メモ:10Q3-第3次男女共同参画基本計画答申。『女性に対するあらゆる暴力の根絶』の第一印象
2010年07月23日に公表された『第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)』の、第2部第9分野『女性に対するあらゆる暴力の根絶』を読んでみた。
原文 | コメント |
---|---|
第2部 重点分野 第9分野
女性に対する あらゆる暴力の根絶 ( PDF:192KB ) |
男女協同参画を云うなら、
男性に対する暴力
も等価に扱うべき。 喫緊の課題として、女性の保護がより重要ならば、その旨を、以下の冒頭部で説明すべきだろう。 |
I これまでの施策の効果と、「女性に対するあらゆる暴力の根絶」が十分に進まなかった 理由 |
まず「女性に対する暴力」の
定義
が先
。でなければ議論が散漫になり、実のある成果は得がたい。 「あらゆる」で想起される範囲は、個人差があり得る。例えば、「♪芸の為なら女房も泣かす。それがどーした文句があるか」と歌うのも、文脈や夫婦関係に依っては暴力と見なし得るが、そうでないケースもあり得る。 冒頭で「どの範囲の”暴力”にフォーカスするか」を示さないのはマヌーサであり、メダパニである。ありていに云えば。 「きもーい!「あらゆる」を使っていいのは中二までだよねー!」 |
1配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、「配偶者暴力防止法」という。)を始めとする法制度、行政側の取組や体制整備等は一定程度進展しているが、
1
女性に対する暴力そのものに対する社会全般の認識は必ずしも向上しておらず、様々な形態による被害の発生も総じて高水準にある
。 特に、性犯罪・性暴力については、誰にも相談できなかった事例や低年齢時の被害も多く、また、メディアにおける有害情報の氾濫等情報化の進展による新たな課題も発生している。 |
[2]「
従って規制法規が必要である
」との結論へ誘導する書き方に見える。 [1] そもそもなにを以て「社会の認識不十分」と見なすのか 、判断の根拠を示すべきである。これは冒頭に「女性に対する暴力の定義」を整理分類して示す中で行える。 個人的には「あるんだろうな」とは思うが、「読み手の認識」に頼る書き方は、「社会の認識不十分」と見なす姿勢と矛盾する。 |
2女性に対するあらゆる暴力の根絶が十分に進まなかった理由は以下のとおりである。
|
|
II 今後の目標
|
|
女性に対する暴力は、重大な人権侵害であり、その回復を図ることは国の責務であるとともに、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題である。 特に、インターネットや携帯電話の普及により、女性に対する暴力は多様化してきている状況にあり 、こうした課題に対しては新たな視点から迅速かつ効果的に対応していくことが求められる。また、子ども、高齢者、障害者、外国人等はそれぞれ異なる背景事情や影響を有しており、被害者の支援に当たり様々な困難を伴うものとなっていることにも十分配慮し、暴力の形態や被害者の属性等に応じてきめ細かく対応する視点が不可欠となっている。 こうした状況を踏まえ、女性に対する暴力を根絶するため、社会的認識の徹底等根絶のための基盤整備を行うとともに、配偶者からの暴力、性犯罪等暴力の形態に応じた幅広い取組を総合的に推進する。 |
特筆するなら具体的論拠を示すべきである 。これも、冒頭に「女性に対する暴力の定義」を整理分類して示さなかった事の弊害である。 |
III 施策の基本的方向と具体的な取組 | |
1女性に対する暴力の予防と根絶のための基盤づくり | |
(1)施策の基本的方向 女性に対する暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であり、 特に、一部メディアに氾濫する性・暴力表現は、男女が平等でお互いの尊厳を重んじ対等な関係づくりを進める男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものである 。これらも含めて、暴 力を容認しない社会風土を醸成するための啓発を強力に推進する。 また、被害者が相談しやすい体制づくりを通じて、被害の潜在化を防止するとともに、官民連携の促進等により被害者の心身の回復等効果的な被害者支援を進める。 |
