民主には記者クラブの解放を期待している。それしかしてないと言ってもいい。

じつは、鳩山政権についての筆者の関心はただ一点だけ。それは、鳩山内閣の発足と同時に、本当に記者会見をすべてのメディアに開放するかどうかに尽きる。

尽きる。尽きる。

民主党は、官僚政治の打破を訴えている。だが、記者クラブの開放がなければ、官僚政治の終焉もない。それは記者クラブ制度こそ日本の官僚制の象徴だからだ。

だからだ。だからだ。象徴ってゆうか、一体だと思う。いやむしろ官僚制も記者クラブも、改革されべき「日本の構造」の、一部分であるように思う。

ダブル・トライアングル

  1. 右の第一トライアングルは経済成長担当。外需、外征、戦地の兵。
  2. 左の第ニトライアングルは所得移転担当。内需、内功、銃後の護り。
  3. 右で稼いで、左へ回す。


すっげー乱暴だけども、こんなカンジの図を肚に呑んどくと、日々のにうすが少しわかりやすくなる鴨と思った。

■第一トライアングルは主に経済成長担当(外需)。


端的には、1960の所得倍増計画がこれにあたる。
日本は明治初期の蚕・生糸を振り出しに、じわじわ貯めたお金を「より高い付加価値を産む、より高度な産業」に再投資してきた(わらしべ長者のようなものだ)。明治以来の試行錯誤を整理して、ソ連の計画経済を一部取り入れた満州国の経済成長プランてのがあんだけど、戦後復興路線の下敷きにはコレがある筈。
中央省庁は図の上段の回路で「生業単位の民意」を収集し、吟味して、政策や法案を生成する。これは「ホントの政党政治」では「政党組織の役目*1」なんだけど、日本では官庁のほうが充実している。
従って、日本の議院内閣制はタテマエ、ホンネは省庁連立内閣と言っていい。

■第ニトライアングルは所得移転担当(内需)。


端的には1972の列島改造論がこれにあたる。
第一わらしべで稼いだお金を、第ニに回して「みんなでしあわせになろーよ」ってシカケ。公益、福祉、教育、農水、公社公団公共工事、鉄道、電信、道路、郵便(←だいたい民営化済)、医療に社会保障に研究予算や助成金、てなもんだ。ここでも中央省庁は上段回路で「生業単位の民意」を収集し、吟味して、政策や法案を生成する。
第一トライアングルとあわせると、「派閥論功誰でも一緒内閣」では、政策立案や法案作成能力に於いて、省庁連立内閣に勝てない。なんてったって官僚のほうが詳しいんだから。日本はテクノクラート・コントロール(文官統制)の国。と言っていい。
ちょー乱暴に言うと、「古い自民党」はそれをウマく回す為の「縁起物」だ。「縁起物」はケチると福が来ない。「族議員」はこの流れに取り付いて、補助金や政策がジバンの有利になるよう働きかける。武器は「議院内閣制のタテマエ」だ。第一にも取り付いてるけど、伝統的には第二が本拠。

■09Q3現在の日本の問題

第一が稼いで、第ニへ回す。これで日本は「一億総中流社会」を築きあげた。実は米国でも1920〜1950年代に掛けて、同様の事が起きている。米国は内需命で日本は外需命だとか、日本のほうが米国より格差が少ないとか、違う部分もたくさんあるけど、第一の本質が「工業革命」、すなわち大量生産で労働者をたくさん雇って消費者も生産してしまう。という本質は一緒だ。

それが60年代〜90年代に掛けて「日本」に市場を喰われて崩れて行った様は、世界市場を韓台中に喰われている日本とカブる。オレラの技術は世界一ぃいい!とか、サムスン品質なんてぺぺぺのぺーとか、逆切れ悲鳴もよく似てる。その一方で格差が拡大し、「前の世代より貧しい暮らししかできない」という不安が広がってゆくところもようできとる。そんなとこまでアメリカナイズせんでもええねん。

「他山の石」がありながら「脱工業化」にしくじってるのは情けないとこなのだけど、第一と第ニが既得権益化してると、「新興業種」の首に鈴をつけたり、規制したり、酷い時は潰しちゃったり、、、これは米国には存在しない。日本固有の条件だ。

