ユーザーライブラリとはなんぞや。
通信に使わない端末の所有者は全体の52.6%に達し、うち4割が別の目的に使っていた。複数回答でその利用法を尋ねたところ、「(写真やメールを)思い出・コレクションとして残す」が17%と最多
- 平成20年度携帯電話・PHS におけるリサイクルの取り組み状況について|プレスリリース|社団法人 電気通信事業者協会(TCA)
- 添付資料1:携帯電話・PHS 利用者約2000 人に対するアンケート調査
0)もともとは「リサイクルの検証」が目的の模様だが、やや望ましくない傾向が見られる。
2)ある(52.6%)のうち、取り置き端末を、「使用してる」人は、40.1%。「使用していない」人が59.9%。
「使用していない」59.9% | 「使用してる」40.1% |
2-a).「使用していない」人(59.9%)の内訳。
こちらの層は縮小傾向にある。
なんとなく | 32.0% |
個人情報の漏れが心配 | 25.6% |
処分方法がわからない | 13.4% |
リサイクルの為にショップに行くの面倒 | 10.0% |
その他 | 1.4% |
2-b).「使用してる」人(40.1%)の内訳。
こちらの層は増加傾向にある。
コレクション、思い出として保存 | 17.6% |
時計(アラーム等)として活用 | 12.4% |
電話帳(住所録)として活用 | 6.8% |
子供の遊び道具 | 6.3% |
ICカードの入替により予備機として | 6.1% |
デジカメとして活用 | 4.9% |
データのバックアップ | 4.3% |
音楽プレイヤーとして | 2.9% |
ゲーム機として | 2.7% |
テレビとして | 2.0% |
スケジュール帳(予定表)として | 1.7% |
メモ帳として | 1.3% |
ToDoリスト(備忘録)として | 0.2% |
その他 | 1.3% |
「前の端末で出来る事は前の端末で」が増えれば、「明日の実入り」はそのぶん減ってゆくし、使われていない機能を抱えた端末が市中に増えてゆくなら、それは「資源の適正配分が成されている」とは言えない。これは、リサイクルどころか自由市場の観点からも問題がある。
ユーザーライブラリを制する者が全てを制する。
1)、2)とも、ハードウェアによる陳腐化戦法の先にあるのは、市場飽和である事を示している。ハードとの「抱き合わせ」による多機能化、高性能化を追い、次々に新型を出していけば、市場は当然飽和する。「ユーザー・エクスペリエンス」が下がるからだ。
対するにAppleは、
- ハードウェアアップデートのスパンを長く取っている。
- 機能追加の主軸はソフトウェアアップデートに置いている。これはユーザーとの対話結果を反映させる速度に於いて、ハードウェアアップデートに勝る。
- そこでユーザーの信頼を勝ち得た後に、その上を流れる「ユーザーライブラリ」を収益化しようとしている。
「マンーマシンインタフェイスの改善」や、「できることの追加」は、ユーザー・エクスペリエンスの一要素ではあるが、プライマリ・マターでは全然ない。最大の「ユーザーエクスペリエン酢(おもてなし)」とは、「自分が好きなもの」「自分がこさえたデータ」に、ずっとそのままの形でアクセスできる事、だ*1。毎年二回のモデルチェンジを行う陳腐化戦法は、この点で消費者の信頼を積み重ねて来たと言えるだろうか?
さまざまなユーザーライブラリ
- 自己確認系
- (写真やメールの)思い出・コレクション
- サクヒン系
- 音楽
- ゲーム
- 映画
- TV
- PIM系
- 電話帳(住所録)
- スケジュール帳(予定表)
- メモ帳
- ToDoリスト(備忘録)
- その他
- データのバックアップ
- ICカードの入替により予備機として
一応、「(写真やメールの)思い出・コレクション」を「自己確認系」としたが、上記は全て「自分が自分である事を自分で確認する」役に立つ*2。これらにアクセスする際の「マンーマシンインタフェイスの改善」が激しければ激しい程、「思い出」も「使い勝手」も「ユーザー・エクスペリエンス」も損なわれてゆく。この点、iPhoneが可能な限り「存在感を消す」ようにデザインされている事、そしておそらく永い事そのままであろう事は、示唆的だ。
*1:最大の成功例はMicrosoft Officeだろう。
*2:例えばケータイで撮った写真をカレンダーで時系列に並べ、住所録やメモとも連動できるなら、それは生涯使い続けるに価する。