メモ:族議員と派閥の効用。

ちょー乱暴に言うと日本政府のフィードバック系統は(農政分野の場合)

  • [農家←→市区町村←→県庁←→農水省←→他省庁/内閣]

「旧い自民党」には、これを複線化する補助系統があった。

  • [農家←→中間団体←→地元のセンセイ←→派閥のナカマ←→農水省/他省庁]

つまり「族議員と派閥」は、政府のフィードバック系統を補完する「情報の毛細血管」だった。ように思える。

例えば「農水族議員」は;

  • 平素から、地元を這いずり回って要望を集め(ドブイタ)
  • 農水省のしかるべき部署とピンポイントで接続し(電話、陳情紹介)、
  • 適切なカウンターパートが農水に無ければ、派閥のナカマ*1を頼って、しかるべき省庁のしかるべき部署とアドホックに回路を開く。

このシカケは、霞ヶ関/永田町による「現場の心情把握」を確実にし、逆に「現場に対する政策の根回し」を可能にし、日本国全体として、政策の妥当性・実効性を洗練させてゆく効果があった。筈だ*2

ひらたくいうと、10Q2口蹄疫対策のような局面では、「複数の鈴木宗男タイプ」が、粉骨砕身、八面六臂、阿吽の呼吸で神出鬼没、ソレゾレがメイメイに一騎当千の働きをしただろう(伝統芸としての「個別の11人」)。

もちろん。「族議員/派閥ライン」の弊害は大きい。

  • 「議院内閣制がタテマエ化し、大臣なんざ誰でも一緒」になる。
  • 政府として全体の統制(なかんずく出費のコントロール)が効かなくなる*3
  • なんかしくじっても誰も責任をとらない(とらせるシカケ(aka.選挙)が機能しない)。

オザワンはこれを「陳情の一本化・党本部での集約」などで、[党員←→党組織←→民主議員←→民主党本部←→内閣]という「教科書的な政党政治」に転換している途上。に、見える。

そういう意味では。10Q2口蹄疫は、なかなかやなタイミング。に、見える。毛細血管を失った統治構造の動きが鈍いのはあたりまえだ*4。別の毛細血管を張り巡らせるまでの間、誰かがカラダを張る必要がある。これまでの大臣のような振る舞い(外遊スケジュールとか)をしている場合ではない*5

仮に。「官僚内閣制」と「族議員」は表裏一体だったとする。「霞ヶ関のリクツ」と「地元のキモチ」が、争闘する二匹の龍のやうに絡み合いながら、全体としてはバランスが取れている、、、というシカケだったとする*6

その弊害を糺すために「政治主導」を唱えるならば、口蹄疫対策に於いてそれ以上の成果を挙げてみせる必要がある、、、ここはひとつ、オザワンが側近と共に宮崎入りし、「ドブイタ民意収集作戦」を展開してみてはどうだろうか。

*1:国交族や厚労族など。基本的に「派閥」は「総合病院」だった。

*2:終結果は、官僚・族議員・票田のパワーバランスに依るので、ソレゾレの自意識では100%の満足はない。

*3:ありていに言えば、官僚・族議員・票田の三位一体構造が、内閣の方針に服さない、という、日本国憲法の想定外の事態にハドメがない。

*4:だから初動が遅いと〜科学的・疫学的にその評価が正しいか否かは別として、〜政治的には「遅い」という「実感」が生まれる。「地元のセンセイ」から「地元」に「いや農水の課長が薬の手配に三日かかるって言うんだよ!」みたいな電話が頻繁にかかってくるなら、地元側も安心するだけでなく、自らその「補完」に動く事ができる。例えば「三日なら手持ちで凌げます。三日目必着でお願いします!」など。もちろんその動きも農水の耳に入る。英語で言う「keep in touch」とかゆう奴だ。組織やシカケは巨大化すればするほど、この「タッチ」が失われてゆく。「納得度」と言い換えてもいいかもしんない。

*5:資質だけで言えば、危機管理は亀井さんが最強だと思う

*6:強敵と書いて「とも」と読む。的な。