ちょー乱暴に言うと。09Q3現在の日本の問題は、第一の運転効率が下がってて、第二がうまく回らなくなってる事。あるいは、第二が使い過ぎてて、第一が過負荷の世界に入ってる事。第一のカイゼンも第二の合理化もあんまうまくいってなくて、国庫の借金がうなぎ昇ってる事。と理解してる。実はこの全体をメスを入れなきゃならないんだけど(構造改革)、まぁ誰だって痛いのはヤですわな。しかしひとまず。「古い自民党」は潰えた。

情報のATフィールド

しかしてこの「ダブルトライアングル」の中を流れるヒトモノカネの動きは、存外に見えにくい。日本にはこういうもんがあるからだ。

記者クラブ」は、官民問わず、中央地方の区別なく、ダブル・トライアングルの随所に存在し、アウトサイダーを締め出している。cf.東京地区の記者クラブ一覧 - ふつうの日記 - Fraternity7

少し細かくするとこうなる。

これが残っている限り、テクノクラート・コントロールは打開は難しい。不利な情報も、気に入らない記者も排除しやすいからだ。有利な情報をリークすれば、ばばばっと広められるからだ。

官僚たちは、記者クラブをコントロールすることによって政治家を使い、自らの利権構造を強固にしてきた。

次に変化が必要なのは、メディアザウルスだろう。

関係ないけど気になった事。

ぜんぜん関係ないけど頭書の上杉隆さんの記事に気になる記述があった。

直接的な嫌がらせ、誹謗中傷が連日のように続き、中には犯罪行為ともいえる脅迫までが行なわれるようになった。ここでその内容は詳らかにしない。だが、自らの身を守るためにも、その反発は想像以上のものであることだけは書き残しておこう。

まったく関係ないけど、『フリーペーパーの衝撃 (集英社新書 424B)』に国内の日刊フリーペーパー黎明期の顛末が載っている。以下抜粋。

TOKYO HEADLINE(創刊2002/首都圏):週刊。産経新聞の配信ニュース。

  1. 記事:
    • 共同:加盟社(有料紙)からお金を貰う社団法人として提供できない。
    • 時事:契約の段になって断られる。
    • ロイターとブルームバーグのみでスタート。
  2. 生産・配布:
    • 大手製紙会社:(用紙を)「売れない」
    • 配布ラック:営団・JRが、構内売店の新聞雑誌売上など理由に、設置を断わる。
    • 印刷会社:創刊数日前に「できなくなった」(スポーツ新聞系の印刷会社)。
  3. 広告:
    • 大手広告代理店に軒並み取り次ぎを断られる(実績がないとちょっと)。
  4. 闇:
    • 大手紙幹部を名乗る電話がかかり「日本で日刊無料紙発行などもってのほかだ」
    • 匿名電話「電車のホームでは気をつけろ」「女房子供を実家に帰したか」
  5. 結果:社長交代、週刊化、産経の記事配信を受ける事に成功。

メトロ(創刊1995@スエーデン):日刊。世界22カ国に進出、各地で既存紙の抵抗を受けつつ、2004までに12カ国で黒字化達成。

  1. 摘要
    • メトロ進出地には、日本並みの新聞購読率を誇る国もあるが、若い人たちの新聞離れは各国共通。「時間が無い」「高すぎる」。にもかかわらず、新聞社は「ページを増やし」「価格をあげた」というのが創刊の理由。その結果、編集方針は宗教中立。社説なし、論説なし、解説一切なし。通勤電車の20分で読み切る事を想定。
  2. 各地の抵抗例
    • 英国:地元紙が「メトロ」を商標登録、同名紙を発行。本家は別名での上陸を余儀なくされ、後に撤退(99)
    • 仏国:印刷労組の反対で隣国で印刷して搬送。労組員がセーヌ側に投げ込む(02)
    • 韓国:メディア外資規制のためフランチャイズで進出(02)。
    • 世界新聞協会:
      • 2000年大会では「侵略者」「バイキング」呼ばわり
      • 2001年大会では「若い人たちを新聞読者に引き込む理想のメディア」
  3. 日本進出の頓挫
    • 2000年、進出可能性を探りに副社長が来日。
    • 国内新聞・通信社/地下鉄駅/大手広告代理店の協力が得られないと知り「そんな条件は外国なら簡単にクリアできるのに。日本は特殊な国だ」。

*1:の、一部分。ホントの、てゆうか教科書的な意味での政党組織は「生活者や消費者としての民意」も集める。コレマジでやるには、あちこちに「支部事務所」を置いて、活発に活動する必要があるだろう。それこそ公明党幸福の科学なみに。