若者の味覚は常に変調を来している。
辛いもの、苦いものを敬遠する若者が増えているという。すし店では、わさび抜きを注文する若者が目立ち、眠気覚ましのガムも刺激を抑えた商品が発売されている。子どものころから味覚や嗜好(しこう)があまり変わらず、「大人の味」が苦手な若者が増えているようだ。
わさびについて
下線1)回転寿司と24時間営業。両店とも「粉を練ったわさび」と思われる。海原雄山なら「ふはははは。粉練りわさびをありがたがるなど、味覚の程度が知れるわぁッ!!」とかなんとか言うとこだろう*1。そこまで言わんでも、アレを忌避するのは、むしろ「本物志向の山岡士郎」とか「味覚が鋭敏な栗田ゆう子」と解釈する余地が残る。
辛いものを好まないという東京都練馬区のアルバイト男性(22)は「おすしは大好きだが、わさびを付けると味が変わってしまう。小さいころから慣れた味がいいし、2わさびがない方が魚そのものを味わえると思う」。男性はうどんや牛丼に唐辛子を使わず、おでんも「からしをつけない方が、だしの味がよく分かる」が持論だ。
下線2)また少なくとも寿司のわさびは、胡椒同様の「腐臭消し」だ。歴史的には衛生上の理由で始まったものが「味覚文化に昇華」するのは稀ではない*2。これが冷凍技術の発達とともに変化してゆく可能性はあり得る*3。仮にこの変化が起きるとすれば、それは「三つ子の魂百までもエフェクト」により、数世代を掛けてグラデーション状に進行すると思われる。
※類例「アニオタ」:10Q1現在50代の「おたく第一世代」は、「アニメなんか見てんの?子供っぽ〜い!」という社会的圧力に晒されて来た世代と思われる。40,30とこの圧力は徐々に減殺してゆき、昨今の20代は、それほどでもないだろう。別に「黒子様に踏まれたい!」とか言ってても子供っぽいとは思わないけど別の意味でちょっとヒクので該当者わ空気を読んでくがさいおながいします(半泣き)。
眠気覚ましのガム
キャドバリー・ジャパン(東京都)が昨年10月に発売した「クロレッツアイス ライト」はメントール成分を抑え、「キツくないのが ちょうどいい」が宣伝コピー。刺激が強すぎるという声を受けて商品開発したという。同社マーケティング本部の内山元春ブランドマネジャーは「クロレッツの発売25年で初めての要望といってよく、時代とともに消費者の嗜好に変化が生じていることを実感した」と
1)25年前=1985頃は、「現世利益型」というか、「霊験あらたか食品」というか、「特定の機能を持った食品」の黎明期のようだ。
- 眠気覚まし系
- サプリメント系
2)併行して「激辛ブーム」も起きている。
「寿司屋のわさび」も、「この時期の若者」にあわせて調整された可能性がある。工場での配合から厨房での塗布量まで。
マーケティング会社「味香り戦略研究所」
素材
- | 40代 | 20代 |
苦みの強い第3のビールや辛いカレーを好む男性 | 23.8% | 17.5% |
あっさりしたマイルドな味を好む人 | 39.3% | 45.6% |
味付け
同研究所は「若い世代は従来より、味覚が未成熟な状態といえるかもしれない。ゲームやインターネットをしながらの『ながら飲食』の傾向もあり、味への関心が薄らいでいるのではないか」と
この分析は、『わさびがない方が魚そのものを味わえる』『からしをつけない方が、だしの味がよく分かる』などのキモチと整合しない*4。むしろ、バブル期に20代だった連中の好みが突発的に歪んでんぢゃねぇだろうか。「彼らの味付け」を若いモンが拒んでるのだとすれば;
1980年代以降、韓国料理やエスニック料理が浸透し、「激辛ブーム」などが起こる以前は、せいぜい薬味や香り付けに一味唐辛子や日本特有の七味唐辛子が少量使われる程度であったし、市販のカレーでさえ現在ほど辛口の商品が多くはなかった。今も年配の層には唐辛子の辛味を苦手とする人は多い。
それは、伝統的な味覚への回帰と見るべきかもしれない。
…そこでひとつ、「スルメ味のガム」というのはどうすか?どうすか?
……マヨネーズ付きだよ?(どこが伝統か)。
*1:基本的に「おろしわさび」の風味は揮発成分が多いので作り置きができない。といって「おろしたて」は風味がきつくてマズいと言う。さらにお高い。回転寿司や24時間営業店ではペイしにくいだろう。
*2:類似例として「フランス料理のソース」がある。
*3:例えば、"新鮮な素材を活かした" ヌーベル・キュイジーヌ
*4:ましてゲームやインターネットは飛躍的でありすぎる。『ながら飲食』は、テレビと同時に発生しているものだし、その気なら新聞や雑誌や文庫本まで遡れる筈だ。