08Q4金融危機の当初、「サムスンの主要部品は全部日本製。円高で部品調達できなくなって沈む!」という見解を見た覚えがあるが、そうはならなかったようだ。
彼らはIMF危機を経験している。その中で、「08Q4金融危機でもどんと来い体質」を造り上げていたのかもしれない。

以下讀賣より抜粋。

  • サムスンは、これまで日本勢が得意としてきた高付加価値製品でも優位に立っている。
    • 昨年、米市場でLEDをバックライトに使ったテレビで8割以上のシェアを確保
    • インターネット接続機能付きテレビでも75%を押さえ、
  • 3D対応でも、今春からパナソニックと並び業界の先陣を切る構え。
  • サムスンの李健莿(イ・ゴンヒ)前会長
    • 「我々は(日本よりも)基礎技術やデザインで勝っている」
  • 日本勢の「技術力が高い」とのイメージも米国では薄れつつある。
    • サムスンが09年に大々的に行ったLEDテレビの販売キャンペーンが成功。日本メーカーは出遅れた。
    • 「(日本勢などの従来型液晶テレビ*2)は)古い技術で、最新技術はサムスンのLEDという印象が定着した」(ソニー幹部)という。

これに対するソニーの逆襲策は、頭書本田さんの記事に詳しい。
当初ソニーは以下のような販売政策を取った。

240Hz表示によるモーションフローの効果を訴求したのだが、“古いLCD TV”と“新しいLED TV”という図式の中で価格も安くないとなると、負けてしまうのも致し方ない。

が、たぶんコレ意味ない。画質の違いがわかる「美味しんぼ」は少数派だ。その後の経験を活かした策も述べられているが、いささか細かい。

  • LED!だから画質が良い!LEDテレビはサムスン

ゲンミツには此は嘘であるかも知れない。だがしかし、マスが求めているのは「山岡士郎のうんちく」より「1ドルあたりのハイテク"感"」だろう。お客様が買っているのはモノぢゃない。「良いもんが買えて嬉しい」という「オモイデ」を買っているのだ。技術や機能や品質は、その「オモイデ作り」を邪魔しない為にあるべきものだ。

◇◇◇

ガラパラ鎖言われてカチンと来るのは自然な反応だ。そうならないように「超ガラパゴス」を研究するのは良い事だ。だがしかし、ガラパラ化した産業形態は、それしか生き残る道がないからそーなった。とも考えられる。例えば;

  1. 日本の製品は世界一ィイイ!が効くのが日本市場しかない。
  2. 諸外国はコストパフォーマンスを最重視する。
    • 純粋機械性能だけでなく、
    • 1ドルあたりの「ハイテク"感"

などが考えられる。特に『1ドルあたりの「ハイテク"感"」』の背景には「R&D投資効率の低下」があると思われるが、こうした現象をテクノザウルスは知覚できない。「日本の発展は技術のおかげ!」「科学技術立国!」「ハイテクハイテク日本はやっぱりモノツクリ教」などのパラダイムに脳を侵されると、そうなる。「うごくもの」しか見えない恐竜のようなものだ。

仮に。LEDバックライトがまだ未熟な技術だったとする。

  • この場合テクノザウルスは、「妥協なき画質の追求」で240Hz表示を開発し、「美味しんぼ」に「うんちく」を垂れる。
  • その一方で、「莫迦でもわかるLED」で「ハイテク"感"」を演出する存在があるならば、喰われる。

たぶん、80年代米国のBIG3やテレビ製造会社も「“製品の質”という意味では」十分な競争力を持っていたのだろう。だが「“製品の質”という意味での競争力」にも「限界効用逓減の法則」が効くのではないだろうか。「日本」がのし上がったのは、その過信を突いたからではなかっただろうか。

いずれにせよ、ガラパラ鎖言われてカチンと来てるダケでは先は無い。先達に当たるBIG3が、海外市場で国際競争力を発揮した事はなかった。彼らには「ずっと人口が増え続ける市場」があった。「人口が減り続ける市場」しか持たない存在は、より急速に衰退するだろう。

*1:讀賣の図では過去にソニーが25%のシェアを獲った事はなさそうだが、米国ではこの手の数字は民間シンクタンクしかもって居らず、イロイロな立場の数字をそれぞれ結構なお値段で調達してくる必要がある。国内にはJEITAの数字があるが、アレには非加盟社の数字は載らないし、そもそもあれは工場出荷台数だ。それで市場シェアを推測するのは大本営発表を鵜呑みにする新聞報国会(記者クラブの前身)のようなものだろう。

*2:冷陰極管バックライトを指すと思われる。