地上と星
- | 地上 | 衛星 |
見物料 | タダ | タダ |
録画料 | タダ | タダ |
放送内容 | 番組 | 番組 |
→→→
- | 地上 | 衛星 |
見物料 | タダ | タダ |
録画料 | タダ | タイムシフト無料 プレイスシフト有料 |
放送内容 | 「出涸らし」と 「番宣」と 「最低限の報道」 |
「面白い番組」と 「CM」と 「深い報道」 |
NHKを除けば、地上も星も全部タダ。かかるのはハード代のみ。衛星には有料放送もあるが、たいがいはタダ録画できる。
これは「番組の創り手」からみると、なかなか厳しいものがあるように思う。制作費の水源池が「宣伝費モノカルチュア」だからだ。企業広告費が縮退し、それでなくてもネットその他に分散してくなら、他にも「収入の道」を求めるべきだろう。
例えば「放送」そのものを「番組を売る為の宣伝」、いわば「週刊少年ジャンプ」っぽくとらえると、「収入の道」は以下に分散する。
- 放送権販売(TV局に放送する権利を売る) ←「他誌掲載権」
- プレイスシフト(STBからのディスク書き出し) ←「単行本」
- 光学ディスク販売(BD/DVD) ←「豪華特装版」
- オンライン販売(iTSほか) ←「まんが文庫」
ほんとうの著作利権というのは、これらを統合的に管理して、芸人に出来高を山分けするオヤブン、つまり興業師だ。
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仮に。キー局がそこを目指す場合。全国ネットを解消し、衛星受信機に手を入れれば済む。
まず全国ネットの見直しだが、地方局は、キー局から番組放送権を買っていない。キー局が電波使用権を買っている。企業広告費という水源が枯れれば、この用水路*1に水は来ない。既に随分前から深夜アニメは全国ネットが少ないが、あれは製作委員会が全国ネットの電波代を払えないためだ。地方局の通販番組も増えているが、あれはショバ代(デンパ免許の借り賃)出してもペイするからだ。
- 参考図:デンパキチ
次に、DVD売るための宣伝放送なら、県単位で料金がかかる非効率なデンパ回路より、衛星ドンで一発デンパのが安い。「人目に触れる機会を増やす」にゃタイムシフトは不可欠だが、ディスク書き出しまでタダというのは儲けに響く。そこで、受信機に、焼き増し有料化装置をつける。 ← コピワンにクレカ決済を被せたキー局合同STB。ここに全国の視聴者に「移民」をしていただくのが良いだろう。キー局や製作委員会は、地方局のパパやママではない。
ただし、これが伸びてゆく為には、「NHKの事業仕分け」が不可欠だろう。放送免許を地デジ総合・地デジ教育に限るなどして、受信料を1/3程度まで下げる事が必要と思う。あるいは、キー局合同STBを「NHKフリー」にする事でも競争条件はフェアになる。それを放送法が禁じてなければ、だが。いずれにせよ、ワンセグケータイの一つも持ってりゃ集金人がやって来るという現状は、あんましフェアぢゃない。これは「現在の番組の質」とは別次元の話だ。
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視聴者の「録画利権」は、ベータマックス訴訟で確立している気がするが;
- 1)あれは米国の判例であり、原則として国内では効力を持たない。
- 2)同判決の結果、米国では「無料放送の出涸らし化」が加速した。
- 衛星/CATVのセットトップボックスは、内蔵HDへの録画(タイムシフト)は許すが、光学ディスクへの書き出し(プレイスシフト)は許さない。
- 「価値ある番組」は、視聴有償、取っておきたきゃ販売ディスク。タダ見は出涸らし・試食のみ。という構造が確立している。
- 薄利多売を狙うため、DVD類は戦略的な価格決定が為される。ぶっちゃけ安い。
- この構造は、米国の家電メーカーが日本に撃滅されても健在。
国内では、1)の点が無批判なまま人口に膾炙し、その一方で、2)の状況が起きていない。高度成長〜バブル崩壊までは、伸びゆく企業広告費が放送産業を支えたが、もはやそうではない。企業広告費は縮退し、それでなくてもネットその他に分散してゆく。現在の収益構造のまま日本の家電メーカーが大崩れに崩れた場合、我々はサムスンのTVで米国の出涸らしを見て暮らすハメになりかねない。
こういうと何だが、視聴者は所詮「タダで見たい。もっと見たい。いいぢゃないか減るもんぢゃ無し」だ。オレらは決して芸人のパパやママではないが、その一方で「タダ録権」は天賦人権でも知る権利でも無い。どちらかと言うと「既得利権」だ。少なくとも「面白い娯楽番組」や「深い教養番組」、そして「インテリジェントな報道」には、対価をはずむべきだろう。芸人もまた、オレラのパパやママではない。