豊島園とエル・ドラドとギャラクシアン3

2011/09/09、東京都が豊島園を買収し、災害時に帰宅難民を収容する防災公園にする意向との話が報道されたが、豊島園を運営する西武側の姿勢が判然としない。報道各社でバラけている。

14:33 読売 複数の都幹部によると~西武側も協議に応じる意向という。
18:59 時事 西武~「現在、閉園する予定はなく、都からは何も聞いていない
19:59 産経 西武~「都から詳細な内容は何も聞いておらず、現状でとしまえんを売却する予定はない
19:41 共同 都は、事業が認可されれば、としまえん側と用地取得の交渉に入りたい考え。
20:36 毎日 西武グループとはまだ接触しておらず、近く交渉に入る方針という。
21:11 日経 西武~「東京都から詳細は何も聞いていない。としまえんを売却する予定はなく~
22:03 朝日 都幹部によると、西武側も都と協議していく意向という

時系列でアタマとシリに位置する読売朝日が「西武側も協議に応じる意向」あとはみな「寝耳に水系」になっている。どっちなんだソレわw。「閉園前提の買収計画を相手と接触する前に新聞で公表」という時点で地味にナゾめいて見えるが、「広報レベルには話が来ていないが、上層部とは水面下で接触している」とか、「新聞を使って世間に観測気球を上げてみた」とか、そんなような印象を受けた。

「豊島園」というのは東京都下の遊園地で、西武線沿線なら小学校時代に一度はつれてかれた事があると思う。正直、イマドキならディズニーだろという部分もあるし、防災公園というのは成程と思わないではないのだが、あそこにはちょっと気になるブツがある。

エル・ドラドだ。文明史的には100年前に製作された世界最古級の回転木馬として機械遺産にもなっているが、この御方は欧州の巡回遊園地・米国のコニーアイランド・そして日本の豊島園と渡り歩いてきた「近代遊園地の生き証人様」でもあらせられる。

欧州の巡回遊園地は、旅芸人の興行一座を母体に、気球・観覧車・模型機関車・回転木馬などの「ロンドン万博の切り身」、小人プロレス・巨人のホネ・人魚の剥製など、大航海時代に由来する「ミュージアムケレン味」なぞを揃えた「B級エンタのプラットフォーム」。

娯楽産業というのは、発生時点の文明(テクノロジーの領域)と文化生活習慣病の領域)が融合する特異点でもある。ガキどもに文明の凄みをチラつかせ、次の時代のエネルギーに使おうとするインキュベイターのようなものだ。ゲーセンやファミコンがソフト屋や半導体産業の道にガキどもを飲み込む「クチ」だったとすれば、iPhoneスマホに触れる昨今の子供たちは、なんかインフォーグやらいうものに育ってゆくのだろう。

またコニーアイランドというのは「20世紀型都市化モデルの始祖鳥」の構成要素を成している。

百貨店++++郊外住宅++++遊園地
Macy’s++++郊外住宅++++コニーアイランド
阪急百貨店++++文化住宅++++宝塚歌劇団

コニーアイランドに蝟集していた遊園地やアトラクションは、多くがなくなってしまったが、ニューヨーク市は、一部の施設を市の歴史的建造物として存続させている。20世紀初頭の「新移民」が最初に目にした「アメリカ」でもあるからだ。アイリッシュ・イタリア系・ドイツ系・ロシア系などの非・WASPな新移民の中には、「ここには巡回遊園地が根を下ろすほどの土地と人口があるのか!」と期待に胸をふくらませた人もあったかも知れない。

思うに。日本の百貨店屋さんの理想がメイシーズやバーニーズNYだったなら、日本の遊園地屋さんの目標は、この「コニーアイランド」だった筈だ。1960年代の終わりに廃棄寸前のエル・ドラドを買い取った豊島園は、天竺からありがたいお経を貰ってきた三蔵法師みてぇな気分だったのぢゃないかと思う。そうでなきゃこうまで大切にはしないだろう。

趣味的には。「ギャラクシアン3延命作戦の大先達」とかな気がしないではないw。

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