ナウなヤングは萌えている。

2008年12月18日16時54分
秋田県羽後町の農協が「萌(も)え系」と呼ばれる美少女のイラストを米袋に印刷したら、1カ月で2年分の米が売れた。国の重要無形民俗文化財、西(にし)馬音(も)内(ない)盆踊りで知られる山あいのまちに、関連商品を求めて若者たちが足を運ぶようになった。
JAうごの配送センターには、ピンク色の米袋がうずたかく積まれている。稲穂を手に市女笠(いちめがさ)の美少女のイラストがほほえむ。
「こんなに売れるとは……」。新米のあきたこまちの袋詰めに追われる高橋精一さん(53)は汗をぬぐった。
大きな瞳が特徴の「萌えキャラ」で知られるイラストレータ西又葵さんがデザインを手がけた。販売前から話題になり、1日5件程度のJAうごのホームページへのアクセスは1日5千件に達した。
9月22日にネット限定の販売を始めると注文が殺到。配送が追いつかず1週間で受け付けを一時停止した。10月末までの注文は2500件、30トン。購入者のほとんどが県外の20〜30代男性だ。12月になっても1日に10〜20件は注文がある。
自身のブログでPRしていた西又さんも「ここまで受け入れられるとは予想していなかった」と驚いている。
仕掛け人は、羽後町出身で現在は東京の出版社で働く山内貴範さん(23)。子どものころから漫画やアニメの登場人物を描くのが好きで、自称「おたく」だ。
山に囲まれた豪雪地帯にある古里は少子高齢化が進み、この10年で人口が1割以上減り約1万8千人に。西馬音内盆踊り以外、観光客はほとんど見かけない帰省した昨春父の知り合いで北都銀行西馬音内支店長だった佐々木章さん「美少女イラストを活用できませんか」と相談した。
佐々木さんは商店街の夏祭りを思い出した。不景気で運営資金が集まらず、06年を最後に中止が決まった。それでも有志の店主らが新たな祭りを計画していた。「ヒントになるかも」と山内さんを商店街の会合に連れていった。
「盆踊りの美少女イラストコンテストを開きませんか」。山内さんは自作イラストを掲げ、訴えた「萌え?」「美少女?」。店主らは戸惑ったが、「盆踊りが前面に出るなら」と受け入れた。
こうして昨年7月、夏祭りでコンテストが催された。その後、住民の提案で景勝地や特産品などとイラストを組み合わせたポスターが16種類作られた。これが米袋につながった
今年10月には地元の酒店が西又さんの作品を使った焼酎を発売した。新郎新婦が馬そりで峠を越える冬の行事「花嫁道中」が題材だ。長崎県から買いに来る人もいて限定千本が3週間で売り切れた。
萌え米」の発売前、「中身は捨てられてしまうのでは」とささやかれていた。しかし、JAには「おいしかった」「初めて炊飯器を買った」といった感想がメールで寄せられている。
県外ナンバーの車も町でよく見られるようになった。ポスターに描かれた観光地を回る人たちだ。「想像と違って礼儀正しく明るい青年たちだ」と住民の評判も上々だ。土産物屋「ながや」の佐藤良友店長(54)は「町が少しずつ元気になってきた」と言う。
山内さんは大学時代、全国を放浪した。各地のそばの名店より西馬音内そばがおいしく世界遺産岐阜県白川郷の合掌造り集落を見ても、「故郷の茅葺(かや・ぶ)きも負けていない」と思えた
「美少女だけでは注目されなかったと思う。インパクトのある『資源』が町にあったからこそできた」(田中祐也)

要約

インパクトのある資源所在地
仲介者(メディア)
一部の都市住民
地元に良いものがある事は知っている。 左記出身都市部住民
東京の出版社に勤務する「おたく」
西馬音内そばはおいしい。故郷の茅葺きも負けてない
ナウなヤングは萌えている。
三次産品リテラシーが無い。
→萌える漢の魂合体←
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一次産品リテラシーが無い。
「想像と違って礼儀正しく明るい青年たちだ」
「町が少しずつ元気になってきた」
リテラシーの融合←
購入者のほとんどが県外の20〜30代男性
「おいしかった」
「初めて炊飯器を買った」
県外ナンバーの車も町でよく見られるようになった。

なお、三次産品のつらいところは持続力に乏しい事だ。ちょっと前までは「ニューファミリーはユルんでる」でもそこそこイケたわけだが、もはやユル味の時代ではない。なにしろ動きの速い世界だし、お客は飽きっぽいからね。

インパクトのある『資源』が町にあったからこそ

  1. こういう場所は沢山ある。喰えば分かる。来てもらえりゃ分かる。と思ってる小規模な一次産品地帯は多い。
    • 自分の知る限り、役場の人などは熱心に全国を回って「自藩の長所短所」をよく把握している。てゆうか、茶どころの人が全国の茶どころを良く知っているのは当たり前だ。宇治?八女?静岡?へッ!ウチのほうが上だぞくぬやろ!!...とは言わないが、まぁそんなよーな気概といいますか。
  2. しかしながら、「食べ比べ」などのモノサシは「飽和気味の価値軸」であり、さらに特定食品の善し悪しなどの「くいもんの教養」は、到達範囲が狭くなっている。一次産業の従事者が減れば、社会全体としては一次リテラシーが劣化するのが自然だ。
    • 従ってブランドなどの認知力が重要になるのだが、「各地の名店」や「世界遺産」は、「東京のコンセプトやら言う人」に大金を払う必要がある。そもそも、これらは「はてなの人気タグ」あるいは「ホッテントリ」に過ぎない。
  3. だが、「はてな市民」はそれを見分けるリテラシーを持たないし(一次産品の情報弱者)、「資源所在地」は「はてなっていったいなんですか?」といったところだ(三次産品の情報弱者)。
  4. 駄菓子菓子、一次産品には他が逆立ちしても敵わない強みがある。なにしろ『喰えば分かる』のだ。
    • いやそれは三次産品でも一緒ダロという気もするが、手塚治虫宮崎駿の社会的評価は、マンガやアニメを嗜む人間が一定比率を超えるまで低かった。嗜まない人間にとっては、「あんなもん」十把一絡げだ。
    • いまのところ飯を喰わない人間は居ない
    • 「米の宮崎、うどんの手塚」は全国に手つかずのまま埋まっている。ニッチでシャープでローコストな糖衣が見つかると、結構手堅い成長が見込める。

でも幼女はマズいと思うけど。

余談

ゲンミツには三次産業でなく「情緒産業」みたく切り分けべきだと思うのだけど、それやると大変なんで三次でごまかしました。なんとなく以下のような分類がアタマの中にあるます。

  • 一次産業:農林水産/資源採掘業
  • 二次産業:工業全般(石油精製からモノツクリまで)
  • 三次産業:物理サービス(流通や床屋さんやピザ宅配)
  • 四次産業:知識サービス(金融、弁護士、大学教授、ソフトウェア生産)
  • 五次産業:情緒サービス(サクヒンビジネス*1

高次の産業ほど高付加価値を生む。ただし日常生活必需度はさがり、安定度もさがる。なんちて。
MSは四次に集中しており、Appleは二次〜五次の配合バランスが命。なんちて。

どうでもいい追記(081220)

稲穂を手に市女笠(いちめがさ)の美少女のイラストがほほえむ。

差別化するなら、まずはツンデレが定石だろう。そして競争が激化し、様々な新ジャンルが生まれる中で、全国の農村が萌えあがるのだ*2