『優秀な専門家は、正確な予測ではなく、政治家に指示された数字を捏造するのです』

さるところで見かけたTweet。あたしゃ基本リードオンリーな上に発言者の方を存じ上げない事、内容的にリンク貼るとちとご迷惑が掛かりかねない事から、ダマテンで引用させていただきます。ごめんなさい。

2010年05月26日

見てる:NHKニュースに続いてクローズアップ現代。KSAT、 WASEDA-SAT、UNITEC-1通信途絶。大館能代空港3億7千万円の赤字。ろくなニュースがない。

大館能代空港は70万人の利用を見込んでいたが、実際は11万人。 秋田新幹線秋田空港能代市を結ぶ高速道路の開通で、大館能代空港が使われなかった。そりゃあそうだよなあ。

@◎◎◎ というか、田中角栄理論が今まで続いてきたと言うべきでしょうね。「地方にインフラを作れば都市との格差は解消される。そのカネは都市から奪い返せばいい」と。ようやく都市が「いくらカネを奪っても地方は豊かになんかならないよ」と反撃を始めた。

手許ではコレ、「角栄用水」と呼んでいる。

■事実上の統治構造(超乱暴)


角栄用水は、この図では72体制の中に含まれる。
これは、高度経済成長が拡げた都市部と農村部の格差是正の為に、70年代初頭から確立していったもの。だと思う。あくまでも個人的な妄想と言うか、乱暴な見立て。

■「地方」の政治的変遷(超乱暴)

民共産は戦前から農村部を重要地盤のひとつに持っていたが、角栄用水の整備により、自民に地盤を奪われていった。

  • 明治前期:地租改正以来の豪農民権」
  • 明治後期:窮乏小作人社共化
  • おしん少女期:大正デモクラシー
  • 40年代:挙国一致体制に統合(食管制は小作人の福音
  • 50年代:戦後ふたたび社共の地盤化*1
  • 60年代:所得倍増中は、人材・資源の供給源(金の卵、炭坑、出稼ぎ、東大法学部、など
  • 70年代:角栄さんが「東京のオカネを地方に流す用水路」を引いて回る。→ ジミンのジバン化。
    • ※官僚は、70年代終盤より「官民格差是正」が推進される(この頃まで、「清く貧しくモーレツに」働いていた)
    • ※一方で社共は都市部で勢力を伸ばしてゆく → 革新自治体
  • 80年代:日本経済絶頂期 → 昼はお役所週末田んぼ、耕作放棄減反補助金、道が通れば売却益。農家栄えて農業ほろぶ。
  • 90年代:バブル崩壊失われた十年、開始 → ジミンは、角栄用水の水を絞れないカラダになっている
    • ※官僚も天下り前提で就職するカンジになっている。 ← まず「行政改革」に着手。

 以上は、80年代をピークとする、「工業化による発展プロセス」の一環であるように思われる*2

仮に。同様の発展経過を辿った米国のピークが50年代だったとすれば、2010現在の日本は80年代初頭の米国と似たカンジだろうな、とも思う*3…まぁ鳩兄ぃはレーガンさんてより、カーターさんてカンジだが。

それはともかく。

@◎◎◎ 日本全国が「都市かぶれ」している感じです。都市型生活を志向しても、地方の産業基盤とは合わない。都会とは違う、地方独自の豊かさを構築できずにいることに気付きはしたがいま公共事業をやめたら明日失業してしまう

ホントは角栄さんも「この用水を地方独自の豊かさを創る種銭に!」て思ってたんぢゃないかとは思うんだけども。
もちろん、地方だけがアレってワケぢゃない。都内にも「ジミンのジバン」は存在する。「普通の人々」はどこにでも居る。

2010年05月27日

実家で食事をしたら、昨日の赤字空港の話になった。「どうして優秀な専門家が計算してるのにあんな失敗をするの?」と聞かれた。はい、その答えは知っています。優秀な専門家は、正確な予測ではなく、政治家に指示された数字を捏造するのです。

大館能代空港の建設が認められるには、年間70万人の需要が必要。 実際の予測は10万人。この場合、担当者は「70万人になる」というありとあらゆる都合のいい資料を集め、都合の悪い資料を無視する。優秀な詐欺師だ。

僕が知っている実例その1。地下鉄大江戸線環状部を計画したとき、 東京と交通局の担当者はこう予測した。需要は1日70万人。しかし建設費は1兆円を要するので、需要が100万人いなければペイしない。そこで、予測需要を100万人と発表した。

