ユーザーライブラリとはなんぞや。

通信に使わない端末の所有者は全体の52.6%に達し、うち4割が別の目的に使っていた。複数回答でその利用法を尋ねたところ、「(写真やメールを)思い出・コレクションとして残す」が17%と最多

0)もともとは「リサイクルの検証」が目的の模様だが、やや望ましくない傾向が見られる。
  • ×:過去1年間に処分経験が「ある」人は、16%。 《参考》昨年と比べると、14ポイント低下。
  • ×:処分端末の平均保有期間は、約3年2ヶ月。 《参考》年々、保有期間は長期化の傾向。
  • △:処分方法としては、「店で引き取ってもらった」が最も高い。 《参考》昨年と大きな差は見られない。
1)通信機器として使っていない携帯電話・PHSはありますか?
ある52.6% ない47.4%
  • 過去調査と比べると保有率が大幅に伸び、今回初めて半数を超えた。
  • 保有端末の平均保有期間は、約4年3ヶ月。
2)ある(52.6%)のうち、取り置き端末を、「使用してる」人は、40.1%。「使用していない」人が59.9%。
「使用していない」59.9% 「使用してる」40.1%
2-a).「使用していない」人(59.9%)の内訳。

こちらの層は縮小傾向にある。

なんとなく 32.0%
個人情報の漏れが心配 25.6%
処分方法がわからない 13.4%
リサイクルの為にショップに行くの面倒 10.0%
その他 1.4%
2-b).「使用してる」人(40.1%)の内訳。

こちらの層は増加傾向にある。

コレクション、思い出として保存 17.6%
時計(アラーム等)として活用 12.4%
電話帳(住所録)として活用 6.8%
子供の遊び道具 6.3%
ICカードの入替により予備機として 6.1%
デジカメとして活用 4.9%
データのバックアップ 4.3%
音楽プレイヤーとして 2.9%
ゲーム機として 2.7%
テレビとして 2.0%
スケジュール帳(予定表)として 1.7%
メモ帳として 1.3%
ToDoリスト(備忘録)として 0.2%
その他 1.3%

「前の端末で出来る事は前の端末で」が増えれば、「明日の実入り」はそのぶん減ってゆくし、使われていない機能を抱えた端末が市中に増えてゆくなら、それは「資源の適正配分が成されている」とは言えない。これは、リサイクルどころか自由市場の観点からも問題がある。

ユーザーライブラリを制する者が全てを制する。

1)、2)とも、ハードウェアによる陳腐化戦法の先にあるのは、市場飽和である事を示している。ハードとの「抱き合わせ」による多機能化、高性能化を追い、次々に新型を出していけば、市場は当然飽和する。「ユーザー・エクスペリエンス」が下がるからだ。

対するにAppleは、

  • ハードウェアアップデートのスパンを長く取っている。
  • 機能追加の主軸はソフトウェアアップデートに置いている。これはユーザーとの対話結果を反映させる速度に於いて、ハードウェアアップデートに勝る。
  • そこでユーザーの信頼を勝ち得た後に、その上を流れる「ユーザーライブラリ」を収益化しようとしている。

「マンーマシンインタフェイスの改善」や、「できることの追加」は、ユーザー・エクスペリエンスの一要素ではあるが、プライマリ・マターでは全然ない。最大の「ユーザーエクスペリエン酢(おもてなし)」とは、「自分が好きなもの」「自分がこさえたデータ」に、ずっとそのままの形でアクセスできる事、だ*1。毎年二回のモデルチェンジを行う陳腐化戦法は、この点で消費者の信頼を積み重ねて来たと言えるだろうか?

さまざまなユーザーライブラリ
  • 自己確認系
    • (写真やメールの)思い出・コレクション
  • サクヒン系
    • 音楽
    • ゲーム
    • 映画
    • TV
  • PIM系
    • 電話帳(住所録)
    • スケジュール帳(予定表)
    • メモ帳
    • ToDoリスト(備忘録)
  • その他
    • データのバックアップ
    • ICカードの入替により予備機として

一応、「(写真やメールの)思い出・コレクション」を「自己確認系」としたが、上記は全て「自分が自分である事を自分で確認する」役に立つ*2。これらにアクセスする際の「マンーマシンインタフェイスの改善」が激しければ激しい程、「思い出」も「使い勝手」も「ユーザー・エクスペリエンス」も損なわれてゆく。この点、iPhoneが可能な限り「存在感を消す」ようにデザインされている事、そしておそらく永い事そのままであろう事は、示唆的だ。

*1:最大の成功例はMicrosoft Officeだろう。

*2:例えばケータイで撮った写真をカレンダーで時系列に並べ、住所録やメモとも連動できるなら、それは生涯使い続けるに価する。