倒産のない経済は、経済ではなく不経済

  • 090707-日経朝-17 大磯小磯 - 大平さんが泣いている

 「いうまでもなく、自由経山済体制にあっては、経済発展の担い手は民間企業であり、民間の英知、活力、創造力こそが発展の原動力なのである。ところが、従来、日本の企業は、困難な事態となるととかく政府に頼りがちになるという風潮がみられた」
 最近の文章といっても通じるが、実は39年も前に書かれている。筆者は時の佐藤栄作内閣の大平通産相(現経産相)。
「新通商産業政策の課題」の一節だ。福永文夫独協大教授の近著「大平正芳」(中公新書)で知った。

 変わってないじゃないか。

 半導体大手のエルピーダメモリが一般企業向けの公的資金での資本増強(政策投資銀行が出資)第1号に決まった。出資に損失が出たら政府が8割を補てんする。日本航空も政府保証付きの政投銀融資を受ける。完全民営化するはずだった政投銀は「見直しもあり」の法律が通った。変革を嫌う官民もたれ合いの道行きに、大向こうは白ける。

 日本の企業救済策を紹介した英エコノミスト誌は「企業倒産の少なさは普通は経済の活力のしるしだが、日本では経済の弱さのしるし」と皮肉った。大平さんが内輪の席で「倒産のない経済は、経済ではなく不経済」と名せりふを吐いたのを思い出した。

 第1次石油危機の後、税収が落ち込み歳入欠陥が生じ、赤字国債の発行に踏み切ったのは三木武夫内閣の大平蔵相(現財務相)の時だ。責任を痛感した大平さんは財政再建に心を砕き、首相になってから一般消費税の導入を訴え、総選挙で過半数割れの敗北を喫した。それで政権基盤が揺らぎ、半年ほどして党内の造反で内閣不信任案が通り「ハプニング解散」。選挙戦の最中に倒れ帰らぬ人となった。

 先々週、閣議決定した「骨太方針2009」は、「骨太06」で11年としていた基礎的財政収支(プライマリーパランス)黒字化を10年近くも先送りした。経済危機で財政出動が必要なのは、よくわかる。要は中身だ。14兆円補正をつぶさに見ると、何も「アニメの殿堂」だけではない。省庁や特殊法人の施設整備費(箱物)や官製基金への出資金がずらりと並ぶ。

 「100年に1度」を口実にした選挙目当てのパラマキは隠しようがない。実態を知れば納税者でもある消費者は意気阻喪しそうだ。麻生太郎首相や与謝野馨財務相に、大平さんに合わせる顔は、あるのだろうか。(手毬)

「緊急事態だ、国が支援を。大変なんだ、国が支援を」の大合唱を鑑みるに、『変わってないじゃないか』というのは寧ろモデレートな表現ではないかと思った。

『出資に損失が出たら政府が8割を補てん』したり『政府保証付きの政投銀融資』したりすると云う事は、民間銀行が「おつきあいで融資」しても、「政府補填/保証」のぶんはかえってくる、という事だ。これは「民間企業への赤字国債直接投入」とか、「新型金融商品、部分特約型元本保証投資!!」とか、言ったほうが近い。
エルピーダについて

JALについて

なんとJALの年金支給額は一人あたり年間で583万円なのだそうです。一般企業は300万円台半ばの数字なのに…。

月額に直すと約48万対約29万。上記でも語られているが、そうした負担構造はBIG3に近いものがある。この構造を抱えたままで世界で台頭しつつあるローコストキャリアと戦えるかは、疑問だ。

ここまで下げちゃうと年金が月4.8万になりかねないが、エアウェイが「高値の花」だった頃のコスト構造は、持たない、、、そりゃまぁ資本注入して持たせるなり、路線の許認可権を使うなりする手もあるけど、それらは本質的には「破綻までの時間稼ぎ」に過ぎない。

自由主義について
Meine Sache 〜マイネ・ザッヘ〜: 欧州人民侮りがたし』によると、09Q2、ドイツで自由主義を奉じる自民党(FDP)がここ20年来で最高の支持を集めた。同党のヴェスターヴェレ党首は次のように語ったという。

どんな経済システムも欲に支配されています。ただ他の政党が目指している計画経済だと、欲は隠蔽されてしまうのです。それのほうが問題です。

新自由主義政党なんて知りません。どの政党も左傾化して社会主義的経済を指向するなか唯一異議を唱え、中産階級のための中道を目指し、行きすぎた強欲には反対している自由主義政党なら知っています。

投資というのは、株価が値下がりすれば自己責任だし、会社が清算ともなれば丸損になる。そうならないように、手前の喰って行く道を手前で企てるから「企業」って云うんだと思ってんだけども。

もしも、中産階級がそこをわきまえてないなら、資本主義も自由主義も成立しない。「中産階級と言う名の一部特権階級」を守るための「事実上の共産主義化」が発生し、やがてソ連崩壊に至るだろう。

「緊急事態だ、国が支援を。大変なんだ、国が支援を」ってのは、少なくともあまり魅力的でない。そして魅力的でないものに、人は財布の紐をユルまさない。もしも改正産業活力再生特別措置法産業再生法)がそうした「ニート企業」の延命を図るものなら、『倒産のない経済は、経済ではなく不経済』だろう。

「人気サイトの変遷」ほど早くはないが、「稼げる仕事」や「稼げる仕事のやりかた」も、時代とともに移り変わる。