石原東京都知事は、大江戸線開通後に「70万人しか乗らない。役人はどういう予測をしていたのか」と憤った。はい、役人は70万人と予測しておりました。それを100万人と発表させたのは当時の知事です。

もちろん、都知事票を集めねばなれない。大江戸環状線はまだいい。都市博とかやってた日にゃあ、もう…。
しかし石原さんも、着任したときに事前予測から見直しかけなかったんだろうか。そこまで思いつかなかったのか、思いつかないように丸め込まれたのか…うわもしかして東京五輪の予測経済効果とかw。

@××× Wikipediaによると、2008年時点で80万人弱まで増えてきたようですね。長期的に100万人に届くといいですが、まあ70万人という予測の方が手堅かったですね。

実例その2.実は僕自身が、ある数字を捏造する仕事をしていました。何の数字か、は本気で情報公開請求して記事にするジャーナリストの方がいましたら、詳しくお教えします。あまりにも当事者過ぎて、中途半端に言えないので。

その数字は、石原知事が得意気にあちこちで話していたもの。しかし、その数字を正確に求めることは、技術的に不可能。毎年改善しています、と言っていたが、絶対値自体が測定誤差範囲内だった。

イヤもうそれだけでなんか、ナウシカ系な気がすんだけど、それがナニカはひとまず置く。

実際の算出方法は、こう。総務部から僕のところへ、「今年の数字はこれで発表します」というメモが来る。そこで僕は、Excelで内訳を作る。誤差含みで上がっている実データを合計して照合し、辻褄が合うように数字を変 えて、最後はゴールシーク機能で下1桁まで合わせる。

だいたいお役所では「総務」とか「企画調整」とつくところが一番えらい。ラスボスの側近だから。都道府県だと、旧自治省とか、そのへんからの出向な事も多いかもしんない。この場合はラスボスも下手に逆らえないって大阪府知事が言ってたような。

ええ、これが都民に嘘をつく行為だってことはわかっていましたよ。 実際、職場に聞こえるように「こんなんで給料がもらえるんだから公務員ってのはお気楽だ」と罵りながら作業していましたが、みんな苦笑いするだけだった。 直属の上司だけは嫌な顔をしていたけど。

役所用語で、都合のいい数字を捏造することを「鉛筆をなめる」と言う。日常的に使う用語だ。一応言っておくが、役人は「自分自身が得をするために」鉛筆をなめることはない。だって、個人的に得することなんて何もないんだもの得をしてる誰かが主犯で、役人は忠実な下僕だ。これを公僕と言う。

まぁ、そうは言っても忠実に勤め上げれば、倒産はないし、イイ感じの退職金+イイ感じの再就職先も見つかるワケだし、ソレが無ければ罵るくらいぢゃ済まないし、「みんな」も「苦笑いするだけ」では居ないように思う。別に此方をどうこう言いたいワケではない。むしろよくぞ吐き出されたものだと思う。

それよりだいじな事は。知事は票を集めねばなれないし、議員さんも票を集めねばなれないって事の方だ。得をしてる誰かは、中央省庁からの出向者かもしれないが、逆らえば角栄用水の水が止まる。東京都なら止められてもどうという事もないように思えるが、前代未聞の大赤字をこさえた美濃部都政の穴を埋めたのは、角栄用水だったんぢゃないだろうか。

結局のところ。こども手当や公教育無償化めあてに票を投じるのも、公共事業の受注を狙って票を投じるのも、利権目当てという意味では違いがない。ナニカの規制阻止をめあてに票を投じるのも、その成立をめあてに票を投じるのも、利得目当てという意味では違いがない。ダレだって自分の暮らしがいちばんだいじ。デモクラシーとはそうゆうものだ。
それはそれで良いが、そればかりでもナニだっていうか。なんかこう、最大多数の最大幸福、とか。天下万民の為に、とかw。どこかの誰かの笑顔のために、とかw。少しばかりは、気概や理想があるほうがいい。

Twitterは、大学の同級とか、タマタマ居酒屋で隣り合わせたとかでなくても、いろんな世間の話がダダ漏れになっている。それダケでも、結構な価値があるように思う。

*1:cf.1960:池田勇人君の故議員淺沼稻次郎君に対する追悼演説 - Wikisource

*2:なお、同区間の「官僚の変遷」は、「我が国の成熟化と官僚制の機能変化  務台俊介 : アゴラ」に手堅くまとめられている(スゴかった。鼻血でた。)

*3:単にデイビッド・ハルバースタムさんが好きとか、そうゆう事ではありますん