変るテレビ局のビジネス

 テレビ局の収益悪化は一時的な現象というよりも、エンタテイメントの多様化、ネットメディアの伸長、多チャンネル化などによる長期的なトレンドとされている。このため各局は、番組制作費の圧縮や放映・広告以外のビジネスの拡大に益々力を入れている。

テレビ局サイド

認定放送持ち株会社制度*1の下で、ゆるやかに放送と製作の分離が進む可能性がある。この制度は、本質的には地方局の救済を意図した制度と説明され、単独株主が33%以上の株式を保有できない事になっている。基本的には電波利権の互助会だ。

しかし、広告ベースの無料放送は、相対的な地位の低下が不可避。

  1. CATVの加入世帯数は07Q1時点で2000万世帯を超えており*2、地デジ問題で一定の普及率向上が見込める。
  2. 衛星放送や光送信サービスの普及も伸びている。衛星についてはスカパーなどが、地デジ問題をビッグチャンスと捉えており、光回線についてはFLETSが盛んに地デジ再送信を宣伝している。地域WiMaxで山間・離島部のブロードバンド格差が緩和すれば、PSP,PS3/DS,Wii向け配信やアクトビラ/Gyaoなども伸張が見込める。
  3. ケータイも高速化してゆく。MobileWiMax, 次世代PHS, LTE
  4. さらにホワイトスペースが解放される可能性もなしとしない。

このように、コンテンツの露出機会(ウィンドウ)が多重化/重層化してゆけば、版権を一元管理し、「どのウィンドウにどの順番で露出していくのが一番儲かるか?」を考える存在、つまり「著作権メジャー」が必要になる。彼らは、『ほうぼうに、何度も売れるのが良い番組』と考え、制作現場にもそれを求めるだろう*3

それがどこに成立するかは予想し難いが、認定放送持ち株会社の司令塔は、いずれこうした「著作権メジャー」を志向する可能性が高い。「キー局資本」は、電波免許に価値が有る限り、とことんそれを利用し続け、それが「基幹放送」とは呼べなくなった段階で、番組製作*4/制作*5機能を集約して「放送事業」から離脱するのが理想だろう*6

...いやその前に、おいしいとこハリウッドに買われちゃいそうな気がしないでもない。

*1:放送持株会社 - Wikipedia

*2:地上波再送信のみのCATVを加えると2800万世帯になり(URI)、08Q3のブロードバンド世帯普及率(URI)に匹敵する。

*3:そのことの是非はひとまず置くが、だれだって「作り手」にそれなりの対価が渡らない形でサクヒンを見るのは、居心地が悪い筈だとは思ってる

*4:著作権保有と管理

*5:実際に手を動かして作る事

*6:総務省さんさようなら。文科省さんこんにちわ?