「女性に対する暴力の定義」がないまま「一部メディアに氾濫する性・暴力表現」を指弾するのは不適当である。 |
(2)具体的な取組
|
⑨つまり現状「女性に対する暴力の実態が的確に把握できるデータ」は 不十分 である。根拠不十分なまま、「社会の認識不十分」と見なし、「一部メディアに氾濫する性・暴力表現」を指弾するのは不適当である。 ⑤その状態で、「 その表現が悪い 」と誰が、どのように、決めてゆけるのか? |
2配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進 | |
(1)施策の基本的方向 配偶者からの暴力の被害者に対する支援等に当たっては、中核としての役割を担う都道府県と最も身近な行政主体である市町村が、適切な役割分担と相互連携の下に、 各種の取組を効果的に実施する。 被害者支援については、相談体制の充実を図るとともに、都道府県及び市町村の関係機関の連携を核としつつ、民間団体を含めた広範な関係機関の参加と連携協力の下、被害者の保護から自立支援に至る各段階にわたり、被害者の置かれた状況や地 域の実情に応じた切れ目のない支援を行う。 また、若年層に対する予防啓発の重点的実施など、配偶者暴力防止法の運用状況も踏まえ、制度・運用の両面について取組の充実・強化を図る。 |
|
(2)具体的な取組
|
|
3性犯罪への対策の推進 | |
(1)施策の基本的方向 性犯罪被害者が、被害を訴えることを躊躇せずに必要な相談を受けられるような相談体制を整備するとともに、被害者の心身回復のための被害直後及び中長期の支援、被 害者のプライバシーの保護及び二次被害の防止について万全を期する。 近親者等親密な関係にある者や指導的立場にある者による性犯罪等の発生を防止するための取組を強化するとともに、関係法令の見直し、効果的な再犯防止策等につ いて検討する。 |
|
(2)具体的な取組
|
⑥ 強姦の件数は減っている 。現行の強姦罪は夫婦間・恋人間レイプを扱えないので問題がないとは思わないが、性交同意年齢の引き上げや、構成要件の見直しをすれば、単純に強姦の件数は増える。 あと非親告罪化を、夫婦間・恋人間レイプにも適用する場合、どのように発生を認知するか、困難な検討が必要になる。 |
4子どもに対する性暴力の根絶に向けた対策の推進 | |
(1) 施策の基本的方向 身近な者からの被害が特に潜在化・深刻化しやすいこと等を踏まえ、子どもに対する性暴力被害を効果的に防止する対策を重点的に講ずるとともに、被害に遭った子どもの一生に拭いがたい影響を与えないよう、子どもが必要な相談・支援を受けられる環境 整備を進める。 児童ポルノ及び児童買春の根絶に向けて、インターネットや携帯電話の普及等に対応し、関係法令の見直しの検討を含めた有効な対策を講ずる。 |
|
(2)具体的な取組
|
児童の性的被害に関しては、 まず「子供達自身が」、「性教育を受けていない状態で」、「性情報に接触している」現状 を問題視すべきである。したがって ⑥ メディアリテラシーの向上 や、④ コミュニケーション規制 だけでは十分でない。SEXとはどのようなものか、またどのようにあるべきか。如何にして自己の尊厳を護るか、の教育が不可欠と考える。こう大上段に書くと難解だが、世間の大多数のオトナは「ちゃんと」している(少なくとも自意識の上では)。それを如何に伝承してゆくかで社会的合意を形成してゆく姿勢を欠く場合、対策は「臭いものにフタ式」に偏り、各種の表現・コミュニケーションへの規制が、過剰〜例えば子供の「知る権利」、ひいては「健全な成長」を阻害するもの〜になり得る。単に『表現の自由を十分尊重』するだけでは不足と考える。 ③現実の被害者が居ない 非実在青少年 を、児童ポルノと同列に含めるのは不適当である。もとより自主規制を国が促進する事は、過剰な行政裁量に十分な注意を要する。単に『表現の自由を十分尊重』するだけでは不足と考える。 |
5売買春への対策の推進 | |
(1) 施策の基本的方向 性を商品化し、人間の尊厳を傷つける売買春の根絶に向けて、関係法令の厳正な運用と取締りの強化を行うとともに、 売買春の被害からの女性の保護 、心身の回復の支援や社会復帰支援のための取組、若年層等への啓発活動を促進する。 |
男性、男子児童も含めて考えべきである。 |
(2)具体的な取組
|
①同上。「売る男性」「買う男女」も視野に収める必要がある。「数の大小の問題」なら、論拠を提示しておくべきである。「だって男なら」なら「男女共同参画社会」の名にもとる。 ②周旋・斡旋による事なく「おこづかいを得て云々」な 成人 の扱い〜「啓発」するのか、「自己実現の自由」に含めるのか。その判断基準を、法令でゲンミツに定義するのか、法令は理念規定にとどめるか。後者の場合、行政裁量にゆだねる事になるが、広範な行政裁量は「別件逮捕の苗床」である。『十分に注意』する必要がある。 |
6人身取引対策の推進 | |
(1) 施策の基本的方向 被害者に対して深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらす人身取引について、男女共同参画の視点から、その防止・撲滅と被害者支援対策等について効果的な取組を促進 する。 |
|
(2)具体的な取組 平成 21 年 12月に策定された「人身取引対策行動計画2009」に基づき、被害の発生状況の把握・分析、被害者の発見・保護、多言語ホットラインの運用・運用支援の検討、関係行政機関及び民間支援団体等との連携による支援の充実、被害者のニーズ に合わせた支援の実施、広報啓発、 男性被害者の保護施策の検討等 の取組を推進する。 |
ここで初めて「男性被害者」への言及が出ている。「男女共同参画社会」の理念に照らして、不当である。 |
7セクシュアル・ハラスメント防止対策の推進 |
セクシュアル・ハラスメントは、パワー・ハラスメント(なんらかの力関係〜腕力・職権・数など〜で、上に立つ者の奢り)の一類型でもある 。 『ディスクロージャー - 1993マイケル・クライトン』は、女性の年下上司による男性の年上部下に対するセクシュアル・ハラスメントを題材にしている。 ぶっちゃけ大阪のおばちゃんとかにひとり紛れ込んだ際の「汚された感」はトラウマになる向きも...いや泣いてないヨ?もっと大変な目に遭う女性もあるだろうし。あたしは元気です。 |
(1) 施策の基本的方向 雇用の場におけるセクシュアル・ハラスメントについて、男女雇用機会均等法に基づき企業に対する指導等を徹底するとともに、教育・研究・医療・社会福祉施設やスポーツ分野等においても、被害の実態を把握し、効果的な被害防止対策を講ずる。 セクシュアル・ハラスメントの行為者に対して厳正に対処し、再発防止策を講じるととも に、被害者の精神的ケアを強化する。 |
従って、最も効果的なセクハラ対策は、管理職や指導的立場にある人員の男女同数化(バーチャル(事実上の)・アファーマティブ・アクション)を先行させ、雁行的にパワハラ対策を推進する事と考える。 |
(2)具体的な取組
|
上に同じ |
8メディアにおける性・暴力表現への対応 |
|
(1)施策の基本的方向 女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性に対する人権侵害となるものもある 。 こうした性・暴力表現については、インターネットの普及等を通じて発信主体が社会一般に拡大していることに加え、パソコンゲーム等バーチャルな分野においても、国際的に重大な懸念が表明されるコンテンツの流通が現実問題となっていることから、表現の自由を十分尊重した上で有効な対策を講じる。 |
男性
をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、
男性
に対する人権侵害となるものもある。
第一節は「女性」ではなく |
(2)具体的な取組
|
① 「男性」 も救済対象に加えべきである。 ④性・暴力表現に自主規制を要請するには、 なんらかの根拠があった方が望ましい 。「バーチャルな分野」に自粛を求めるなら、尚更である。 ②しかしながら、 現時点では非バーチャルな表現についてすら、十分な根拠がない 。 ③仮に、ブロッキング等の閲覧防止策が、 こうした形 を取るならば、社会は「なにが禁止なのかわからないまま自粛」する事になる。 この場合、「男女共同参画社会」に向けて、「社会全般の認識」が向上する事は、期待し難い。現状を放置する理由はない。現状は、それがどのようなものであれ常に改善されてゆくべきものだ。しかしもし仮に。『社会全般の認識が向上していない』からと規制を恃みにするならば、「あらゆる暴力」は、別の形をとるだろう。 |